大阪府茨木市にあるコンビニの駐車場で、2台合わせて1万時間以上も無断駐車した男性。コンビニの経営者が、この男性を相手取り、損害賠償を求めて提訴したところ、大阪地裁はこのほど、男性に約920万円の支払いを命じました。
報道によりますと、男性は2013年8月から2015年2月にかけて、計7424時間にわたって、コンビニの駐車場に、無断で乗用車を駐車していました。2014年6月以降には、別の乗用車も計3694時間とめていたということです。
コンビニの経営者は、1時間あたりの駐車代金を700円として、慰謝料を含めた損害賠償の支払いを求めて提訴しました。一方、男性は、口頭弁論期日に出廷せず、さらに答弁書などの準備書面も提出しなかったため、ほとんど請求どおりの判決が言い渡されたようです。
とはいえ、コンビニの駐車場など、私有地に無断駐車する人は少なくありません。今回の裁判で、男性は反論しなかったようですが、一般論として、無断駐車の損害賠償額はどう決まるのでしょうか。前島申長弁護士に聞きました。
●店側は、賃料相当の「損害金」を請求することができる
「コンビニの駐車場では、店での買い物など必要な範囲において、無料で駐車が認められたものと考えられます。
したがって、店に用事がないにもかかわらず、わざと自動車を駐車しつづける行為(無断駐車)は、不法占拠の一種として、不法行為が成立し、損害賠償責任を負うことになります(民法709条)。
つまり、店側は、賃料相当の損害金を請求することが可能となります」
●近隣の有料駐車場の駐車料金などが参考になる
「問題は、その賠償額です。一般的には、近隣の有料駐車場の駐車料金などを参考に、裁判所が決定することになります。
今回のケースでは、合わせて1万1000時間以上の不法駐車に対して、車1台分1時間の損害賠償金を700円として計算したものです。このほかにも、弁護士費用などの加算がされた結果、高額の賠償額(約920万円)が認められたものと思われます」
●具体的に発生した損害金の支払い義務が発生する
「なお、無断駐車に対して『3万円払ってもらいます』などと書かれた看板が設置されていることがあります。しかし、かならずしも同金額を支払う義務が生じるものではないと考えられます。
というのも、日本の裁判例では、一般的に、実際に発生した損害(実損)が、損害賠償の対象になるからです。したがって、不法駐車に対し、具体的に発生した賃料相当の損害金の支払い義務が発生することになります。
今回の裁判では、被告(男性)が期日に出頭せず、原告(コンビニの経営者)の主張がおおむね認められることになりましたが、仮に被告が期日に出頭して、賃料相当の損害金の支払いを争ったとしても、一般的には、賃料相当の損害金の支払いは認められることになると考えられます」