妊娠中絶の権利、州憲法に明記へ 米オハイオ州住民投票

人工妊娠中絶の権利を支持する人々は、住民投票の結果速報に感極まった表情を見せた

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米オハイオ州で7日、人工妊娠中絶の権利を州憲法に明記する案をめぐって住民投票があり、賛成が過半数となることが確実視されている。中絶の権利擁護派にとって大きな勝利となる。

住民投票では、州憲法を修正する案の賛否が問われた。BBCがアメリカで提携するCBSニュースなどのメディアは、賛成票が圧倒する見通しだと伝えた。

この結果は、中絶の権利をめぐる争いが来年の大統領選挙で勝利につながることを望む、与党・民主党を力づけるとみられる。

中絶をめぐっては、連邦最高裁が昨年、合憲としてきた判断を覆した。以降、米各地で中絶の権利保護の是非が問われており、今回で7件連続で保護が認められることとなった。

オハイオ州の州憲法修正案は、中絶の権利擁護の闘いで、これまでで最も厳しいものとみられてきた。共和党が優勢の州で、中絶の権利を州憲法で明確に保障する案が住民投票にかけられたのは、初めてだった。

修正案の支持者らは、この案が認められなければ、妊娠6週以降の中絶は例外なく禁止とするなど、より厳しい規制法が導入される恐れがあると有権者に警告していた。オハイオ州では現在、妊娠22週まで中絶が合法とされている。

一方、修正案に反対する人々は、現在違法となっている妊娠後期の中絶を認めることになると主張していた。

各メディアが7日夜、修正案は賛成が多数との見通しを伝えると、中絶の権利擁護派らからは喜びの声が上がった。

開票速報を見る集会の場にいたフランク・テデスキさんは、「うちには小さな娘が2人いるが、これは彼女たちの将来と生殖の権利に関わる問題だ」と話した。

修正案への反対を訴えきた団体「プロテクト・ウィミン・オハイオ」は、「私たちの心は今夜、痛みを感じている。投票で負けたからではなく、オハイオ州の家族、女性、子どもたちがこの結果の重荷を負うことになるからだ」とする声明を出した。

期日前投票をしようと列をつくる有権者たち(3日、オハイオ州コロンバス)

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今回の結果は、連邦最高裁が中絶を合憲とした1973年の「ロー対ウェイド」判決を覆してから1年以上たった現在、有権者が中絶についてどう考えているのかを知る手がかりになりうる。

カリフォルニア大学デイヴィス校の法学部教授で、中絶論争に詳しいメアリー・ジーグラー氏は、投票終了前に、「修正案が簡単に通れば、有権者がまだ怒っていることが確認されるだろう」と指摘。「ただ、だからといって中絶が有権者にとって優先的な問題だということにはならない。それは別の問題だ」と述べた。

ジョー・バイデン大統領を筆頭に民主党は、来年の大統領選に向けて、この問題が引き続き有権者を突き動かすことを願っている。

バイデン氏は7日夜、「オハイオ州民と全国の有権者は、極端な中絶禁止を押し付けようとするMAGA(アメリカを再び偉大にしようと訴える)共和党議員の試みを拒否した」とする声明を出した。

同日行われたケンタッキー州とヴァージニア州の選挙も、中絶の権利に影響を及ぼす見込みだ。

ケンタッキー州では、民主党のアンディ・ベシア知事が再選されれば、同州での中絶の権利の維持を求めてきた活動家らにとっての勝利となる。一方、ヴァージニア州で共和党が議会両院を掌握すれば、中絶手術に関して新たな規制を求めることが予想される。

(英語記事 Ohio votes to enshrine abortion rights in constitution)