薬物依存症に苦しんだ体験を語る

非公開となっていたのは、今年7月に放送されたNHKの番組「バリバラ」内の企画「教えて★マーシー先生」。
田代容疑者が薬物依存の実態を語ったり、専門家が当事者が回復できるための仕組みや、適切な治療の必要性を訴えたりするものだった。
番組で、田代容疑者は、刑務所での日常などをコミカルに話しつつ、服役してもなお薬物を求め続けていた心境など薬物依存の実態について語っていた。
「断(た)ってる」んじゃないんだよ、「やめさせられてる」だけなんだよ。コントロールできないのが依存症なんです。
捕まる度にファンをがっかりさせた、家族に心配をかけた、もう二度とやってはいけないって強い意志を持つんだよ。それでもね、目の前に(クスリを)出されたり辛いことが起きると、大切なものよりも(クスリの)魔力が勝っちゃうんだ。
「国立精神・神経医療研究センター」の松本俊彦さん(精神科医)は、番組内で「刑務所にいても依存症は回復しない」「『気を引き締めて』『強い意志を持って』というのは無理な話」と説明。
薬物依存症への適切な治療が必要であると話していた。
「とっても大きなショックでした」

番組内容がNHKのサイトなどから削除されたことについて、当時、NHK大阪広報局の広報担当者は、経緯や理由は「確認中です」と言い、詳細な内容は現時点では答えられないと話していた。
11月15日までに公開されたページには、番組の内容を文章でまとめたサマリーとともに、番組側のコメントが掲載されている。
2019年11月6日、田代まさし容疑者が薬物を所持していたとして逮捕されました。田代氏は、番組出演時に「薬物に頼らない一日一日を積み重ねている」と語っていただけに、逮捕の知らせはバリバラ関係者にとっても大きなショックでした。そして、薬物依存症が回復する道のりの険しさ、患者を孤立させず社会復帰につなげていくにはどうすればいいのか、をより深く考える機会となりました。バリバラはこの問題を今後も考え続けていきたいと思います。
以下、放送当時の表現に一部修正を加えた上で、サマリーを再掲いたします。
「雇用を奪う行為をメディアが率先して行わないこと」
「薬物報道ガイドライン」貼っておきます。各項目には理由があって、こちら https://t.co/1KaaHa7Qr2 で解説しております。
芸能人が薬物の所持・使用などの容疑で逮捕された際に、過去の作品や出演予定番組の放送を自粛するケースは後を絶たない。
一方、当事者や専門家が中心となって策定した「薬物報道ガイドライン」では、「薬物依存症であることが発覚したからと言って、その者の雇用を奪うような行為をメディアが率先して行わないこと」と呼びかけている。
以下に、依存症の治療・回復にあたる関係団体と松本さんら専門家で作った「薬物報道ガイドライン」を紹介する。
【望ましいこと】
- 薬物依存症の当事者、治療中の患者、支援者およびその家族や子供などが、報道から強い影響を受けることを意識すること
- 依存症については、逮捕される犯罪という印象だけでなく、医療機関や相談機関を利用することで回復可能な病気であるという事実を伝えること
- 相談窓口を紹介し、警察や病院以外の「出口」が複数あることを伝えること
- 友人・知人・家族がまず専門機関に相談することが重要であることを強調すること
- 「犯罪からの更生」という文脈だけでなく、「病気からの回復」という文脈で取り扱うこと
- 薬物依存症に詳しい専門家の意見を取り上げること
- 依存症の危険性、および回復という道を伝えるため、回復した当事者の発言を紹介すること
- 依存症の背景には、貧困や虐待など、社会的な問題が根深く関わっていることを伝えること
【避けるべきこと】
- 「白い粉」や「注射器」といったイメージカットを用いないこと
- 薬物への興味を煽る結果になるような報道を行わないこと
- 「人間やめますか」のように、依存症患者の人格を否定するような表現は用いないこと
- 薬物依存症であることが発覚したからと言って、その者の雇用を奪うような行為をメディアが率先して行わないこと
- 逮捕された著名人が薬物依存に陥った理由を憶測し、転落や堕落の結果薬物を使用したという取り上げ方をしないこと
- 「がっかりした」「反省してほしい」といった街録・関係者談話などを使わないこと
- ヘリを飛ばして車を追う、家族を追いまわす、回復途上にある当事者を隠し撮りするなどの過剰報道を行わないこと
- 「薬物使用疑惑」をスクープとして取り扱わないこと
- 家族の支えで回復するかのような、美談に仕立て上げないこと