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趣味更新日:2024-10-24

紙のぬくもりが素敵!【老舗製本会社・渡邉製本インタビュー】こだわりの紙製品をお聞きしました

【老舗製本会社・渡邉製本インタビュー】こだわりの紙製品をお聞きしました

東京都荒川区に、製本の技術を日々磨き続ける企業、渡邉製本があります。
昭和21年(1946年)に創立以降、出版社からの依頼をもとに、学術書などを中心に製造を行ってきた渡邉製本。
しかし、出版不況により受注数は減少したことをきっかけに、新たな施策を取り組み続けてきました。

今回は、そんな渡邉製本の代表・渡邉浩一さん、専務・渡邉彰子さん、企画開発・河合枝里子さんに新規事業で得たさまざまな出会い、
新製品「えぽっけ」を中心にさまざまなお話をうかがいました。

この記事を書いた人

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渡邉製本・プロフィール

製本一筋70年、機械加工と手加工の相乗効果であらゆる本を提供する「製本のコンサルタント」。
培ってきた技術・知識・経験を活かし、「製本コンサルタント」としてお客様の困りごとに向き合い、解決できるようアイデアを形にする提案を行っています。

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より多く、幅広いご依頼を受けようと立ち上げたホームページ

より多く、幅広いご依頼を受けようと立ち上げたホームページ

ー渡邉製本は、オンラインでの相談サービスやInstagramでの発信など、インターネットをさまざまな形で活用されているのが印象的でした。
 このように積極的に情報発信をされるようになったきっかけはあるのでしょうか。

渡邉浩一さん: もともと、渡邉製本は製本専門で始まった会社で、私で3代目になります。
かつては大学で使用される教科書や辞典、写真集をはじめとする出版物を受注・印刷することが中心でした。

しかし、少子化やデジタルコンテンツの急増による出版不況によって、その受注数も大きく減少しました。
そこでより多く、「幅広く仕事を集めよう」「新たに開拓をしていこう」ということで、10年ほど前にホームページを立ち上げました。

それがきっかけで、東京以外のエリアからもご依頼をいただけるようになりましたね。

ー それまでのお仕事は、過去にご依頼を受けた出版社が中心だったのでしょうか。

渡邉浩一さん: 約7〜8割が固定の出版社からのものでしたが、少しずつホームページからのお問い合わせと、その後のリピーターの割合が非常に増加しています。 今日もまさにアメリカからのお問い合わせがありましたが、過去にはマレーシアやシンガポール、オーストラリアからお問い合わせをいただいていますね。

2016年12月には、企画・開発に2年弱を要したオリジナル製品、「BOOK NOTE」の発売に至ります。
現在は「BOOK NOTE」以外にも、「NÚtta」、「CROSSFIELD」、「Ink Log」といった文具を販売しています。

試行錯誤を経て完成したBOOK NOTE

ー ホームページの影響で、ご依頼する方もワールドワイドになっているのですね。
お仕事をされる中で、この数十年の間で実感されているご依頼の変化などはありましたか。

渡邉浩一さん: 出版社からのご依頼は、ある程度体裁が決まっていることがほとんどです。

一方、デザイン会社では展覧会の図録や写真集などをいかにイメージに近づけるか、
印刷会社よりも製本会社へ相談しようとされるのか直の問い合わせが増加しているように思います。

それは手仕事でなければできない、特殊なつくりの製本だからこそでしょう。
そのようなご依頼をされる方は、紙にこだわりをお持ちだったりと、ポリシーを感じられる方が多いですね。
我々も、特殊なつくりの製本を日々勉強しながら試行錯誤しています。
機械を使った大量生産ではなく、手間がかかる仕事を引き続き受けていければと思っています。

試行錯誤を経て完成したBOOK NOTE

試行錯誤を経て完成したBOOK NOTE

ー 「BOOK NOTE」について、開発のきっかけをお聞かせください。

渡邉彰子さん: 出版物が集中する春、学術書が一新する秋に業務が集中する反面、夏は時間に余裕が生まれる時期です。

以前からそんな夏に「この時間を有効に使いたい」、「自社ブランドをやってみたい!」と漠然とした思いを抱いていました。

そんなときに「オリジナルのメイドインジャパンのノートを制作したい」といったアメリカの文具メーカーからご依頼があり、 ご相談しながらオリジナルノートを制作しました。

それと同時に、宝飾店や高級メゾン、自動車販売店を中心に、ゴムバンド付きのノベルティのノートを作りたいというご依頼から、
少しずつノート作りの経験や知識を獲得していたんです。

ー さまざまなご依頼がヒントになっていたのですね。

渡邉彰子さん: また、その頃文房具を中心とした出品している展覧会に参加し、「自分のところでもできるのではないか」と思ったこともあり、2014年からノートの開発がスタートしました。

