ミサイルから撮影か 北朝鮮が地球の画像を公開

View of earth, reportedly seen from North Korean missile

画像提供, Reuters

画像説明, 日本と韓国の発表によると、北朝鮮が1月30日に発射した中距離弾道ミサイル「火星12」は高度2000キロに達した。画像はミサイルから撮影したとされる地球

北朝鮮国営の朝鮮中央通信(KCNA)は1月31日、前日に発射した中距離弾道ミサイル(IRBM)「火星12」が宇宙から撮影したとする画像を公開した。朝鮮半島の一部と周辺地域が写っている。

KCNAは同国が1月30日にIRBM「火星12」の発射実験を行ったと伝えた。日本や米領グアムを射程に収めるとされる「火星12」は、北朝鮮が過去5年間に発射した中で最も強力なミサイル。

2017年以来となるIRBMの発射に、国際社会は再び警戒を強めている。

北朝鮮はこの1カ月間だけでミサイルを7回発射している。アメリカや韓国、日本などの国々は度重なる発射を強く非難している。

国連は北朝鮮に対し、弾道ミサイルや核兵器の実験を禁じており、厳しい制裁を科している。しかし北朝鮮はたびたび、この禁止に背いている。

米当局は31日、北朝鮮の核・ミサイル開発が活発化していることから、新たな協議が当然必要になると述べた。

火星12発射実験で何があったのか

日本と韓国はそれぞれ、ミサイル防衛システムで火星12の発射を検知した。ミサイルは高度2000キロに達し、約30分間にわたって距離800キロを飛行した後、日本海に落下したとした。

通常よりも角度をつけて高く飛ばす「ロフテッド軌道」で発射されたとされる。飛行距離はIRBMとしては中程度だったが、全出力で標準的な軌道で発射されれば約4000キロ飛行できる。

KCNAは31日、国防科学院と第2経済委員会などが30日に「火星12」の発射実験を行ったと伝えた。

「周辺国家の安全を考慮して」、離れた場所に落下するよう意図的に「最大高角発射システムで射撃試験を行った」と説明。「正確性と安全性、運用の効率を確認した」とした。

Two pictures of North Korea's missile launch and two of Earth taken from the missile in space

画像提供, Reuters

画像説明, 朝鮮中央通信が公開した画像。上段はミサイル発射時、下段は宇宙から撮影したとされるもの

KCNAは、ミサイルの弾頭に取り付けられたカメラで撮影したとする画像も掲載した。発射の瞬間をとらえたものや、発射されたミサイルを上空から撮影したとみられるものも確認できる。

なぜ火星12を発射したのか

金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記は、3週間前に行われた極超音速ミサイルの発射実験には立ち会ったが、今回は姿はなかった。極超音速ミサイルには、ミサイル探知システムを回避できるよう設計された、より高度なタイプのミサイル技術が用いられている。極超音速ミサイルの発射実験はこれまでに3回しか行われていない。

北朝鮮アナリストのアンキット・パンダ氏は、金氏が立ち会わなかったこと、そして北朝鮮メディアが発射について説明する際に使用した言葉からは、今回の実験が新技術を誇示するよりも、ミサイルシステムが正常に機能することを確認するためだったことがうかがえると指摘した。

パンダ氏は、2017年の発射実験について、「北朝鮮はこれらの発射をより大きな出来事として伝えた(金正恩氏が指揮し、一面で報じた)。『我々には新たなミサイルがある。それが機能することを知っておくべきだ』というのが、その時のメッセージだった」とツイート。

そして、「今や我々にはミサイルがあり、それが機能するという紛れもない事実がある。そのうえで、ミサイルが機能することを確認するため時折実験を行っていく、というのが今回のメッセージだ」とした。

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ただ今回、アメリカのドナルド・トランプ前政権との協議を経て、北朝鮮が核・ミサイル開発を減速させて以降で初めて、大型核弾頭を搭載可能な火星12が発射されたのは事実だ。

火星12が前回発射されたのは2017年。北朝鮮はこの年に6回の発射実験を行い、そのうち2回は北海道上空を通過。日本で全国瞬時警報システム(Jアラート)が発動された。

2018年の米朝首脳会談後、金氏は核兵器や射程距離が最も長い大陸間弾道ミサイル(ICBM)の実験を停止すると発表。しかし翌年には米朝関係の悪化を受け、再開を示唆していた。

今年に入って北朝鮮のミサイル活動が活発化しているのには複数の理由がある。

ミサイルの発射実験は、アメリカに圧力をかけ、長らく停滞している核協議を再開させ、周辺地域および世界の大国に力を誇示したいという金氏の強い願いを反映していると、アナリストたちは指摘する。また、新しい技術や軍事指揮システムを試すという現実的な必要性が理由になっている可能性もあるという。

動画説明, なぜ北朝鮮はミサイル実験を繰り返すのか

2月4日には中国・北京で冬季オリンピックが開幕し、3月には韓国大統領選挙を控える中、タイミングも重要といえる。

米トロイ大学の国際関係学教授で韓国在住のダニエル・ピンクストン氏は、「こうした活動は、韓国と次期大統領を威嚇しようとした北朝鮮の過去の行動と一致する」と指摘した。

ミサイル実験が急増する中、アメリカ主導の制裁や、新型コロナウイルスのパンデミックなどの影響で北朝鮮経済は苦境に陥っている。アメリカは1月12日にも、核・ミサイル開発をめぐり北朝鮮とロシアの関係者らに制裁を科したと発表した。

Graphic showing main longer-range missiles in North Korea
画像説明, 北朝鮮が保有するミサイルの飛行距離。上から中距離弾道ミサイル(IRBM)「ノドン」、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「北極星3」、SLBM「北極星2」、IRBM「ムスダン」、IRBM「火星12」、大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星14」、ICBM「火星15」 出典:米戦略国際問題研究所(CSIS)ミサイル防衛計画
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(英語記事 N Korea releases space photos taken from missile)