トランプ米大統領、対ロ制裁強化法案に署名 問題あると指摘も

先月のG20で初会談したプーチン露大統領(写真左)とトランプ米大統領(同右)

画像提供, Reuters

画像説明, 先月のG20で初会談したプーチン露大統領(写真左)とトランプ米大統領(同右)

ドナルド・トランプ大統領は2日、ロシアが昨年の米大統領選に介入したとの疑惑にもとづく対ロシア制裁強化法案に署名した。

イランと北朝鮮への制裁も含む法案への署名は非公開で行われた。トランプ大統領は、対ロシア制裁を緩める大統領の権限に法案が「手錠」をかけたとして、立法府の行き過ぎだと批判した。

一方、ロシアのドミトリー・メドベージェフ首相は、制裁が「新たな米政権」との関係改善への「希望をつぶした」とし、米国がロシアに「全面的な貿易戦争」を宣言したに等しいと述べた。

イランの準国営イラン学生通信(ISNA)によると、イラン政府は制裁が2015年の核合意に違反しているとして、「適切かつ同等」の対抗措置を取ると表明した。

ロシア政府は米大統領選への介入を否定している。トランプ大統領は、陣営関係者がロシアと結託した事実はないとしている。

ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は制裁が署名されて間もなく、「これはニュースではない」と語った。「要は、法案は可決され、大統領の署名があろうがなかろうが自動的に成立することになっていた」。

ロシアはすでに先週、米大使館と領事館の外交官ら755人を国外退去処分にする報復措置を発表している。

ドイツを含む欧州各国の一部は、制裁がもたらす経済的な影響に強い懸念を示している。ジャンクロード・ユンケル欧州委員長は「欧州のエネルギー安全保障の利害に意図されない一方的な影響」が及ぶ可能性を警告した。

トランプ大統領は、今回の「経済制裁を通じた米国の敵対者への対抗措置」法案に署名する際、声明を追加し、法案には「深刻な問題がある」と述べた。

トランプ大統領は、法案を圧倒的多数で可決した議会が憲法上の権限を逸脱したと非難。「大統領として、議会よりもずっと良い取引を外国とすることができる」と述べた。

法案には、ロシアが2014年にウクライナのクリミア半島を併合したことへの追加制裁も含まれる。バラク・オバマ前大統領は昨年12月に、ロシアが大統領選に介入したとして35人のロシア外交官の国外退去処分を実施している。

共和党のリンジー・グレアム上院議員は法案を称賛し、大統領が拒否権を行使した場合でも議会で再可決されるのに十分な賛成が得られているため、選択肢は限られていたと指摘した。

グレアム議員はCNNテレビに対し、「(ウラジーミル・)プーチン大統領は米国の誰もできなかったことを成し遂げた。議会を団結させたのだから」と語った。

ロシア上院の大物議員コンスタンティン・コサチェフ氏は、議会に対抗しなかったことでトランプ大統領は「降伏した」と述べた。

トランプ大統領とプーチン大統領は先月ドイツ・ハンブルクで開かれた主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)で、初めて顔を合わせた。

昨年の米大統領選でロシアがトランプ陣営を勝たすために介入したとの米情報機関による主張をめぐっては、議会が調査を行っているほか、ロバート・ムラー特別検察官による捜査も進められている。

(英語記事 Trump approves new 'flawed' Russia sanctions)