ラグビー団体、トランスジェンダー選手の女子国際試合出場を一時的に禁止

Rugby league ball on a kicking tee

画像提供, Action Images

国際ラグビーリーグ(IRL)は21日、トランスジェンダーの選手について、女子の国際試合への出場を禁止すると発表した。多様な選手の受け入れに関する調査・研究を進める間の措置だとしている。

IRLは、「世界のスポーツにおける関連した動き」を考慮した結果、「男性から女性になった(トランス女性)選手」を出場禁止にすることを決定したと説明。この措置は、最終的なインクルージョン(包摂)ポリシーについての調査・研究を終えるまでとした。

トランスジェンダー選手のインクルージョンをめぐっては、いくつかのスポーツ組織も検討を進めている。

国際水泳連盟(FINA)は19日、トランスジェンダー選手が男性の思春期を経験している場合、女子のエリートレベルの競技には出場できないとした。

世界陸上競技連盟のセバスチャン・コー会長はBBCに、陸上競技も競泳に続く可能性があると示唆。新たな出場資格について議論する予定だとし、「公正さは譲れない」と述べた。

10月のW杯で適用

IRLの禁止措置は、10月にイングランドで開かれるワールドカップで適用される。同大会には、オーストラリア、ブラジル、カナダ、クック諸島、イングランド、フランス、ニュージーランド、パプアニューギニアのチームが出場する。

IRLは声明で、「ラグビーリーグの長年の原則であり、設立時から中核に据えてきた『個人の参加する権利』と、『他の参加者が感じるリスク』とのバランスを取り、すべての人に公平な審理を保証することがIRLの責務だ」とした。

また、「個人のプレーする権利と、すべての参加者の安全とのバランスを公正に取るための基準の開発を、入手可能な最高の証拠を基に続けていく」と付け加えた。

IRLには19の正会員、16の賛助会員、19のオブザーバー会員が加盟している。

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辞任や批判

今回の決定を受け、スコットランド・ラグビーリーグの障害者・インクルージョン担当ディレクター、マイク・フィン氏は辞任を表明した。

同氏はIRLについて、「私たちが包括的なスポーツにはならないと決めた」とツイート。「憎悪のキャンペーンに屈した」と付け加えた。

トランスジェンダーの権利を擁護する人たちからも、批判の声が上がっている。

オーストラリアでLGBTIQ(性的少数者)の権利擁護に取り組むイクオリティー・オーストラリアのアナ・ブラウン最高経営責任者(CEO)は、「トランスジェンダーの女性が他の女性と競技することを一律に禁止することは、差別を排斥する国際人権理念に違反する危険性がある」と主張。

「(競泳の)FINAはその基準を満たさなかったが、ラグビーリーグの禁止措置も、一時的なものとはいえ、その基準を満たしていない」とした。

トランス選手をめぐる動き

国際オリンピック委員会(IOC)は今年初め、トランスジェンダー選手の参加方針について、各スポーツ組織がその特殊性に応じて決定すべきだと決定した。それを受け、多くのスポーツでここ数カ月、インクルージョンの方針に関する検討が進められている。

ラグビーの国際統括団体ワールドラグビーはすでに、トランスジェンダーの女性がエリートレベルの試合でプレーするのを禁じている。

ワールドラグビーのガイドラインは、トランスジェンダーの女性について、「思春期と青年期にテストステロンによって与えられる体格、威力、パワーを生み出す利点と、その結果生じる選手たちのリスク」を理由に、女子ラグビーでプレーすることはできないとしている。

1990年代後半に女性になったオーストラリア人のキャロライン・レイトさん(56)は、性別を移す前と後の両方でラグビー選手としてプレーした経験を基に、「誰かを傷つけたことは一度もない」と主張。「いったん(女性に)移行してしまえば、他の選手と同じように女性化する。(生まれ持った性別と心の性が一致している)シスジェンダーの女子ラグビー選手に、ダメージを与えることはない」と述べた。

ラピーノ選手らが最近の傾向を批判

トランスジェンダー選手の女性スポーツへの参加に批判的な人々は、それらの選手が生まれつきの生物学的特徴に基づき、優位性を持っている可能性があると主張する。しかし、この主張に対し、多くのトランスジェンダー選手やその支持者が強く反論している。

競泳界の最近の動きは、この論争を燃え上がらせた。トランスジェンダーの権利団体は、国際水連の決定を批判している。

スポーツ界で大きな影響力をもつ米女子サッカーのメガン・ラピーノ選手も、「率直に言って、うんざりする。私たちはすべてを『トランスの人がスポーツで成功することを神が禁じている』ということにしている。現実をしっかり見て、一歩引いてみてほしい」と、米誌タイムに述べた。

(英語記事 Transgender players banned from international game)