     

ー 「BOOK NOTE」開発における最大の課題とは、どんな点だったのでしょうか。

渡邉彰子さん: 「ノートを作る」といっても、イメージを形にするだけでは簡単です。ただ、商品にして、売れなければ意味がありません。
その商品にするノウハウがわからなかったのと、売れるための販路の開拓が大きな課題でした。

「こういったものを作りたい」という漠然としたものを形にしましたが、一旦ゼロベースに戻した後、 商工会議所にご協力いただいて新製品開発の観点からノウハウを学びました。

そこから1年半以上かけて試作を繰り返しました。

ー 「BOOK NOTE」の素材面、技術面でのこだわりをそれぞれご紹介いただけますでしょうか。

渡邉浩一さん: 技術面では、180°フルフラットに、さらに360°折り返しても壊れない点です。
これは機械では作れない部分でもあり、職人の技術が生きた伝統的な製法を使っています。

そしてデザイナーやそれぞれの素材のプロとの相談も重要視しています。
たとえば表紙は長年お付き合いしている加工のプロ、
そして中身の紙は、我々よりも紙をよく知る専門家のアドバイスを受け、丈夫で使っていてもへたれない素材で制作しています。

試行錯誤を経て完成したBOOK NOTE

ー なるほど。ちなみにサイズや色はどれが人気ですか

渡邉彰子さん: 当初、BOOK NOTEはB6サイズの、約200グラムのものしかありませんでした。

「200gはスーパーのお肉のパックくらいの重さだけど、それくらいなら荷物にならないのではないか」
「仕事中のメモは、相手によって印象が良くないからある程度の大きさがある方が望ましいのでは」といった意見から、

荷物が多くなりがちな女性の負担にならない、それでもメモよりもしっかりお仕事に使えるくらいのボリュームというコンセプトに落とし込んでいきました。

ー 具体的な重さや使用シーンも想定されたうえで、開発されていたのですね。

渡邉彰子さん: そこから「A5サイズも欲しい」という声も多くなってきたため、A5サイズの販売が始まりました。
最初はあまり販売数が伸びなかったのですが、現在はA5サイズの方を手に取る方が増えています。

試行錯誤を経て完成したBOOK NOTE

河合枝里子さん: また、渡邉製本では一部のオンラインストアで購入された方に向け、断裁機を使った「カスタムカット」という独自の技術で、お客様ご希望のサイズにミリ単位でカットするサービスを行っています。
これはBOOK NOTEが三方が切りっぱなしのようになっているからこそ、できるサービスであり、裁断した残りの部分も同封してお送りしています。

当初はこのサービスを利用される方はそこまで多くなかったのですが、文具好きのYouTuberの方や、
BOOK NOTEアンバサダーに就任いただいた漫画家・星野桂さんの発信からサービスの認知度がアップ、利用される方も多くなっていますね。

試行錯誤を経て完成したBOOK NOTE

ー BOOK NOTEは表紙の名入れサービスも行っているとのことですが、贈り物としても喜んでいただけそうです。

渡邉彰子さん: 3月は特にプレゼントとしてご購入される方が多いですね。
先生が部活をされている生徒たちにメッセージを入れて贈られたり……といったこともよく見られます。

試行錯誤を経て完成したBOOK NOTE

ーオンラインショップのホームページでは、ご購入されたお客様それぞれの「BOOK NOTE」の使い方も紹介されていますね。

渡邉彰子さん: BOOK NOTEアンバサダーで多言語を勉強されている方がいるのですが、
ハビットトラッカーや今年の目標など、誰でも真似できるような使用方法をInstagramでのご紹介し、多くの方から人気を集めていました。
初期にご購入いただき、イベントにもいらっしゃってくれるイラストレーターさんは、無地のB6サイズのBOOK NOTEをネタ帳として活用されています。

ある日、インドで美しい装丁の本を手掛けられている小さな出版社、タラブックスのトークイベントに行けなくなってしまったとき、そのイラストレーターさんがBOOK NOTEにイベントの様子をイラストともに描いて送ってくださったんです。
あまりにも素敵だったので、許可をいただいたうえでSNSに載せたところ、トークイベントに登壇された方にリアクションをいただいたこともありました。
そこでつながって彼女のイラストが本になったりと、BOOK NOTEはさまざまな形で面白い縁を生み出しているように思います。

