南スーダンで国連平和維持活動(PKO)に参加する陸上自衛隊が、2016年7月11〜12日に作った日報が公開された。この日報には「戦闘」という言葉が多用されている。
2011年に独立した南スーダン。2013年からは事実上の内戦状態に突入し、AFP通信によると、これまでに数万人が死亡、250万人以上が避難民となっている。
陸上自衛隊は2011年から南スーダンのPKOに参加してきた。現地では、道路などの整備に当たっている。
陸自が駐留するジュバでは2016年7月、数日間で300人以上の死者を出す大規模な「戦闘」が発生していた。今回公開された日報は、その当時、陸自が置かれていた状況を如実に記している。
たとえば、「UN施設近辺で偶発的に戦闘が生起する可能性があり、流れ弾には注意が必要である」(7月12日)といった記述がある。
日本政府はこの件について、「戦闘ではなく大規模な武力衝突」との見解を貫いていた。
そもそも自衛隊をPKOに派遣するには、「参加5原則」を守る必要がある。
1992年に成立したPKO協力法に盛り込まれたルールで、日本はこれに則って参加の可否を決めてきた。
# 停戦合意が存在すること
# 受入国などの同意が存在すること
# 中立性が保たれていること
# 要件が満たされなくなった場合には派遣を中断又は終了すること
# 武器の使用は必要最小限度とすること
日本政府は南スーダンにおいて、この5原則が守られていると主張している。仮に「戦闘」が起きていては、派遣の前提が崩れてしまう。
では、実際に日報にはどう書かれているのか。
「戦闘が生起」。7月11日の「ジュバ市内の戦闘に関する状況」には、はっきりと「戦闘」の文字が書かれている。宿営地近辺で「戦闘」が起き、「流れ弾」に注意が必要だとしている。
総括のページには、「武装グループによる襲撃」のほか、7月7日から連日に渡って、「宿営地周辺より射撃音を確認」といった記述がある。
陸自は、そうした脅威にどう対応したのか。弾薬の使用状況を示す資料は黒塗りで、詳細はわからない。
個別の事案については、どうなのか。「ジュバ市内衝突事案について」というページでは、宿営地近くで「激しい銃撃戦」や「距離200」の地点に砲弾が落下していることがわかる。負傷という文字も見え、細かな戦闘の様子が記されている。
さらに、予想シナリオとして、最悪の場合には「国連の活動が停止」「活動の制限」に追い込まれる可能性まで記されていた。
翌12日の日報には、11〜12日午後6時までの24時間に「受診」した患者が7人いたと書かれている。前日の日報では、0人だった。
「戦闘」の細かな状況が記録されたこの資料、もともと防衛省は「廃棄した」と説明していた。
2016年9月にジャーナリストの布施祐仁さんが防衛省に情報開示請求したところ、「廃棄した」との理由で12月に不開示となっていたという。
その後、自民党行政改革推進本部(本部長・河野太郎衆院議員)の要請を受けた防衛省が再調査し、統合幕僚部に電子データが残っていることがわかった。
「隠蔽していた」と取られないようにするため、防衛省の記者クラブにも公開したという。
防衛省の広報担当者はBuzzFeed Newsの取材にこう語る。
「一度なかったとしていたものがあったとなると、世間的な反響が大きいために出しました。あくまで部内用のものですので、基本的にホームページに載せることはありません」
BuzzFeed Newsでは、日報全文をここにアップロードしています。