【解説】 より良い在宅勤務へ 便利なコツやツールは?

ジェシカ・ブラウン、ビジネステクノロジー記者

Louise Halford and her home office

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画像説明, マンチェスターで弁護士事務所を構えるハルフォードさんは、新型コロナウイルスの流行を受けて在宅勤務に切り替えた

マンチェスターで弁護士事務所を構えるルイーズ・ハルフォードさんに、スタッフが気がかりなことを言ってきた。スキー旅行から帰ったところだが、インフルエンザのようだと。

それを聞いたハルフォードさんは、リスク回避を選んだ。万が一にも新型コロナウイルスをオフィスに持ち込まないよう、スタッフには自宅勤務を指示したのだ。

ハルフォードさん自身もその後、似たような症状が出たため、在宅勤務に切り替えたという。

「事務所のスタッフには免疫疾患のある人がいるので、危険をゼロにしたかった」と、ハルフォードさんは話した。

新型コロナウイルスによる感染症(COVID-19)の流行拡大を抑えるため、世界中で何百万人もの人が家にとどまるよう指示されている。

米アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)は、従業員に「業務に支障がないなら、自由にリモートワークに切り替えてほしい」と伝えた。

アマゾンやグーグルも似たような方針を取っている。

英弁護士事務所スティーヴンズ・アンド・ボルトンで雇用法を専門とするハナ・フォード弁護士は、「雇用主は新型ウイルス流行を深刻に受け止めている」と説明した。

「私たちも、多くの顧客に危機管理計画について助言している」

幸いなことに今では、従業員が在宅でもしっかり職務を果たせられるようにする、様々やツールやサービスがたくさんある。

Woman waves to her laptop during a videoconference at home

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画像説明, ビデオ会話技術の需要は世界的に高まっている

連絡を取り続ける

同僚とのコミュニケーションは業務に不可欠だ。それゆえに、遠隔でも会議のできるサービスの人気が高まっている。

中国では新型ウイルスが流行し始めて以来、シスコ社のオンライン会議サービス「Webex」の利用者が22倍に膨らんだ。

Webexは競合サービスと同様、需要の高まりを受けて無料プランを拡充した。現在では、90日の無料プランで無制限に利用できるほか、参加人数の上限も50人から100人に増えている。

競合の「Zoom」にも無料のビデオ会議プランがある。プランでは1対1の会議に加え、最長40分、最大参加人数100人のグループ会議も無制限で行える。

セキュリティーの確保

重要な情報を盗んだりオンライン詐欺を企んだりするハッカーにとって、在宅勤務の初心者は格好の餌食だ。

大半の企業は、情報を保護するために仮想プライベートネットワーク(VPN)を構築し、社内のITシステムと利用者のパソコンとの接続を暗号化している。

しかし高品質のVPNを使っていても、従業員全員が一度にアクセスするとなれば、ライセンスの買い増しやサーバー増強などが必要になってくる。

フォード弁護士は、「全員が遠隔で業務に当たっても耐えられるよう、多くの企業がサーバーのストレステストを行うようになった」と話した。

VPN以外にも、自宅のパソコンから会社のパソコンを操作できる「リモート・デスクトップ」ソフトウエアを導入するという方法もある。

さらに両方の技術を使えば、仕事用のパソコンに安全にアクセスできるようになる。

Lady and dog

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家で仕事をするとなったら、自宅のインターネット接続の信用性も確認した方がいい。

自営の会計士、エリザベス・スタンリーさんは、新型ウイルスの影響で自主隔離することになった人に対し、「インターネット接続とセキュリティーを今すぐチェックすること」とアドバイスしている。

「VPNへのアクセスが可能かどうかは、プロバイダーや加入しているプラン、地域によって異なるので、プロバイダーに確認した方がいい」

VPNアクセスが認められていないなら、プランをアップグレードしたり、モバイルWi-Fiなどの導入が必要となる。

書類のやりとり

色々な場所にいる同僚と一緒に仕事をするには、インターネット上で書類などを共有する必要がある。

たとえばメッセージサービス「Slack」は、プラットフォーム上でファイル共有やビデオ通話が可能で、「電子メールに取って代わる」ことを目標としている。

Slackのユーザー数は約1000万人。ロンドンで自営業向けの口座管理アプリ「Coconut」を運営するサム・オコナーさんもその1人だ。

「遠隔で仕事をしている場合、みんなとやりとりするのにSlackは本当に便利だ」とオコナーさんは話す。

Slack logo

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Slackは新型ウイルスの影響で隔離措置を受けている人へのアドバイスとして、プラットフォーム上に「お知らせ」チャンネルを作ることを推奨している。このチャンネルでは経営陣や管理職にのみ重要内容の投稿を許可し、他の人は閲覧だけ可能にするのがお勧めだという。

アプリ上のステータス表示を通話中、離席中のように細かくカスタマイズすることも推奨している。さらに、スライド作りに時間と労力をかけすぎないよう、まずは紙の上にアイデアを書いてからそれを写真に撮った方が効率的だとアドバイスしている。

Slackはこうした通話サービスの一例に過ぎない。

米マイクロソフトの提供するプラットフォーム「Teams」では、無料プランでも最大300人が参加可能。さまざまな会議形態やファイル・画面共有機能、オンラインでの書類作成機能などを提供している。

マイクロソフトも、COVID-19の流行による需要増に伴い、有料サービスを6カ月試用できるプランを発表している。

同種サービスを提供している「Asana」も、2019年には有料会員数が7万人を突破した。

おやつ、ペット、家事

Kitten on keyboard

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在宅勤務で気が散ってしまう場合はどうすればいいだろうか? お菓子を食べたり、ペットと遊んだり、家事をしたり……有給でやっている仕事よりもこちらの方が楽しいのでは?

家では集中できないというそういう人にも、便利なツールがある。たとえば「Focusmate」は、在宅勤務者同士をつなぎ、互いに仕事をしているか監視しあうサービスだ。

使い方は、仕事を始める前にパソコンのカメラをつないでおくだけ。仕事中にテレビを見たりしても制裁はないが、カメラの向こうの他人からそれとなく注意されるかもしれない。

それでもf同社によると、だらけてしまう時間が減ったと利用者には好評だという。

個人のモチベーションを上げるには、周囲の圧力は効果的な方法のひとつなのだそうだ。

これだけの技術が手元で自在に使えるとなると、もう二度とオフィスに行く必要はないのではないかと、そういう気にさえなるかもしれない。

ハルフォードさんは、「(新型ウイルス流行によって)柔軟な働き方への対応を充実させた方がいいと、雇用主を説得しやすくなった。それはせめてものひょうたんから駒かもしれない」と話す。

「長期的に見れば、交通渋滞や大気汚染といった問題についても、在宅勤務は前向きな解決策になるかもしれない」

(英語記事 Tricks and tools for better working from home)