学生時代に免除された国民年金保険料を追納すべきか
2011年10月11日
筆者は最近、友人から「学生時代に免除された国民年金保険料を追納するべきか」という相談をよく受ける。
同年代(20代半ば)の友人は社会人になり数年経ち、多少の貯金もできてきた頃。そろそろ学生時代に免除された国民年金の保険料を追納した方がいいのではないか、と考える頃である。
20歳になると国民年金の納付義務が生じるが、学生は申請により保険料の納付免除(学生免除)を受けることができる。免除を受けた場合、その分は、老齢基礎年金の給付額が減ることになる。
例えば、2011年度の基礎年金の給付額は満額(納付済期間が40年の場合)で年78万8,900円であるが、学生時代に2年間免除を受け追納しなかった場合(納付済期間が38年の場合)は、年金給付額は満額の38/40(5%減)、年74万9,500円(※1)となる。
学生免除を受けた者が老齢基礎年金(相当額)を満額受け取る方法は、主に3つある。
一番ベーシックなものは保険料の追納である。現行法では、免除を受けた保険料は、免除を受けた後10年以内に追納することができる。追納すれば、その分は「納付済期間」となり、基礎年金の給付額に反映される。ただし、追納を行う場合の保険料は、当時の保険料に利子相当分(※2)が加算された金額となる(下表)。
例えば、2011年度に2006年度分と2007年度分の保険料を追納する場合、34万6,920円(1万4,440円×12ヵ月+1万4,470円×12ヵ月)となる。
2つめは、国民年金任意加入である。現行法では、60歳以後65歳未満の期間について国民年金に任意加入することができ、その時の国民年金保険料を納めれば(この場合、追納とは異なり「利子相当分」は加算されない)、学生時代に納付した国民年金保険料と同等に「納付済期間」として扱われる(※3)。つまり、学生時代に2年間免除を受けた場合、60歳から62歳まで2年間保険料を納めれば、満額の老齢基礎年金を受け取ることができる。
3つめは、60歳以後の厚生年金加入である。現行法では、60歳以後の期間について厚生年金の被保険者である場合、老齢基礎年金の給付額には反映されないが、老齢基礎年金相当額が「経過的加算」として老齢厚生年金に反映される仕組みとなっている(※4)。つまり、学生時代に2年間免除を受けた場合、62歳まで厚生年金の適用事業所で働き続けていれば、満額の老齢基礎年金相当額を受け取ることができる。
現行法をもとに考える場合、上述したように、追納以外にも老齢基礎年金(相当額)を満額受け取る方法もあり、学生免除分の追納を絶対にしておいた方がいいとは言い切れない。国民年金任意加入の場合は、保険料に利子相当分の加算がないので、追納よりも結果的に有利になるかもしれない(※5)。
ただし、追納以外の老齢基礎年金(相当額)を満額受け取るための2つの方法は、60歳になったときに働き続けているか、保険料を支払うだけの余裕があることが前提となる。
法律上、免除を受けた保険料を追納することは「権利」であり「義務」でない(※6)。筆者は追納についての相談を受けた場合、これらの情報を提供した上で、自己責任で追納すべきか否かを判断するようアドバイスしている。
(※1)100円未満は四捨五入される。
(※2)当初2年については加算されず、以後については、毎年10年国債の利率相当分が加算される。
(※3)国民年金の繰上げ支給を受ける者、厚生年金・共済年金の被保険者などを除く。
(※4)ただし、厚生年金の被保険者期間が40年に達するまでの期間に限る。つまり、22歳からサラリーマンとなり厚生年金の被保険者である場合、60歳から62歳までの期間が「経過的加算」の対象となる。もっとも、この「経過的加算」は学生時代の国民年金納付(追納)の有無に関わらず支給されるので、「経過的加算」があるからといって、学生時代の国民年金納付が無駄になるわけではない。
(※5)現行法では、任意加入を行った場合の保険料について、利子相当分の加算はない。ただし、現行法をベースとしても、毎年の保険料率は以下の要因により変動する。保険料は2017年度まで毎年保険料を引上げることが法定されている。2017年度以後は保険料は月1万6,900円(後述する名目賃金変動率を考慮せず)となる。さらに、名目賃金変動率を基準として毎年保険料は改定される(現役世代の平均賃金が上昇すれば保険料は上がり、低下すれば保険料は下がる)。なお、保険料の追納以外の方法を採る場合、約40年間、保険料相当額を運用して収入を得ることもできるため、この点も考慮する必要がある。
(※6)免除申請を行っていない場合は、保険料納付は「義務」であり、納付しない場合は「滞納」扱いとなる。国は滞納者に督促することができ、督促期限までに保険料を納付しない場合は滞納処分(財産の差し押さえなど)を行うことができる。
(※2)当初2年については加算されず、以後については、毎年10年国債の利率相当分が加算される。
(※3)国民年金の繰上げ支給を受ける者、厚生年金・共済年金の被保険者などを除く。
(※4)ただし、厚生年金の被保険者期間が40年に達するまでの期間に限る。つまり、22歳からサラリーマンとなり厚生年金の被保険者である場合、60歳から62歳までの期間が「経過的加算」の対象となる。もっとも、この「経過的加算」は学生時代の国民年金納付(追納)の有無に関わらず支給されるので、「経過的加算」があるからといって、学生時代の国民年金納付が無駄になるわけではない。
(※5)現行法では、任意加入を行った場合の保険料について、利子相当分の加算はない。ただし、現行法をベースとしても、毎年の保険料率は以下の要因により変動する。保険料は2017年度まで毎年保険料を引上げることが法定されている。2017年度以後は保険料は月1万6,900円(後述する名目賃金変動率を考慮せず)となる。さらに、名目賃金変動率を基準として毎年保険料は改定される(現役世代の平均賃金が上昇すれば保険料は上がり、低下すれば保険料は下がる)。なお、保険料の追納以外の方法を採る場合、約40年間、保険料相当額を運用して収入を得ることもできるため、この点も考慮する必要がある。
(※6)免除申請を行っていない場合は、保険料納付は「義務」であり、納付しない場合は「滞納」扱いとなる。国は滞納者に督促することができ、督促期限までに保険料を納付しない場合は滞納処分(財産の差し押さえなど)を行うことができる。
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- 執筆者紹介
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金融調査部
主任研究員 是枝 俊悟
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