幼児と保護者をつなぐ「迷子ひも」。
迷子ひもは、「幼児用リード」や「ハーネス」とも呼ばれる。幼児が急に車道に走り出たり迷子になったりするのを防ぐための道具だ。リュック型も多く市販されており、幼児の上半身と保護者の手がひもでつながれているスタイルが一般的だ。
日本では10数年前に輸入品が使われはじめたとされるが、たびたび議論が起きている。
2015年6月4日の朝日新聞の記事「幼児用リード じわり浸透?それとも違和感?」では、事故防止のために迷子ひもを使っている親を紹介。ネット上では共感する声がある一方で、「まるで動物のよう」「子どもを一方的に束縛している」「親がしっかり手をつなぎ、しつけをするべきだ」などの批判もあった。
「親が…」という批判の中には、「便利なグッズを使って、親がラクをするのはいかがなものか」といった安全面だけではない理由もある。
幼児の交通事故で最も多い「飛び出し」
交通事故総合分析センターの交通統計(2014年版)によると、歩行中の幼児(6歳以下)が第一当事者となった交通事故206件のうち、原因となった行動で最も多かったのが「飛び出し」(133件)。次いで「信号無視」(28件)、「幼児のひとり歩き」(19件)だった。交通ルールを認識していない幼児の突発的な行動が、事故につながっていることがわかる。
見た目か、安全か。後者の方が重要なのは、明確だろう。
Twitterでこんなアンケートが拡散されている(回答は締切)。
Twitterでアンケートの協力を呼びかけているのは、川崎医療福祉大学4年生の影山翔子さん(21)だ。
大学でデザインを専攻し、子育てを助けるツールを研究してきた影山さん。街中で迷子ひもを使っている親子を見かけたとき、自分は違和感がなかったが、違和感を覚える人がいることを知った。調べると、「ペットみたい」な見た目にマイナスイメージを持っている人が多いことがわかった。そこで、卒業制作で迷子ひもを作ってみることにした。
影山さんは、BuzzFeed Newsの取材にこう話す。
「保護者がひもを持つことが、犬の散歩を連想させるのではないかと考えました。ひもでつながれているように見えないこと、保護者がひもを手で持たないことを念頭に、使うのが楽しくなるようにデザインを工夫しました」
こちらが、その試作品だ。
【宇宙服風リュック】
【ひっぱりだこ】
【おでかけバディ】
3種類とも、ひもの先を保護者の洋服やバッグに装着でき、保護者は手でひも持つのではなく、子どもと手をつなぐことができる。
アンケートに1万件の回答
影山さんは、子育て中の人や、そうではないさまざまな年代の人が試作品にどんなイメージを抱くのかを調べるため、アンケート(12月8日をもって回答締切)を実施している。これまでに1万件を超える回答が寄せられ、今のところの一番人気は「おでかけバディ」だ。
Twitterでは、ひもの収縮性や脱げやすさ、安全性に関する具体的な質問があった。販売の予定はないのかという問い合わせもあったが、あくまで卒業制作なので、製品化の予定はない。
一方で、「ひっぱりだこ」には、「悪目立ちしてしまうのでは」といった意見も寄せられた。子育てをしている親の中にも、迷子ひもを使うことに抵抗がある人が少なくないことがわかった。
「感じ方は人それぞれ。使いやすいツールを作りたいですが、ツールがあっても使えない心理的な背景を変えていくことは、とても難しいと感じています」
子育てしている親に注がれる社会の視線。影山さんの研究は、その寛容度をはかるパラメーターのようだ。