ジョンソン英首相、社会的距離ルールは6月21日までの可能性と

Shoppers queuing outside a shop in Manchester on 12 April

画像提供, Getty Images

ボリス・ジョンソン英首相は3日、新型コロナウイルス対策のため屋外で実施されている「1メートル超」の社会的距離ルールについて、イングランドでは6月21日から廃止できる可能性があると述べた。さらに不要不急の海外旅行も5月17日から一部が解禁される可能性もあると話した。

ジョンソン首相は、昨年末からのワクチン接種が順調に進展しており、その成果が「実際の疫学データに本当に表れるようになっている」と説明。行動制限を撤廃できるかもしれないと期待を示した。ただし、対策の変更はいずれも、データに基づくものになると慎重な姿勢も見せている。

最大野党・労働党のサー・キア・スターマー党首も、慎重な対応が必要だと同意した。

イギリスでは、6日に各地で地方議会選や首長選が行われる。そのための応援でイングランド北部ハートリプールを訪れたジョンソン首相は、海外旅行の制限緩和について「できるだけ早く」政府として姿勢を示したいとしつつ、「厳重な対応が必要」だと述べた。

首相は、ワクチン接種の「進展具合からして」、イングランドでマスクなどをしていれば屋外で互いに1メートルまで接近しても良いと定めている「1メートル超」ルールについて、ロックダウン緩和の行程表に沿って「6月21日から廃止できる可能性がかなり高いと思う」と述べた。

また、屋内の接客業や娯楽イベント、海外旅行などの制限もロックダウン行程表に沿って5月17日から緩和できそうだと話した。

「データ次第なので、まだ断定はできない。進捗(しんちょく)とあわせて疫学データを見なくてはならないし、病気がどういう状態になるのかも見なくてはならない。しかし、今はそういう感じがしている」と首相は述べた。

海外旅行については、どの国が安全か専門家たちが判断している段階だと首相は説明した。「5月17日に一部を解禁したいが、よそから一気に病気がやってくるような事態を、この国の人たちは望んでいないと思う」と首相は述べ、慎重に判断すると強調した。

<関連記事>

ジョンソン氏によると、人口約6700万人のイギリスでは、これまでに新型コロナウイルスワクチンの接種が5000万回実施された。最新の政府統計によると、1回目の接種を受けた人は3400万人、2回とも終えた人は1500万人以上になる。

イングランドのロックダウン緩和は、5月17日に次の段階に入る予定。海外旅行が一部解禁される可能性に加え、屋外では最大30人が集まれるようになり、屋内では2つの世帯から最大6人が集まれるようになる。

イングランド以外では

スコットランドでは自治政府のロックダウン緩和計画に従い、行動制限が最低レベルに緩和される6月末以降も、物理的距離の維持は続く見通し。

ウェールズでは現在「警戒レベル3」の行動制限が義務付けられており、これが最も低い「警戒レベル1」になっても、同一世帯ではない人との社会的距離の維持が求められる。

北アイルランド自治政府は、「お互いを守るための個人的な責任」としての社会的距離の維持は「当面」要求されるとの見通しを示している。

飲食業界は歓迎

英ビール・パブ協会は、ジョンソン首相の発言は飲食業界が「平常に戻り、生きながらえるための希望」を与えるものだと歓迎。エマ・マクラーキン代表は、「現在の規制ではパブは経営が成り立たないので、6月21日からなんの規制もなく営業が再開できるようになるかどうかは死活問題」だと話した。

ジョンソン首相の発言に先立ち、接客業界の代表団体「UKホスピタリティー」のケイト・ニコルズ代表は、制限なしの営業を6月21日に再開することは「不可欠」で、それで初めて各社は「生命維持装置を外せる」ようになると話していた。

海外旅行には慎重論も

ジョンソン首相の発言に先立ち、下院議員の一部は5月半ば以降もイングランドの渡航制限を維持するよう呼びかけていた。

余暇としての海外旅行は現在禁止されているが、渡航先の国を感染状況によって「緑、黄、赤」に色分けする仕組みが近く発表される。居場所の追跡や帰国前のウイルス検査、帰国後の隔離などの要件が、国の色分けによって変わる予定で、ジョンソン政権は「5月初め」までに発表するとしている。

旅行業界は、夏休みの海外旅行需要に期待している。スペイン、フランス、ギリシャ、ポルトガル、キプロスなどは海外旅行の受け入れを計画しており、欧州委員会も3日、欧州連合(EU)域外からの不要不急の渡航について、制限を緩和する方針を示した。

スコットランドとウェールズの自治政府首相はそれぞれ、5月17日の海外旅行解禁は早すぎると発言している。

スコットランドの旅行業界代表は、海外旅行の扱いについては、各地域が独自で動くのではなく、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドが同じ計画に沿って行動する必要があると、慎重を促している。

(英語記事 Covid: 1m plus rule could end from 21 June, says Johnson)