お子さまの作品、旅行の思い出……新製品、えぽっけの魅力

お子さまの作品、旅行の思い出……新製品、えぽっけの魅力

ー 7月末に発売を控えている、渡邉製本の新製品「えぽっけ」についてお聞かせください。

渡邉彰子さん: 「えぽっけ」は、お子さまの描いた絵や作品をポケットフレームに入れ、ゴムバンドで閉じる製品です。

渡邉製本ではBOOK NOTE以降、文具製品を複数点販売していましたが、「ノートばかりだとこの先行き詰るのではないか」という思いを抱いていました。
しかし、「若い人の間で何が流行っているのかわからない、ついていけない」とデザイン事務所の重役として働いている友達に話したとき、「流行ではなくて、自分ができることや自分の年齢層のことを考えてもいいんじゃない?」と言われてハッとしたんです。
そこで周りを見渡してみたところ、お孫さんが生まれた方が多いことに気づきました。そんな方々が喜ぶような、家族間コミュニケーションに役立つものを作れたらいいなと思ったのが、「えぽっけ」開発のきっかけです。

リサーチをしていく中で、お孫さんの育児を手伝うアクティブシニアの方々とお話をさせていただく機会があったのですが、
「孫が描いた絵や工作がどんどん溜まっちゃうのよね」という意見がありました。
実際に私も、娘が幼い頃に描いてくれた絵をお道具箱に取っておいていたんですね。

そこで、お孫さんの作品を保存できるものを作ろうと思いました。

お子さまの作品、旅行の思い出……新製品、えぽっけの魅力

ー 思い出に残るものだからこそ、きれいに保存しておきたい方も多いですよね。

渡邉彰子さん: ファイルのようなものに保存している方も多いかもしれませんが、テープで貼っているものが取れてしまったり、時間が経つにつれて変色してしまいます。

そこで簡単に収納できるけれどただの収納に留まらないものを考えていました。
収納用品を作るというよりは、「このときってこういうものを作りたかったんだよね」「こういうシチュエーションで作ったよね」という背景を落とし込みたいという狙いもあります。

また、「えぽっけ」はポケットフレームに入れたものを取り外したり、並べ替えたりと編集することも可能です。
一部を抜粋しておじいちゃん、おばあちゃんに贈ったり、タイムカプセルのように数十年後に「こんな絵も描いてたね」なんて見返す楽しみ方もできるかもしれません。

ー 作品はもちろん、思い出も少しずつ溜まっていくのも素敵ですね。

河合枝里子さん: お子さんの描いてくれた絵や作品を入れて、後から見返すことで一緒に思い出を育てていけるような使い方をしていただけたら嬉しいです。 小さいお子さんがいる、普段製品の意見をいただいている方からも「実家に置いておいて、帰省時に描いた絵を入れてどんどん増やしていく使い方も良いですね」と言われました。

一方で、紙や素材にこだわっているので、お子さま向けだけではなく大人にも好評なのではないかとも思います。
実際にモニタリングの一環で展示会に出展したところ、写真を趣味にしている方から
「これに写真を入れて展示スペースに置いておいたらさまになるな」という意見もありました。

そのほかにもお酒が好きな方がきれいなワインのラベルをコラージュして飲んだ記録とともに保存したり、
旅行好きな方が旅先の記録として旅先でもらった美術館の案内やチケットなどをまとめたり……といった使い方も素敵だと思います。

ー 観た映画のチラシや半券をまとめて……といった使い方もできそうです。

河合枝里子さん: 余白もありますし、ノートと同じように購入された方それぞれの使い方ができるため、発売後に購入された方がさまざまな使い方をされている様子をSNSで見るのがとても楽しみです。

渡邉製本の抱く、今後の展望

渡邉製本の抱く、今後の展望

ー 今後作ってみたい製品や、今後の展望についてお聞かせください。

渡邉浩一さん: 皆さんに喜んでいただける、紙製品を引き続き作っていきたいですね。

Twitterでもツイートしていますが、現在「製本キット」という、誰でも上製本を作れる道具を検討しています。
若い社員たちが「こうすれば簡単にできる」と考えながら作っているため、彼らにとっても勉強になる良い機会になっていると思います。
このように、自社製品を積極的に開発、情報発信することも続けていきたいです。

まだまだ製本業は厳しい状況なので、引き続き会社としての実績を作っていきたいです。
「渡邉製本に頼むと、高いけれどいいものを作ってくれる」と思っていただけることで、残業しなくてもいいものを作れる、従業員の負担も下げられる環境づくりにつなげられたらと思います。

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取材を終えて

取材を終えて

BOOK NOTEをはじめ、長年培った技術を結集したオリジナル商品には、試行錯誤を繰り返した渡邉製本の努力が詰まっていると感じられました。
新製品・えぽっけも、「好き」や「楽しい」を形にできる、素敵な製品です。ぜひ、皆さんも手に取ってみてはいかがでしょうか。

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