故エプスティーン元被告の知人、パリの拘置所で死亡　未成年強姦と性的人身取引で起訴

フランスのモデル斡旋（あっせん）業者で、強姦罪と性的人身取引の罪で起訴されていた76歳男性が19日未明、パリのラ・サンテ拘置所で首をつって死亡しているのが発見された。パリの検察当局がBBCに明らかにした。

死亡したジャン＝リュック・ブルネル被告（76）は、多数の少女に対する性的人身取引罪で起訴された米富豪ジェフリー・エプスティーン元被告と、深いかかわりを持つ仲間だった。エプスティーン元被告は2019年8月、ニューヨークの拘置所で死亡しているのが発見された。

ブルネル被告は1年前から、未成年者を強姦した罪と、未成年者を性的搾取目的で人身売買した罪で勾留され、取り調べを受けていた。被告は無実を主張していた。

被告の弁護団は、被告が自分にかけられた嫌疑に「打ちひしがれていた」と述べ、「マスコミ主導の司法」を批判した。

ブルネル被告は1977年に、フランスのモデル事務所「カリン・モデル」を創設。2005年にはエプスティーン元被告から資金援助を受けて、「MC2モデル・マネージメント」を立ち上げた（同社はすでに売却）。

（編集部注：エプスティーン元被告の姓「Epstein」について、日本語メディアでは「エプスタイン」と表記されることもありますが、BBCでは当人を知る関係者たちの発音に近い「エプスティーン」と表記しています）

エプスティーン元被告の売春組織に少女を提供か

ブルネル被告は2020年12月、パリのシャルル・ド・ゴール空港からセネガル行きのフライトに搭乗しようとしたところを拘束された。

フランスの捜査当局は当時、エプスティーン元被告による性的人身取引と性的暴行に関連し、フランス人の被害者や容疑者について捜査を進めていた。

検察当局は、ブルネル被告が複数の未成年者や成人を、強姦し、性的に暴行し、性的に加害を重ねたと疑っていた。加えて、ブルネル被告がエプスティーン元被告に、少女や若い女性を性的搾取目的で提供していたとして、捜査していた。

エプスティーン元被告は2019年7月6日、フランスから自家用ジェットで帰国した際、ニュージャージー州の空港で逮捕された。未成年少女を性的に搾取する売春ネットワークを運営しているとして起訴されたが、同年8月にニューヨークの拘置所で死亡しているのが発見された。検視官は、首をつって自殺したのが死因だと結論した。

エプスティーン元被告は2008年にも、1999～2007年に何十人もの未成年の少女を性的に暴行した罪に問われたが、司法取引で性的搾取目的の人身取引罪での有罪判決は免れた。その代わり、フロリダ州法に基づき、未成年を売春に勧誘・斡旋したという量刑の比較的軽い罪について有罪を認めた。

ブルネル被告はこのエプスティーン元被告と共に行動することが多く、フランス検察は売春ネットワーク捜査の重要人物と位置づけていた。

ブルネル被告による被害を訴えていた人たちは、その死亡を知り、いらだちをあらわにした。

オランダ人の元モデル、テュシア・ハウスマン氏は、18歳だった1991年にブルネル被告に薬をもられて強姦されたと主張している。ハウスマン氏はBBCに対して、被害を訴える自分たちが被告と法廷で対決する機会が永遠に奪われてしまったと話した。

「2019年9月にブルネルについて訴え出て以来、正義を求めて2年半以上、闘ってきた。それなのに、彼が決して法の裁きを受けないのが残念で仕方がない」とハウスマンさんは話した。

エプスティーン元被告による被害を訴えていた1人、ヴァージニア・ジュフリー氏は、自分もブルネル被告との性行為を強制されたと述べ、彼が死亡したことで「またひとつの章が終わった」と話した。

ジュフリー氏はツイッターで、「最後の裁判で本人と対面してその責任を問いただすことができないのは残念だが、彼の収監を継続するため、昨年直接、法廷で証言できたのはありがたかった」と書いた。

（英語記事　Jean-Luc Brunel: Epstein associate found dead in Paris prison cell）