「NHKでアニメ化」きっかけは妄想ツイートだった…?『映像研』原作者が積極的にTwitterしまくる理由

    「やっぱり数字が一番わかりやすいですからね」

    今クール、大きな話題を呼んでいるアニメ『映像研には手を出すな!』。原作漫画は50万部を突破、書店でも品薄になるなど、大旋風を巻き起こしています。

    アニメ本編も素晴らしいですが、原作者・大童澄瞳さんのTwitterをあわせて見ると、さらに面白い。

    視聴者のファンアートや感想をリツイートしたり、質問に答えたり、いいタイミングで宣伝したり、裏話を披露したり……完全にマーケターです。

    そんな大童さんに、原作者目線で語るアニメの最高なポイント、アニメーターとして参加したEDのこと、うますぎるTwitterの使いこなし方のこと、聞きました。

    「完全にファンなので。アニメの。」

    ――アニメ第3話まで拝見しました。3話、本当に神回でしたね!?

    本当に! 神回でしたよ!!

    あの!!!ワシは『映像研』原作者の原作者なんじゃが、仕事上の都合で(公式の記事とか色々あって)今アニメ映像研の第3話を先に観たんじゃ。あのねえ!!!!!1話も2話も見逃した人!!!!!!!とりあえず第3話観ればいいわ!!!!!!!!!!!第3話!!!!神作品の神回だ!!!!!!!!!

    ――ぜひネタバレ全開で大童さん的にぐっときたたポイントを教えていただければ……。

    いや〜〜もうキャラクタの演技の段階でよかったですよね。トタンを持って部室の裏に向かう浅草氏が、金森の「真面目にやってくださいよ」って声に「わぁってるよ」(※浅草の声真似で)って返すのがすごいよくて。ここ好きでしたねぇ。

    あとはやっぱり、ミヤマカラスアゲハとタヌキのシーンの浅草氏と水崎の謎ダンス!「タヌキだタヌキだ、ぽんぽこぽんぽこ」って踊りまくっているのが最高で……3話始まってすぐですが「あ、こりゃ神回だわ」ってこの時点で思いました。

    あ〜〜あと細かいんですけど、部室の外で作業する浅草と金森の会話、「なんでリュック背負ってんすか?」「これは有人起動ユニット!」「ああ……」も好きでしたね! 金森の一言がよかった!

    ――どんどん出てきますね……!

    そりゃもう完全にファンなので。アニメの。

    もちろんキャラクタの演技だけでなく、動画も素晴らしかったです! 1話、2話も丁寧に仕上げてくださっていましたけど、3話でさらにギアが入ったような気がしました。さらにすごかった。この先も本当に楽しみです。

    🎥よりぬき映像研 ✏️ 第3話から、厳選されたシーンをアニメーターさんとともに一部ご紹介! 五十嵐裕貴さん 野崎あつこさん 五十嵐海さん  のシーンをよりぬき! 連続再放送は明日、2/2(日)16:15~17:55 NHK総合にて放送 #映像研 #eizouken_anime 👇放送詳細👇 https://t.co/ohC9Cxcb8i

    ――原作のコマとコマの合間を埋める、アニメならではのオリジナル描写がすごくいいですが、このあたりは事前にご存知なんでしょうか?

    脚本は見せていただいていますが、そのあとはノータッチですね。

    なので、一人の視聴者として毎週「そう来たか!」と楽しませてもらっています。原作者としても、いちアニメファンとしても楽しめて、おいしいポジションにいるな〜って。

    ワシはピッチャーオタクだからこの象印のクールピッチャー 1.7L グリーン DGB-17C-GAのこのフォルムがちゃんとゆるく丸みを帯びた形で色も再現されてるのに歓喜しているわけだけど、このカットで水崎氏がみんなの水を注いでくれてるのも水崎氏のキャラクターが深く理解されててとても最高です。

    ピッチャーオタクの大童氏による細かすぎるピッチャー解説

    憧れのアニメーターになれた

    ――原作者としてだけでなく、EDアニメーションにも参加しています。

    メインキャラ3人の歩いたり走ったりを中心に、細かいモーションをいろいろ作りました。うさぎが手を振ったり、浅草が手につけたキャノンを上に発射したり。

    映像研のエンディングはワシの描いたアニメーションが使われております

    監督から具体的な指示はなくて、「いろいろ組み合わせてEDに使いたいのでおもしろい動きをいくつか作ってほしい」というオーダーでした。

    ――通常の連載を続けながらアニメの作業もするのは大変だったのでは?

