【解説】 デマを広める7タイプの人々 新型ウイルス流行の影で

マリアナ・スプリング、虚偽情報専門記者

Characters who create fake news
画像説明, オンラインで悪質な情報を広めるのはどんな人なのか

新型コロナウイルスをめぐって、陰謀論、デマ、臆測がソーシャルメディアにあふれている。でも、そうしたうわさは誰が始めたのか? そして誰が広めているのか?

BBCでは世界的流行(パンデミック)が続くなか、誤解を与える話を何百も調べた。その結果、デマの背後にどんな人がいて、その動機は何なのかが見えてきた。うそをつくり出し、広めているのは次の7タイプの人たちだ。

1. 冗談好き

"Joker": Jester in red and yellow on red background

英政府がロンドン市民の空腹を満たすため、ウェンブリー・スタジアムで巨大なラザニアをつくっている――。そんなワッツアップの音声メッセージにだまされた人なんていない、と思うかもしれない。しかし、冗談だとわからない人もいた。

もうちょっと深刻な例をみてみよう。いたずら好きな人が、あなたは家から出た回数が多過ぎたので罰金を科します、というニセの政府文書の画像を作ったとしよう。ロックダウン(都市封鎖)のルールを破っている人を怖がらせるのは面白いと、彼は思ったのだった。

インスタグラムのフォロワーたちに拡散するようけしかけると、文書を真に受ける人が現れた。そうした人たちを含め、不安に思った住民たちによって、文書は地域のフェイスブックのグループに投稿された。

「パニックを起こしたいわけじゃない」と、このいたずら好き(実名は明かさなかった)は言う。「もしソーシャルメディアの画像を信じるとしたら、その人はインターネット上の情報の受け止め方について、考え直すようなことが必要だ」

2. 詐欺師

"Scammer": Man in suit holding bag of money

政府や地方自治体が出したとする他の偽文書には、パンデミックに乗じて金もうけを狙う詐欺師が作ったものもある。

ファクトチェック(事実確認)団体「フル・ファクト」が3月に調査した詐欺のケースでは、政府が支援金を給付するとし、銀行口座の詳細を聞き出していた。

このときの偽文書の写真はフェイスブックでシェアされた。文書はメールで拡散されたため、背後にいた人物を特定するのは困難だ。

詐欺師らは早くて2月には偽情報を使い始め、金もうけをしていた。そのとき送ったメールは、「コロナウイルス治療報告はここをクリック」と呼びかけたり、新型ウイルス流行により税金の還付が受けられると伝えたりしていた。

3. 政治家

"Politician": Cartoon politician on red background

デマはインターネットの怪しげな片隅で生まれるとは限らない。

ドナルド・トランプ米大統領は先月下旬、新型ウイルス治療の一助として、患者の体に紫外線を当てたり、漂白剤を注射したりしてはどうかと発言。臆測をめぐらせ、事実を文脈から切り離して取り上げたのだった。

彼はその後、発言は皮肉だったと主張した。しかし、消毒剤で自分の体を治すことについての問い合わせが、ホットラインに相次いだ。

米大統領だけではない。中国外務省の報道官は、COVID-19(新型ウイルスの感染症)が米軍によって武漢市に持ち込まれた可能性があるとの見方を示した。ロシア国営テレビのゴールデンタイムの番組や、ロシア政府寄りのツイッターのアカウントでは、感染流行に関する陰謀論が話題になっている。

4. 陰謀論者

"Conspiracy theorist": Man in glasses and hoodie sitting at laptop

新型ウイルスをめぐるあらゆる不確実さが、陰謀論にとって格好の温床をつくり出している。

イギリスのワクチン臨床試験に参加した最初のボランティアが死亡したという出所不明の作り話は、ワクチンに反対する人々と陰謀論者たちのフェイスブックの大規模グループでどんどん広がった。

YouTubeに投稿されたデイヴィッド・アイク氏のインタビューは、5G(第5世代通信規格)がコロナウイルスと関係があるとの誤った説を広めた(このインタビューその後削除された)。アイク氏はロンドンのテレビ局の番組にも出演。同局はイギリスの放送基準に違反したとされた。フェイスブックによると、彼のページは「人体に害を及ぼしかねない、虚偽の保健情報」を掲載したとして、のちに削除された。

こうした陰謀論によって、5Gの電波塔への数々の攻撃が起こしている。

5. 内部関係者

"The Insider": Cartoon man in lab coat and sunglasses on red background.

時として、デマは信頼できる筋から出ていると思われることもある。医師や教授、病院職員だ。

だが、「内部関係者」は往々にして、まったく関係者ではない。

ウエスト・サセックス州クローリー在住の女性は、とあるパニック状態の音声メモの作成者だ。若く健康的なコロナウイルス感染者の死者数に関する、悲惨な(しかし全然根拠のない)予測を伝えていた。彼女は救急車サービスの仕事を通して、内部情報を得られると主張していた。

彼女はBBCの取材に対しコメントも、職業を証明するものの提示のお願いにも応じなかった。そのため、彼女が実際に医療関係者なのかはわからない。しかし、彼女の音声メモの内容が事実無根であることはわかっている。

6. 身内

"The relative": a woman looking at her phone

あの音声メモや、他の多くのものがどんどん広まったのは、人々を不安な気分させ、その人々がまた友人や家族にシェアしたからだ。

エセックスに住む4人の子どもの母親、ダニエル・ベイカーさんはその1人だ。フェイスブックのメッセンジャーに出ていた書き込みを、「本当だった時に備えて」転送した。

「知らない女性から送られて来たので、最初はちょっと用心しました」と彼女は言う。「転送したのは、私と私の女きょうだいに同い年の赤ちゃんがいて、さらに年上の子どもたちもいて、どっちの家もリスクが高いからでした」

こうした人は他の人の助けになろうとしていて、役に立つことをしていると思っている。しかし、当然のことだが、だからといって転送しているメッセージが真実ということにはならない。

7. 有名人

"The Celebrity": Woman in hat and striped dress against red background

お母さんやおじさんだけではない。有名人も、誤解を生むような増幅された主張をメジャーにしてきた。

歌手M.I.A.さんや俳優ウディ・ハレルソンさんは、ソーシャルメディアの何十万人ものフォロワーたちに5Gコロナウイルス説を伝えてきた有名人の例だ。

ロイター・インスティチュートが最近出した報告書は、オンラインのデマの拡大において、有名人が重要な役割を果たしているとした。

伝統的メディアに強大な意見表明の場をもつ人もいる。イーモン・ホームズさんは司会を務める英民放ITVの番組で、5G陰謀論にある程度の信用を与えたように映ったとして批判された。

「私が受け付けないのは、本当ではないとわからないときに、主流メディアが本当ではないとすぐさま非難することだ」と彼は発言した。

ホームズさんはのちに謝罪。イギリスの通信庁は,このコメントは「軽率」だったとし、ITVを指導した。

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(英語記事 Who spreads 'fake news'? )