ミャンマーのティン・チョー大統領が辞任

アウンサンスーチー氏は大統領への選出を禁止されていたが、事実上のミャンマー大統領として活動してきた

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画像説明, アウンサンスーチー氏は大統領への選出を禁止されていたが、事実上のミャンマー大統領として活動してきた

ミャンマーのティン・チョー大統領が21日、辞任した。ミャンマー大統領府が発表した。

理由は明らかになっていないが、公的な場で痩せた姿を見せていたことから、ここ数カ月は71歳のティン・チョー氏に対する健康上の懸念が高まっていた。

ティン・チョー氏は歴史的な総選挙を経て2016年、大統領に就任した。この就任で何十年にもおよぶ軍事政権が終了した。

ただ、テイン・チョー氏は実際には儀礼上の大統領に過ぎず、長年野党を率いてきたアウンサンスーチー氏が事実上の大統領として活動した。

ミャンマー大統領府のフェイスブックページに掲載された声明によると、テイン・チョー氏は「休みを取る」ことを望んでいるという。

声明は、元ミャンマー軍高官のミン・スエ副大統領が、7日以内に新しい大統領が選出されるまで大統領代行を務めることも明らかにした。

軍事政権により長年軟禁されてきたアウンサンスーチー氏は、大統領の職に就くことも禁じられている。

アウンサンスーチー氏を要職につかせないため故意に設計されたと広く信じられている憲法の条文は、ミャンマー以外の国籍を持つ子供がいる人は大統領になれないと定めている。

同氏はイギリス人の夫との間に2人の子供がいる。

ティン・チョー氏はアウンサンスーチー氏の幼少期からの友人で、長年の相談相手であり、時には運転手でもあった。物静かで信頼の置ける人物として知られており、アウンサンスーチー氏が全面的な信頼を置く一人でもあった。

ラカイン州の危機的状況をめぐる批判

アウンサンスーチー氏が率いる国民民主連盟(NLD)は、2015年11月に行われた総選挙で圧倒的な勝利を収めた。

しかし政権は、実権を握って以降、いくつかの批判を受けてきた。その最たるものが、ミャンマー西部ラカイン州の危機的状況だ。

警察施設への襲撃をきっかけに激化した治安部隊による取り締りで、居住地域を失った70万人近い少数派イスラム教徒ロヒンギャが避難生活を続けている。

ミャンマー政府は、取り締まりは武装勢力を対象にしたものだと主張しているものの、取り締まり作戦の規模は、集団虐殺とも呼べるものに達しているとの非難を呼び起こしている。

このことはアウンサンスーチー氏の国際的な名声を急落させてもおり、かつて世界中にいた協力者から同氏が急速に孤立する事態になっている。

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<解説>大統領の地位をめぐる次なる選択――ジョナサン・ヘッド、BBC東南アジア特派員

アウンサンスーチー氏が2015年の選挙で圧勝し、残った最大の問題は、同氏がいかにして自身が大統領になるための憲法上の障壁を乗り越えるかということだった。

同氏が「大統領の上に立つ」とし、あらゆる影響力を行使すると選挙直後に約束したことは、軍部をいらだたせた。

大統領にティン・チョー氏を選ぶという同氏の選択は、憲法下で広範囲に行政権を与えられてきた大統領という職が、儀礼的なものになるという予測を裏付けるものだった。

アウンサンスーチー氏は次に、実質的な権力を発揮する手段として、軍部の反対を押し切って、自身のために国家顧問の職と国家顧問省を新設した。また同氏は外相の職も得た。

しかし、西部ラカイン州で軍の作戦により起きた危機的状況は、1人の女性に過度に依存する弊害を露呈させた。

アウンサンスーチー氏は、和平プロセスから経済再建まで、ミャンマーが直面するすべての問題に自身の関与と承認が必要とされる上に、ロヒンギャの扱いに対する国際的な批判に対応する必要性に、途方に暮れているようにみえる。

ティン・チョー氏の後継者の選択はアウンサンスーチー氏にとって、従順すぎず同氏が抱え込んだ責任を委譲できる存在を大統領の地位に充てるチャンスだ。

しかし、アウンサンスーチー氏のNLDでの長年に及ぶゆるぎない権勢は、同氏がおそらく再び自分に忠実な人物を新たな大統領に選ぶだろうことを示唆している。

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(英語記事 Myanmar president Htin Kyaw resigns)