    それは……頑張りました(笑)。編集さんと相談して、連載の作業が少し空く時期に入れてもらったんです。

    サイエンスSARUさんのスタジオで朝から晩まで3日間こもって作業して、あれ、インターンかな? って気分でした。マンガを描き始める前からずっとアニメーターに憧れていたのでうれしかったですね。

    「アニメーターになりたいけど、通常ルートで行ったらワシはクソ雑魚なので一撃死んでしまうな」と思っていたワシの解決策は「せや、一旦漫画家になってヒット作とばしてアニメ化されたら本編に参加さして貰おう」だったという事だ。異常者

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    漫画家デビュー前の自主制作アニメ

    スタジオの隅で作業していると、「金森氏のあのシーンめっちゃいいよね」「あのカット誰々さんがやりたいって言ってたよ」みたいな会話がどんどん耳に入ってくるんですよ! それにニヤニヤしちゃいました、映像研、愛されてるな〜! って。

    ――Twitterでも言及されていた宇宙船の動きがかわいかったです。

    この緩い浮遊感から沈みつつ加速していく流れはわしが一コマずつ配置して、こう気持ちの良い作業でした、とても。

    この宇宙ボート、原作でもちょっと出てくるやつなんですよ(第4話)。形状が気に入っているので自分で動かしたいと思って。

    ――そうだったんですね! 帰ってもう一度よく見てみます。

    EDは背景に原作のコマや表紙の絵をたくさん使っていただいているので、いろいろ探してもらっても楽しいと思います。

    「勝手に言ってた」シリーズが現実に

    ――アニメーターとして何らか関わりたいというのは大童さんからの希望だったのでしょうか。

    いや、自分からというか……勝手にTwitterで言ってたんですよ。「やりたいな〜!チラッチラッ」って(笑)。『少女終末旅行』の原作者・つくみずさんがアニメ化の際にEDを描いていて「いいな〜」と憧れていたのもあります。

    でもそれ、こっちから言うとちょっと……出しゃばり過ぎかなって。断りにくいかもしれないし、プロの仕事に割って入るのも、と控えていたんです。

    そしたら、どこかのタイミングで湯浅監督からオファーいただいて。「大童がやりたいって言っていたらしいですよ」がどこかから伝わったようです。

    ――書いておいてよかったですね。

    そうですね、迷惑にならない程度に口に出しておくと……。

    そういう意味だと、「NHKでアニメ化」も「勝手に言ってた」シリーズですからね。まだアニメ化の話なんて全然ない頃から「NHKでアニメ化か?」って妄想ツイートしていましたから。

    これは映像研アニメ化NHKか・・・?(妄想)

    2017年のツイート

    ――すごい、夢がかなっている!

    実際、NHKのプロデューサーさん、そのツイート見て編集部にオファーくれたって言っていましたもん。もちろんそれが決め手ではないでしょうけども!

    時には「Twitter向いてない」となじられながら

    ――アニメ放送開始からフォロワーもどんどん増えています。Twitterを使った宣伝が上手だなと思っていましたが、以前から戦略的に使っているんですね。

    そうですねぇ、できる範囲で。宣伝にも交流にも使えるすごい武器だと思うので。

    最近はTwitterやpixivでデビュー前から有名な人って多いじゃないですか。僕は全然違って、Twitterのフォロワーもめちゃくちゃ少なくて。

    2015年のコミティアで編集さんに声をかけてもらったのですが、別に人気サークルだったわけでもないですし。コミティア自体2、3回目の参加で、それも最初に作った同人誌が売れ残っていたからという理由(笑)。

    2016年にいざ連載スタートって時に、試し読みをWebに掲載してもらったんです。たくさんの人に読んでもらうのも目的ですが、編集部や単行本の部数を決める偉い人に「ちゃんと売れますよ」と伝えるためには、リツイートがどれだけ稼げるかにかかっているなと。

    何度も何度も宣伝して、確か最終的に700リツイートくらいにはなったんです。当時にしては頑張ったと思いますよ!

    それで、1巻の単行本初版を無名の新人作家にしては多めに――と僕は感じたんですが――刷ってもらえたんです。リツイートの数だけが決め手ではないでしょうが、少しは貢献できたんじゃないかなと感じました。

    「映像研作者ツイッター向いてない」と言われるのも納得のあれですな。ワシのツイッターはフォロワー250人の昔と変わって暴れ馬になってしまった。ワシがというよりはやはり拡散力に応じて手綱をどれほど握るのかが重要なんですよ。2週間で2万人蔵ですよ、倍ですよ倍。

    ツイッター向いてない!って言われるほどツイッター的な事はないな!!!

    時に「ツイッター向いてない」と言われながらバリバリ使いこなす大童氏

    ――目に見える数字にこだわる姿勢、プロモーターですね。

    自分の作品がどれだけ認めてもらえているか、やっぱり数字が一番わかりやすいですからね。

    編集部や販売部に「ちゃんと売れます!」「みんなで売ってみんなで儲かりましょう!」と伝えるには数字で見せるしかない! Twitterなら自分でもできる! と思って。

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