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輪島の漆器店 再起誓う 新ギャラリー焼失 全国からエール

2024年1月8日 05時05分 (1月8日 10時16分更新)
1階部分が完全につぶれた工場の前で、取り出した漆器や道具を手にする田谷昂大さん(右)と土居和佳奈さん=輪島市杉平町で

1階部分が完全につぶれた工場の前で、取り出した漆器や道具を手にする田谷昂大さん(右)と土居和佳奈さん=輪島市杉平町で

  • 1階部分が完全につぶれた工場の前で、取り出した漆器や道具を手にする田谷昂大さん(右)と土居和佳奈さん=輪島市杉平町で
  • 倒壊した工場のがれきのすき間から、漆器を取り出す田谷さん(手前)と土居さん=輪島市杉平町で
 新型コロナウイルス禍を乗り越え、さあこれからという矢先の大地震だった。輪島市杉平町の老舗輪島塗メーカー、田谷(たや)漆器店は工場や事務所棟が倒壊。今月末のオープンに向け、建設中だった新ギャラリーは焼失した。一時は絶望したが、全国から寄せられる多くのエールを受け、「絶対にあきらめない。乗り越えて、さらに強い輪島塗にしたい」と再起を誓う。
 「あ、へらだ」。5日午後、1階部分が完全につぶれた工場で、職人の土居和佳奈さん(22)が、がれきのすき間から漆塗りの道具を見つけて声を上げた。「おわんもある」。専務で10代目の田谷昂大(たかひろ)さん(32)は工場の被災状況を確認しながら、「僕より再起の意志が強いな」と目を細めた。
 1日の地震発生時、田谷さんは工場近くの実家で両親や弟家族らとだんらんの最中だった。全員逃げだして無事だったが、夜には朝市通り周辺で火災が発生。現場に駆けつけると、完成間近の新ギャラリーが目の前で焼け落ちた。
 コロナ禍で打撃を受けて以降、法人中心だった販路を一般向けにも広げようと取り組み、新ギャラリーはその象徴だった。「輪島は終わった」。修復のために預かった漆器も、材料や職人の道具も、顧客情報も失った。絶望感が込み上げ、涙が出た。
 一方でメールやLINE(ライン)で過去の購入客や取引先、見知らぬ人から励ましのメッセージが千件以上届いた。「貴店の漆器は日常を豊かにしてくれる大切な存在。いつか必ず復活してください」などのエールや、「納品はいつでもいいから」とオンライン注文も。「必ず輪島塗メーカーとして戻り、あきらめずにやっていこうと思った」と田谷さんは振り返る。
 東京出身で昨年4月から働く土居さんも「輪島が好き。あきらめたくない。そんな甘くないだろうけど、今は頑張ろうと思うしかない」と前を向く。田谷さんは「輪島塗は世界に誇れる文化。産地なので1社だけ残っても輪島塗ではない。みんなで協力して復興していきたい」と話した。(小室亜希子)
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