検索最大手Googleが11月上旬に実施したアップデートで、検索結果にこれまでにない変化が出ている。歴史に関する言葉で、大手メディアが上位に表示されやすくなった。
Googleはユーザーに価値の高い情報を届けるため、正確さに問題がありそうなページが検索上位に表示されないよう、検索のアップデートに取り組んでいる。
例えば、2017年4月にはデマや誤報などのフェイクニュースに関連し、「検索を改善するために、より構造的なアプローチが必要」と表明。同年12月には、医療や健康に関する検索結果の改善を目的とする大幅なアップデートを実施した。
今回特徴的なのは、歴史という政治的な立場の違いで論争が起こりがちな分野に踏み込んで、検索結果が大きく変化したことだ。
■なにがあったのか?
Googleが近年特に力を入れているのは、「YMYL(Your Money or Your Life)」といわれる生活に直結する情報で、信頼性と専門性を重視すると表明している。
SEO専門家の辻正浩さんは、今回のアップデートも「YMYLに関わるキーワードが中心」で、影響を受けたキーワード群は「かなり限定されている」と話す。
その限定されたキーワード群に歴史に関するキーワード検索が含まれていたというのが、辻さんの分析だ。過去にない規模で大きく変動した形跡があるという。
具体的に、どういう変化があったのか。
■CGM系サイトが軒並み検索順位を下げた
辻さんは、この半年間の83サイトにおける歴史関連の250キーワードの検索順位を分析した。
「戦争犯罪」「東京裁判」「第一次世界大戦」「第二次世界大戦」のほか、「南京事件」「従軍慰安婦」「ホロコースト」、それぞれと掛け合わせで検索される言葉で検索順位を調べた。
グラフを見ると11月初旬を起点に、新聞社など大手メディア系サイトや政府機関系サイトの検索順位が上昇している。
一方で、「まとめサイト」や個人ブログ、「NAVERまとめ」など読者投稿型のCGM系サイトは軒並み検索順位を下げている。
■実際のGoogleの検索画面を見てみると…
例えば、Google上で「ホロコースト」と検索すると、アップデートの前後でいくつかの違いが出ている。
こちらがアップデート前の検索結果。
こちらがアップデート後の検索結果。
比較をしてみると、前後とも変化がなかったのは検索1位、2位だった。
トップにはWikipediaの記事が表示される。
2位には「【嘘と捏造】 ホロコースト とかいう史上最大の作り話」という記事がある。
この記事は「ホロコーストは偽ユダヤのアメリカと共産主国家のソ連による捏造」「イスラエルという国を作る為に戦勝国がこぞってドイツに汚名を着せ正しい世界史を地球規模で封印した」と主張。
ナチス・ドイツによるホロコーストを否定する内容だが、アップデート後も検索上位にある。
変化が現れたのは3位以降だ。米ホロコースト記念館の公式日本語サイトが登場するようになった。
4位には、アップデート前に3位だったVOYAGEGROUPと朝日新聞社が運営する百科事典「コトバンク」の記事が表示される。
同様に「従軍慰安婦」のアップデート前と後の検索結果を比較してみる。
こちらがアップデート前の検索結果。
こちらがアップデート後の検索結果。
アップデート後には、「コトバンク」や、Amazonのリンク(吉見義明「従軍慰安婦」岩波新書)が上位に表示されるようになった。
一方で、「ジオシティーズ」や「NAVERまとめ」のコンテンツが大きく順位を下げた。
辻さんはこう分析する。
「今回Googleは様々なアルゴリズムを変更しましたが、その中での一つの動きとして特定のジャンルのワード、センシティブな歴史的な内容に関連する検索順位をアップデートしている形跡があります」
「ac.jpやgo.jpなど、研究機関や政府機関の順位が上昇しているのがはっきりとわかります。一方で、CGM系のサイトは明らかに順位が下がっています」
■過去にも「ホロコースト」をめぐりアップデート
こうした検索結果の順位変動は、単語だけに依拠するものではなく、同時に検索されるワードの掛け合わせで生まれる意味構造をアルゴリズムが判定している可能性があると辻さんは指摘する。
「例えば、『ホロコースト』という単語と『嘘』という言葉を検索した場合、検索した人はホロコーストの中身を知りたいと思っている」
「そうした時、比較的信頼性に欠けることが多い小規模サイトやCGM系のサイトを検索上位に表示することを防ぐアルゴリズムがあると考えられます」
歴史に関わる分野の検索をめぐっては2016年12月、Googleで「ホロコースト」と検索すると「ホロコースト否定」の記事が上位に表示されることを英ガーディアンなどが指摘。
これを受けてGoogleは、正確で信頼性の高い情報を検索上位に表示するよう検索のアルゴリズムを見直すことを表明した。
11月のアップデートも、これまで取り組んできたフェイクニュース対策の一貫なのだろうか。
Google日本はBuzzFeed Newsの取材に対し、「個別の件について、特にご案内できることはなく、ご存知の通り、検索アルゴリズムの改善を日々行っている」と答えた。
Googleでは、検索結果が適切かどうかをチェックする内部スタッフ向けのマニュアル「品質評価ガイドライン(General Guidelines)」が2018年7月に更新されている。
この中で、根拠のない陰謀説や専門家の意見と矛盾する内容、意図的に誤った情報を流すサイトについての対策を重視する姿勢を示されている。
その上で、「科学的、科学的、財政的、歴史的」なトピックに注意するようにも呼びかけている。