第17回TAMA映画賞『国宝』『ルノワール』が最優秀作品賞!受賞結果発表

国内映画賞のトップバッターとして注目を集めるTAMA映画賞の第17回の受賞作品及び受賞者が発表され、最優秀作品賞に李相日監督・吉沢亮主演の『国宝』と、早川千絵監督・鈴木唯主演の『ルノワール』が輝いた。最優秀男優賞は長塚京三・吉沢亮、最優秀女優賞は瀧内公美・広瀬すずが受賞した。
【画像】『国宝』吉沢亮・横浜流星・渡辺謙・田中泯、圧巻の歌舞伎シーン<16枚>
2009年にスタートしたTAMA映画賞は「明日への元気を与えてくれる・夢をみせてくれる活力溢れる<いきのいい>作品・監督・俳優」を、映画ファンの立場から感謝をこめて表彰するもの。前年10月から当年9月に一般劇場で公開された作品及び監督・キャスト・スタッフを対象に、市民ボランティアの実行委員が選考する。
『国宝』は、「圧倒的な熱量で血筋と才能に翻弄される二人の激動の半生を重厚に描き出し、観客に深い感動と余韻をもたらした」との理由から選出。吉田修一の同名小説を原作に、極道の息子として生まれながら歌舞伎の世界に飛び込み、芸の道に人生を捧げる喜久雄の50年を追うストーリー。稀代の女形となる主人公・喜久雄を吉沢亮、喜久雄のライバルとなる御曹司の俊介を横浜流星が演じた。6月6日より公開されるとキャストの吹替えなしの歌舞伎シーンなどが話題を呼び、歴代の興行収入ランキングで邦画実写において第2位にランクイン。公開から約4か月経た今も好調で、9月29日に興行通信社より発表された週末ランキングでは、累計で観客動員1092万人、興行収入154億円を突破。また、第98回米国アカデミー賞国際長編映画賞部門の日本代表作品に選出されている。

『ルノワール』は、「11歳の少女のひと夏を鋭く繊細な感性で描き、身近な大人の孤独や痛みに触れ社会を知るその姿を通して、人生をしなやかに肯定した」との理由から選出。長編初監督作『PLAN 75』(2022)で第75回カンヌ国際映画祭カメラドール特別賞に輝いた早川千絵監督の3年ぶりの新作。1980年代後半の夏を舞台に、闘病中の父(リリー・フランキー)と、仕事に追われる母(石田ひかり)と暮らす少女フキを描いたドラマで、フキ役に撮影時役柄と同じ11歳だった新星・鈴木唯がオーディションで抜擢された。第78回カンヌ国際映画祭で最高賞「パルム・ドール」を競うコンペティション部門に選出された。
最優秀男優賞は、筒井康隆の小説を『桐島、部活やめるってよ』の吉田大八が映画化した『敵』で19年ぶりに映画主演を務めた長塚京三と、『国宝』と奥嶋ひろまさの同名コミックを実写化したコメディー『ババンババンバンバンパイア』で450歳のバンパイアを演じた吉沢亮が受賞。長塚は「老いを受け入れる威厳と清潔さ、そして現実と幻想の狭間で見せる痛々しい老いの姿を繊細に演じ、観客に深い共感と勇気を与えた」、吉沢は「『国宝』において、命を削るように役と向き合う姿はもはや演技とは思えない高みへと達しており、そのあまりの美しさに息を呑んだ」という評価。
最優秀女優賞は、瀧内公美が『レイブンズ』『敵』『奇麗な、悪』『ゆきてかへらぬ』『国宝』『ふつうの子ども』『宝島』の7作品で、広瀬すずが『遠い山なみの光』『アット・ザ・ベンチ』『ゆきてかへらぬ』『片思い世界』『宝島』の5作品で受賞した。瀧内は「『レイブンズ』『敵』など出演した作品にスパイスを効かせ、観客を惹きつける俳優としての確かな表現力と造形力が際立った」、広瀬は「『遠い山なみの光』において、1950 年代の長崎で希望をもって生きた主人公・悦子を、美しい立ち居振る舞いと卓越した心情表現で見事に演じた」との評価。
授賞式は11月15日、パルテノン多摩大ホールで行われる。受賞結果と受賞理由は下記の通り。(編集部・石井百合子)
最優秀作品賞[本年度最も活力溢れる作品の監督及びスタッフ・キャストに対し表彰]
『国宝』 李相日監督及びスタッフ・キャスト一同
『ルノワール』早川千絵監督 及びスタッフ・キャスト一同
特別賞[映画ファンを魅了した事象に対し表彰]
呉美保監督及びスタッフ・キャスト一同 (『ふつうの子ども』)」
「子どもたちの日常や小さな冒険を生き生きと描き、大人たちも自身の記憶と重ねて共感できる心温まる作品となり、観客を魅了した」
大九明子監督及びスタッフ・キャスト一同(『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』)
「人を好きになることの痛みと泣きたくなる気持ちに寄り添い、繊細な若者たちの心の叫びを、圧巻の告白シーンによって胸に響かせた」
最優秀男優賞[本年度最も心に残った男優を表彰]
長塚京三 (『敵』)
吉沢亮 (『国宝』『ババンババンバンバンパイア』)
最優秀女優賞[本年度最も心に残った女優を表彰]
瀧内公美 (『レイブンズ』『敵』『奇麗な、悪』『ゆきてかへらぬ』『国宝』『ふつうの子ども』『宝島』)
広瀬すず(『遠い山なみの光』『アット・ザ・ベンチ』『ゆきてかへらぬ』『片思い世界』『宝島』)
最優秀新進監督賞[本年度最も飛躍した監督、もしくは顕著な活躍をした新人監督を表彰]
平一紘監督(『木の上の軍隊』『STEP OUT にーにーのニライカナイ』)
「『木の上の軍隊』において、沖縄戦と正面から向き合い、困難と葛藤を乗り越える二人の兵士を丁寧に描き、広い世代の心に届く作品に仕上げた」
山元環監督(『この夏の星を見る』)
「コロナ禍の中高生の感情をマスク越しの会話劇で描き、夜空から星を捉えるアクションは私たちの希望も照らし出した」
最優秀新進男優賞[本年度最も飛躍した男優、もしくは顕著な活躍をした新人男優を表彰]
萩原利久(『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』『世界征服やめた』)
「『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』において、偶然の恋に一喜一憂する主人公を、光と影を巧みに織り交ぜた演技で表現した」
黒川想矢(『国宝』『この夏の星を見る』)
「『国宝』において、喜久雄の少年期を抑えた表情のなかに複雑な感情をにじませて演じ、画面に惹きつける吸引力で観客を魅了した」
最優秀新進女優賞[本年度最も飛躍した女優、もしくは顕著な活躍をした新人女優を表彰]
桜田ひより(『この夏の星を見る』『大きな玉ねぎの下で』)
「『この夏の星を見る』において、いつもの日常が失われた世界で、人々をつなぐ道標となる役を、強い眼差しと心を掴む行動力で演じきった」
中野有紗 (『この夏の星を見る』)
「登場人物の胸の内の思いを受け止める豊かな感受性とその溢れんばかりの思いを体現する感性の高さで観客を魅了した」