イギリスのロックダウンで変わった6つのこと……外出、買い物、犯罪、大気汚染

View across the Thames to St Paul's showing empty bridge

画像提供, Getty Images

新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めるために様々な規制が導入されてから、イギリス国内の生活は様変わりした。

ボリス・ジョンソン英首相は3月23日、必要不可欠ではないすべての移動や集会を禁止すると発表した。運動や必需品の購入、治療目的のため、あるいは在宅勤務できない仕事への通勤に限り、外出を認めるというものだった。

パブやレストラン、劇場、映画館、礼拝所に加えて、必需品を販売していないすべての店舗が閉鎖となった。社会のあらゆる側面に影響をもたらしているこうした厳しい制限は、少なくとも5月上旬まで続くという。

では、これ以外に何が変わったのか。

(1)お互いの距離を保っている

ロックダウン(都市封鎖)の目的は、新型ウイルスの感染拡大を抑えること、そして国民医療制度の国民保健サービス(NHS)がこの危機に対処できるよう助け、最終的に死者数を減らすことだ。

英政府は、新たに確認される感染者数の伸びが安定しつつあると話す。これは、市民が行動制限を順守することの効果が、表れ始めている証拠だという。

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政府の首席科学顧問を務めるサー・パトリック・ヴァランスは、「感染者数は急激に増加はしていない。とてつもなく大きな数字にもなっていない。そして強いて言えば、(感染者数の上昇曲線は)いくらか平坦になっているかもしれない。これは、私たちがみんなして社会的距離を保っているからだ」と述べた。

医療機関の利用の仕方も変化している。

今年3月には、緊急外来の利用者数は減少した。その一方で、NHSホットライン111(医療電話相談)への問い合わせは史上最多となった。

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(2) 移動頻度が減少した

公共交通機関の利用頻度が劇的に減少した。この傾向は、多くの人が在宅勤務を始めたことで、ロックダウン措置の発表以前から出ていた。

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英運輸省によると、ロンドン市内のバスや鉄道、地下鉄といった交通機関全体の利用量は、2月上旬から4月上旬の間で約60%減少した。

英国内の主要な鉄道駅でも客足が大幅に減っている。このことは、英鉄道運行会社「ネットワーク・レイル」のデータからうかがえる。

ロックダウン措置導入の前週には、中部バーミンガム・ニューストリート駅の利用客数は50万人を超えていた。しかし、4月初めには86%減の7万1230人だった。同様の傾向はロンドンや北西部マンチェスターでもみられる。

Googleアナリティクスのデータによると、ロックダウンが始まって3回目の日曜日だった4月11日には、公園やビーチへの移動は通常より37%減少していた。しかし、ロックダウンが始まって1週間の時点では通常より半分以上も減っていた。

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(3) 犯罪は減少、反社会的行動は増えた

イングランドとウェールズでは4月12日までの4週間で、犯罪が前年同期と比べて28%減少した。例えば、大勢が屋内で以前よりも長く過ごすようになったため、住宅強盗は3割以上減った。

一方で、反社会的行動に関連した事案は59%増加した。

この増加は、ロックダウン措置違反に関連している可能性が高い。全国警察本部長評議会(NPCC)によると、イングランドで罰金が科された事案は3200件以上だったという。

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こうした中、ロックダウン開始以降、「全国家庭内虐待ヘルプライン」への相談件数が25%増加していると、ヘルプラインを運営する慈善団体「レフュージ(避難)」が報告している。

現在では毎週、助けを求める電話が通常より数百件も多く寄せられているという。

同団体は、自宅待機することで、以前から続く虐待行為を悪化させる可能性があるが、外出を控えていること自体が虐待の理由にはなっていないと説明する。

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ほかの複数の国でも、家庭内暴力の増加がみられる。フランスではDV報告件数が32%増加し、スペインではジェンダー暴力ホットラインへの通報件数が12%増加している。

(4) 売上高

ロックダウンが始まる前週には、スーパーマーケットの売上は前年同期と比べて43%増加していた。品不足を恐れた多くの人が、買いだめに殺到したからだ。

しかし、調査会社ニールセンによると、平均売上高はロックダウン開始後の2週間で7.4%減少したという。

同社の小売業分析などを担当するマイク・ワトキンス氏は、「移動しないようにと指示が出た時点で、みんな買い物をやめた。もうたくさん買い込んでいて、自宅の納戸や冷凍庫は満杯だったからだ」と指摘する。

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ところが、スーパーマーケットの売上は4月第2週(5日~11日)には平均より9%近く高い水準に戻っていた。買っておいた余分な食べ物を食べきってしまったのかもしれない。

では、どういう商品が特によく売れているのか。

groceries drop
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イースター(復活祭)の連休(10日~13日)に備えて買いだめした人たちの影響で、スーパーマーケットのビールやワイン、蒸留酒の売上が30%増えた。

コンピューターゲームやソフトウェアの売上は140%、植物の球根や種の売上がこれに続いた。切手や、ピザなどの生地、ペイストリー(焼き菓子)の売上はいずれも80%近く増えた。

一方で、洗面用品の売上が23%減るなど、非食品全体の売上は減り続けている。

(5)低所得者向け給付金の申請増加

ロックダウン開始以降、100万人近い人がユニバーサル・クレジット(低所得者向け給付制度)を申請している。

このうち約47万3000人が最初の8日間に申請した。これは、過去3週間の申請者数の合計とほぼ同じ人数で、週平均より10倍近く多かった。

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ユニバーサル・クレジットとは、所得に基づいた失業手当や住宅手当、児童税控除、勤労税控除といったこれまでの多くの給付金に代わる、労働者のための月々の統合給付金制度のこと。

この給付金制度の利用者は今も依然として多いが、ロックダウン1週目にピークに達した申請者の数が、現在は減り始めていることがデータからうかがえる。

(6)大気汚染が改善された

イギリスの大気汚染レベルは、ロックダウンが始まってから数週間で大幅に低下した。

二酸化窒素(NO2)量はイギリス全土で減少しており、1日平均では前年同期と比べて40%近く減った。

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車両の排気ガスから放出されるNO2は、深刻な大気汚染の原因になる。

環境・食料・農村地域省(DEFRA)の統計に基づくBBCの分析では、南部ブライトンやポーツマスなどの複数都市で、NO2量が60%以上減少している。

(大気質モニタリング・ステーションからの日々の数値を前年同期と比較。この記事は4月13日に掲載したものに最新統計を加えて更新したもの)

(取材:エレノア・ロウリー、ベン・ブッチャー、ジョエル・マシー、ジェイク・ホートン、ニコラス・バレット)

(英語記事 Six ways the lockdown has changed the UK)