外出禁止のイギリス、通勤電車はなお混雑 新型コロナウイルス

Busy Underground train

画像提供, PA Media

画像説明, 封鎖措置発表後も混雑するロンドンの地下鉄

イギリスで、新型コロナウイルス対策による外出禁止が始まった。ボリス・ジョンソン首相は23日夜、必需品の買い物や治療、絶対的に不可欠な仕事への通勤などごく一部の理由によるものを除く外出が禁止されており、警察は違反者を取り締まることができる。

しかし24日朝、ロンドン地下鉄は通勤者で混雑していた。利用客の中には、運行制限のせいでいつもより混んでいると訴える人もいた。

ロンドンのサディク・カーン市長は、市民に家にとどまるよう要請。公共交通機関は医療従事者や警官、教師など「キーワーカー」だけが使うべきで、禁止令を守らなければ「人が死ぬ」と警告している。

ケン・マッカーサーさんはツイッターで、「国民保健サービス(NHS)の職員が通勤しようとしているのに、ロンドンの地下鉄駅はまだ混んでいる。駅で身分証をチェックすべきだ。これが今朝のセントラル・ラインの様子」と書いた。

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一方で、会社に出勤するように言われているため、外出せざるを得ない状況もあるという。

スポーツ用品大手スポーツ・ダイレクトはこれまで通常営業すると発表していたが、24日から休業すると方針を変更した。

また、建設業界なども外出禁止が自分たちに適用されるのか不透明だとしている。

建設業協会のグレアム・ワッツ会長はツイッターで、「建設現場での対応について、当局は透明性を確保してほしい」と述べた。

最大野党・労働党のジェレミー・コービン党首は、政府はどの職場が休業の対象か明確にするべきだと指摘。外出禁止令の中、出勤しなくてはならないという懸念を労働者に与えてしまうと述べた。

別居している親に会いに行くのは「あり」

マイケル・ゴーヴ内閣府担当閣外相はBBCのラジオ番組に出演し、政府の方針について以下のように補足した。

  • リシ・スーナク財務相は間もなく、個人事業主への支援の概要を発表する
  • おもちゃや衣服といった「日用品」ではないものの配達は継続してよい
  • 「可能な限り」在宅勤務が望ましいが、たとえば緊急時に配管工を呼ぶといった場合は例外になると話した
  • 政府は「感染者の増加率」を軽減したい考えで、向こう3週間で科学的な助言を受けながら方針の変更の是非を検討する
  • 両親が別居している18歳以下の子供が親に会いに行くのは「あり」

別居中の親との面会については、政府の方針と反するのではないかとの指摘が出ている。これに対してゴーヴ氏はツイッターで、この条件なら外出は「許可されるものだし、ガイダンスにもそう明記されている」と反論した。

妊娠中の医療従事者は?

妊娠中の医療従事者のグループは24日、新型ウイルス流行時の労働条件が不透明だとして、マット・ハンコック保健相に書簡を提出した。

政府が先週発表した対策では、妊娠中の女性は他者との接触を避け、家にとどまるよう指示されている。書簡では、この条件では妊娠中の医療従事者は仕事が続けられなくなってしまうと指摘。医療は「必要な仕事」と位置づけられているため、自分たちが感染リスクにさらされながら仕事に従事していると訴えた。

「医療現場では他者と距離を置くという対策を取ることは不可能で、妊娠中の医療従事者に不当なリスクを負わせている」

これに対しイギリスの王立産婦人科医協会は、妊娠中のNHS職員についてガイドラインを発表。妊娠28週以前で基礎疾患がない場合、必要な予防措置を取り、他者との距離を置きながら患者と対面する職務を続けても良いとした。それが不可能な場合は、防護用品を着用した上で徹底的なリスク評価をするべきだとしている。

しかしこの指標は、政府の発表した妊娠中の女性へのガイダンスと矛盾しているとの指摘がある。

その他のイギリスでの動きは以下の通り――。

  • 格安航空ライアン・エアーは、24日以降ほとんどの便を欠航とする予定。4月と5月にも運航予定はないという
  • 英化学大手イネオスは、10日間で除菌グッズ工場を建設すると発表。1カ月1万本の除菌ジェルを製造するとしている
  • 下院では23日夜、ウイルス対策の緊急法案が可決された。法案は今後、上院で審議される
  • スーパーのウェイトローズは、一度に入店できる顧客の数を制限すると発表した
  • 自動車メーカーは、政府によるマスクや呼吸器の製造支援要請に応じている
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<解説>警察はどうやって新方針を強制するのか ――ダニー・ショウ、国内問題担当編集委員

ジョンソン首相が発表した新型ウイルス対策は、平時での制限としては最も厳しいものとなった。

しかし、実際にどうやって対策を徹底するのかについては、不透明な点が多い。

最初のハードルは、この対策の法制化だ。ジョンソン首相は、外出や集会はただちに禁止されると言ったものの、警察にはまだ、それを強制する権限がなく、公式なガイダンスも受け取っていない。

もし今週中に法整備が行われたとしても、実務上の難しさが次の課題になる。社会の規範を守り、混乱を避けながら集まった人たちを解散させたり、誰が外出すべきでない人なのかを正確に判定たりするのは難しい。

違反者を説得できなかった場合、警察は罰金を科すことができるようになる。最終的には起訴ということになるだろう。

しかし、警察の資源に限りがあり、自主隔離などで警官の数も減っている中、当局は人々が警察の介入なしに方針を守ってくれることを望んでいる。