フランスのビーチで「ブルキニ」禁止 写真で論争

仏ニースの砂浜で「ブルキニ」を着ていた女性を警察が取り締まった。ニースでは7月にイスラム過激派の攻撃で80人以上が死亡している。

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画像説明, 仏ニースの砂浜で「ブルキニ」を着ていた女性を警察が取り締まった。ニースでは7月にイスラム過激派の攻撃で80人以上が死亡している。

フランスの20以上の自治体が、イスラム教徒の女性用水着「ブルキニ」の着用を禁止するなか、南仏ニースの海岸で警官たちがブルキニを着ていた女性に腕や頭の覆いを外させたように見える写真が議論となっている。

写真は23日に撮影されたもので、7月14日に海沿いのプロムナード・デザングレで多数の死傷者を出した事件現場の近く。警官たちは女性に罰金の支払いを命じているようにも見える。

警察が女性に、頭や腕の覆いを外すよう命じたのか、女性が自主的に外したのかは不明だ。34歳の「シアム」とだけ名乗った34歳の母親は、AFP通信に対して、レギンズとチュニックを着て、頭をスカーフで覆って砂浜に座っていたと言い、「泳ぐつもりはまったくなかった」と話した。

ニースのサル副市長は、7月の事件があった以上、ブルキニ禁止措置は「必要だ」と述べ、「ビーチでこのような服を着る習慣や風習は、ニースのムスリム(イスラム教徒)にない」と指摘した。

一方で仏ムスリム評議会(CFCM)のアヌアル・クビベック会長は、「世間の議論の動きが心配だ」と述べ、「フランスのムスリムへの誹謗中傷の恐怖が高まっている」と懸念を示した。

カザヌーブ内相は、CFCMと事態を話し合う用意があると表明している。

写真についてツイッターでは様々な意見が投稿されている。人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」の欧州メディア部長、アンドリュー・ストレーライン氏は、「本日の質問。公衆の面前で女性に無理やり服を脱がせるのに、警官は何人必要か」とツイートした。

「ブルキニ」とは、イスラム教徒の女性が顔を隠す装束を意味する「ブルカ」と、「ビキニ」を組み合わせた造語。商標でもあるが、今では全身を覆うイスラム女性用の水着全般を指す。

フランスの海辺でブルキニを着る女性の資料写真

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画像説明, フランスでは20以上の自治体が、公共の場でのブルキニ着用を禁止した。写真はフランスの海辺でブルキニを着る女性の資料写真

フランスでは今年7月にカンヌ市が、海水浴場でのブルキニ着用を禁止。それ以降、合計20の自治体が、公共の場でのブルキニ着用を禁止している。フランスは2010年に欧州で初めて、イスラム女性の顔をすべて隠す「ブルカ」と、顔を部分的に隠す「ニカブ」の公共の場での着用禁止を決定し、2011年春から禁止措置を実施した。

ブルキニ禁止条例の取り消しを求める訴えが、行政裁判所にあたる仏国務院に提訴されており、25日にも審理が始まる予定。

ムスリム人権団体「反イスラモフォビア共同体」は、南仏リビエラ地方では2週間の間に16人の女性が罰金を科せられたものの、誰もブルキニを着ていたわけではないと主張。団体によると女性たちは、スカーフとシャツとレギンズを着ていたのだという。

BBCのパリ特派員ヒュー・スコフィールド記者は、いわゆるブルキニ禁止条例は、実際にはブルキニに言及していないと指摘する。

各地の条例は単に、公共の場で着用する水着は、公序良俗と政教分離の原則を尊重しなくてはならないというもので、それゆえに様々な解釈や混乱の原因となると特派員は言う。

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カンヌ市長の決定

・公序良俗と世俗主義を尊重しない不適切な服装を着用したいかなる人も、海水浴場の使用は認められない。水泳も認められない。

・フランスおよび様々な信仰の場がテロ攻撃の標的となっている現在、宗教的帰属をあからさまに表現する水着は、公共の秩序を乱す危険があり得る。

・違反行為には罰金38ユーロ(約4300円)を科す。

・この禁止措置は2016年8月31日まで施行する。

(英語記事 France 'burkini ban': Images of police on beach fuel debate)