アメリカ、ウクライナ「アゾフ連隊」への武器供与の禁止を解除

アゾフ連隊

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画像説明, 「アゾフ連隊」はウクライナで最も強力な部隊の一つとみられている

アメリカは、ウクライナの「アゾフ連隊」に対する長年にわたる武器供給と訓練の禁止を解除した。同連隊は、その起源に極右集団とのつながりが疑われており、議論を呼んできた。

米国務省の報道官は匿名を条件にBBCに対し、ウクライナ国家警備隊の第12特務旅団「アゾフ連隊」を審査した結果、「重大な人権侵害の証拠は見つからなかった」と背景を説明した。

アゾフ連隊は今回の動きを歓迎。ロシアの「うそが(中略)壊滅的な打撃を受けた」とした。

一方、ロシアはアメリカの決定を非難。ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官はアメリカについて、ロシアを弾圧するためなら「ネオナチにこびる用意すらある」と述べた。

アゾフ連隊の掲示物

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画像説明, 「アゾフ連隊」の隊員らはウクライナで多くの人々に国民的英雄とみられている

「アゾフ」と呼ばれる義勇民兵の大隊はもともと、ウクライナ東部ドンバス地方でロシアが支援する勢力と戦うため、2014年5月に設立された。同年末、ウクライナ内務省の独立連隊として一時的に編入され、その後に国家警備隊に移管された。

当初のメンバーの一部は、極右やウルトラナショナリスト団体とつながりがあったとされた。ただ、そうした人のうち、初代司令官を含む何人かは後に部隊を離れた。

アメリカはアゾフ連隊に対し、極右勢力とのつながりが疑われることを理由に、米製兵器を受け取ることを禁止していた。

アメリカの「レイヒー法」は、重大な人権侵害に関与しているとされる外国の軍隊に対してアメリカの資金援助や訓練が提供されるのを禁止している。1997年にパトリック・レイヒー上院議員(当時、民主党)が提唱した。

アメリカ政府は、拷問や超法規的殺人、強制失踪、レイプといった人権侵害行為を、同法の対象とするとしている。

国連は2016年の報告書でアゾフについて、ウクライナ東部で「民間人の財産を略奪し、避難者を生んでいる」と非難した。

極右とは無関係だと主張

現在のアゾフ連隊の指導部は、隊員らは極右組織や過激派とは無関係だとしている。ただ、この主張は独立した検証がなされていない。

同連隊はウクライナ南部の都市マリウポリを、ロシアの残忍な攻撃から数カ月間、守った。そのことで、多くの人から国民的英雄とみなされている。

ロシアは最終的に2022年5月にマウリポリを占領した。

アゾフ連隊の隊員は現在も多数、捕虜としてロシアに拘束されている。ウクライナ人の捕虜は拷問を受けているとされる。

匿名を条件に取材に応じた米国務省報道官は、「ロシアは偽情報によって、ウクライナ国家警備隊の第12特殊部隊『アゾフ連隊』を、2014年のロシア侵攻を受けてウクライナを守るために結成された民兵組織『アゾフ大隊』と混同させようとしている」とした。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、2014年のウクライナ南部クリミア半島の併合や、ウクライナ東部での親ロシア戦闘員らへの支援、2022年のウクライナ全面侵攻を正当化するために、ウクライナ政府は「ネオナチ政権」だとの虚偽の主張を繰り返してきた。

(英語記事 US lifts weapons ban on Ukraine's Azov brigade)