『奇跡の森 EXPO ’70』
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『奇跡の森EXPO’70』畑祥雄著
[レビュアー] 鵜飼哲夫(読売新聞編集委員)
1970年の大阪万博には、小学5年のときに行った。保存してある入場券を見ると、「小人400円」。月の石を展示したアメリカ館など有名パビリオンはどこも長蛇の列で、アフリカや東南アジアなどの小さな展示館をたくさん歩き回った。
183日間の会期後、シンボル「太陽の塔」は残り、パビリオン群は解体された。跡地の再開発構想もあったが、経済優先の「お祭り」への反動もあり、東京ドーム64個分の敷地で、自然の回復をテーマに「森創り」が始まる。
解体資材を埋めて盛り土した土地は水はけがよく、木々は成長。50年で都市の中に森が誕生した。
その現在をとらえた写真集の主役は、かつてあったようなきらびやかな人工物ではない。人にはつくることができない動植物たちであり、自然と人工のふたつの太陽のもとで遊ぶ子供たちの姿である。ここには21世紀の「人類の進歩と調和」がある。(ブレーンセンター、3850円)