冬の寒い時期、江戸時代の人々はどうやって生活していたのでしょうか?
編集者でイラストレーターの笹井さゆりさん(@chiyochiyo_syr)が当時の様子を描いたイラストをTwitterで投稿したところ、1万以上のリツイートと5万を超える「いいね」が集まりました。
リプライ欄では、「勉強になります!」「風情を感じますね」など、称賛の声が寄せられています。
「江戸時代の冬、家での過ごしかた」
BuzzFeedは、投稿者の笹井さんにお話を聞きました。
気になる江戸時代の暮らしを調べる「江戸時代のちいさな話」シリーズを、毎週日曜日の夜に投稿している笹井さん。
今年の6月ごろから描き始めたシリーズの作品は、今回のイラストも含めて20作を超えます。
当時の「教育」から「灯り」、「ファッション」まで、幅広いテーマで投稿を続けてきましたが、今回「ガスや電気がない時代の暖房事情」に注目したのは、今の時期ならではの疑問を抱いたからでした。
「家の中でもしっかりと厚着をしないと手足が冷える日々になり、改めて冬という季節は大変だな、電気もガスもない江戸時代の人はどうやってこの季節を乗り切ったのだろう…?と思ったのがきっかけです。そこから、当時使われていた道具などを文献で調べ始めました」
「名もなき庶民の等身大の暮らし」
ところで、なぜ笹井さんは江戸時代の庶民の暮らしに焦点を当てて、イラストを描き続けているのでしょうか。
「江戸時代に関心を持ったきっかけは、漫画家で文筆家の故・杉浦日向子さんの作品です。そこに描かれた、教科書や時代劇の江戸とは少し異なる、名もなき庶民の等身大の暮らしにとても惹かれました」
江戸風俗研究家として知られる杉浦さんの存在が、絵を描くことへの原動力になったと語ります。
「服装の規制の網の目をかいくぐってお洒落をしてみたり、屋台グルメを味わったり、たまの贅沢で旅行を楽しんだり…。遠い“歴史”だと思っていた江戸という時代が、実は今の自分の暮らしと地続きだったんだ…と驚いたんです」
「 私もそこにある景色をスケッチするように、江戸時代を描いてみたい。よし、色々調べてみよう!と手を動かし始めました」
作品が完成するまでには...
笹井さんの作品には、まるで当時を見てきたかのようなリアリティあふれる雰囲気があります。
その理由の1つが、事典やウェブサイトによる綿密な資料集め。
「(イラスト右側の)解説部分について、ここは道具の紹介の羅列でもよいのですが、もう一歩踏み込んで、なぜ都市部は炭が燃料の道具が使われるのか?など『なぜ』のところまで理解できるよう、まとめ方に気をつけました」
「また難しかったのは、服や道具のディテールですね。特に『火鉢』や『行火』など使ったことのない道具は構造の理解が難しく、実物の写真や当時の浮世絵などの資料を集め、それらを参考にしながら描きました」
冬場の乾燥に加え、ただでさえ木造の長屋が立ち並ぶ江戸の町において、ひとたび火事が起きれば大きな災害となります。
そのため都市部では、農村部とは異なり、薪ではなく炭を利用していたことまで、イラストの中で描き分けられています。
こうして細部までこだわって描かれた作品には、多くの声が寄せられています。
最後に笹井さんは、反響をどのように受け止めているのか聞いてみました。
「いただいた感想はすべて嬉しく拝見しています。『火鉢は使ったことがある』『おばあちゃんの家に行火があった』などの貴重な体験談もお寄せいただき、これらの道具に実際に触れたことのない身として大変勉強になりました。いつか自分でも使ってみたいです」
「時代は違えど、冬をぬくぬくと過ごしたいという気持ちは同じ…いえ、江戸時代の人の方がより、切実に冬と向き合っていたかもしれません。それを想像し、共感を寄せてくださる方が多かったのかもしれませんね」