論文データベース「CiNii」でPDF化された論文などが閲覧できなくなっており、混乱が広がっている。
新しいプラットフォームへの移行作業が進んでいないことが原因だ。運営元の国立情報学研究所はBuzzFeed Newsの取材に、「影響の大きさについては重々承知している」とコメント。早期の環境整備に協力していくという。
多数の論文が入手できず
「CiNii」は過去の論文などを検索し、PDFで閲覧できるデータベース。約1700万の論文を網羅しており、研究者や学生に重宝されてきた。
今回、PDFが閲覧ができなくなったのは、「CiNii」自体が廃止されたからではない。論文をPDF化するために1997年から始まった電子図書館事業 「NII-ELS」が、2017年3月末で終了したためだ。
「NII-ELS」の終了は、国が論文電子化を新たなプラットフォーム「J-STAGE」に一本化する方針を打ち出したことを受けたもの。運営元の国立情報学研究所によると、これまで「NII-ELS」で公開された論文は430万件にのぼるという。
PDFの提供停止はもともと決められたスケジュールに沿った措置だが、移行作業が終了していない学会などの多数の論文が入手できない状況になっている。
広がる混乱
Twitter上には、「卒論どうしよう」「本当に困る」などの声が。PDFが見られなくなったことを「大問題だ」とするツイートもあった。
今回の騒動について、国立情報学研究所はBuzzFeed Newsに対し、以下のコメントを出した。
「影響の大きさについては重々承知しており、改めて、学術研究においてCiNiiが果たしている役割の重要さを痛感しています」
「各機関との協力により、できるだけ早期に学術情報流通環境を整備したいと考えています。今回移行対象となっている論文は各大学図書館で所蔵されている場合もありますので、相談してみていただきたい」
今後は、「引き続き技術面でのサポート等を行うことで早期の移行に協力する所存」としている。
移行が完了した論文から、CiNiiにも順次PDFリンクが表示されるようになるという。