みなさん、突然ですがご報告です。
大阪の地下鉄を運営する「大阪メトロ」が12月20日、複数の駅の改装計画を発表しました。大阪メトロによると、対象は御堂筋線と中央線の計15駅。300億円を投じて、2024年度までに順次改装する計画です。
2025年に万博開催を控え、街を活性化させるため「新しい地下空間をつくる」としています。
1933年に開通した地下鉄御堂筋線は、駅のデザインが昭和期のレトロな香りを残していることでも親しまれています。
新たなデザイン案では、それぞれの駅を個性的に彩るそうですが…。
心斎橋は、こんな感じになるそうです。
改装計画が報道されると、長年親しまれたデザインがなくなる寂しさや、新デザインへの不安を募らせる声がでています。
署名サイトchange.orgでは「歴史ある大阪の地下鉄を未来に残してください!」という活動も始まり、賛同者は現時点(12月23日午後6時)で1万1000人を超えました。
そんな中、Twitterに駅の写真とともに「(改装予定の)動物園前駅のタイルも残してください…!」と投稿したのは、出版社「大福書林」の瀧さんです。
同社は、大阪で高度経済成長期の建築の魅力を伝えるBMC(ビルマニアカフェ)の本を出版。瀧さんも、動物を象ったタイルで彩られた御堂筋線の「動物園前駅」のデザインに心を奪われたそうです。
まずは、動物園前駅に住まう動物たちをご覧ください。
かっこいいライオンさんがいました。
氷の上で遊ぶペンギンさんたち、楽しそう!
しなやかに飛ぶシカさんがいます。
駅のコンコースをラクダが悠々と…。
カンガルーもいます。
木で遊ぶサルの姿も…。
手をつないで、仲良しだなぁ。
よーく見ると、おしりもタイルなんです。
かくれんぼをしているのかな?
わ…ワニさんが!食べられちゃいそう…。
首がながーいキリンさん。
優しそうなゾウさん。前にはかわいいイスも…。
美しい黒ヒョウも…。
もちろん、海の動物たちもいます。
通風孔も、溶け込むようなデザインになっています。
現在の動物園前駅のデザインについて、瀧さんはBuzzFeed Newsの取材にこう語ります。
「写真を見てもらうと分かるのですが、キリンやサル、ゾウなど様々な動物がタイルで表現されています。ホームの中に、さまざまな動物が隠れているんです」
「いっぴきいっぴきの動物が絵柄から描き起こされて、複数のタイルで作られている。タイルは焼く過程ですこし縮んでしまうので、完成したらピースがぴったりと当てはまるように計算されている。職人さんの素晴らしさもよくわかります」
たしかに、天王寺動物園の最寄り駅として、これ以上ないデザインかもしれません。
もしかしたら、こうした大阪の地下鉄の風景が無くなってしまうかもしれない……。
瀧さんは、「日常づかいの公共施設にこういった素晴らしい芸術作品があることは、豊かさでもあると思います」と指摘した上で、こう語ります。
「高度経済成長期には負の側面もありましたが、ビルやマンション、駅などに芸術家が腕をふるって作品を残してきたという、良い部分もあります」
「30〜40年、良い状態で愛されてきた駅が、地元に残りますよう祈っています」
「駅」という日常空間に残る可愛らしい作品たちは、まさに、大阪市民にとっての文化的遺産かもしれません。
「大福書林」プロフィール:大阪で高度経済成長期のいいビルを広める活動をしている「BMC(ビルマニアカフェ)」メンバーに薫陶を受け、「いいビル」に目覚める。BMC、写真家の西岡潔とともに『いいビルの写真集 WEST』『いい階段の写真集』『喫茶とインテリア WEST』など編集・出版を行う。