山田史比古
ところどころ、傷みがみえる2階建ての木造住宅。敷地には、「売家」と大きく書いた不動産会社の看板が立っていた。
拡大する実家。11月半ば、大きく「売家」と記した不動産会社の看板がたててあった=2024年11月16日、山形市、山田史比古撮影
11月半ば。目の前に広がる田んぼの向こうに、錦に染まった晩秋の山並みが迫る。
ここで生まれ育った小山新一さん(74)は、10月末、実家じまいと墓じまいを終えた。
「やるべきことを終え、達成感もありましたが、さみしさの方が強いですね。これで、ふるさととの縁が切れたんだなあ、って」
福島市内の自宅で、新一さんはそう話した。
実家は山形市の中心部から西に約3キロ。農地と住宅地が混在する地区にある。近年、東北中央道が開通し、福島市の自宅から1時間20分ほどで行けるようになった。
でも、行く機会は大きく減るだろうと思う。
きっかけは、実家で暮らしていた2歳下の弟が、2023年5月に亡くなったことだ。
母ははやくに亡くなり、結婚し…