南米ベネズエラで、経済的な混乱と格差の拡大が続いている。独裁的なマドゥロ政権によってもたらされたインフレの最悪期は脱したとはいえ、2023年も物価上昇率は前年比数百%に上る見通しだ。国外に逃れる国民は700万人を超えた。24年には大統領選が予定されているが、政権は野党の有力候補を締め出している。

「5%は華やか、95%は庶民や貧民」

 首都カラカスから車で15分ほど離れたサンベルナルディノ地区を、8月上旬に朝日新聞助手が歩いた。数十年前までは中流層が多く住んでいたが、現在は貧困層が集まり、狭く古い家が目につく。

 「何もかもが値上がりしていて、生活が苦しい。子どもたちからの資金援助がないと生きていけない」

 そう話すのは、ルイサ・アレナスさん(63)。ベネズエラ中央大で教育学を教える教授だが、月給は米ドル換算で40ドル(約6千円)ほど。この数年のインフレで買える商品が減り、スーパーに行っても、肉は高くて買うことができない。常に息子や娘から資金援助を受けている。以前は友人と喫茶店で語らうのが楽しみだったが、今は外食を一切控えている。

 「ベネズエラには二つの世界がある。5%の華やかな世界と、95%の庶民や貧民が住む世界だ。この国は破綻(はたん)している」

 一方、カラカス東部には、電飾をふんだんに使ったショッピングモールやフェラーリの旗艦店など、高級商業施設が立ち並ぶ。電器店ではテレビが11万ドル(約1600万円)で売られていた。価格表示は敵対しているはずの米国の「ドル」だ。過去のハイパーインフレで自国通貨への信用が崩壊したこの国では、様々な経済取引が米ドルを介して進められている。

 東部地区には、世界的に有名な米資本の「ハードロックカフェ」もある。メニューにはリブ肉のステーキ(56・5ドル)、肉料理のファヒータ(23ドル)、チョコ菓子のブラウニー(15ドル)などが並ぶ。国民の9割が貧困にあえぐベネズエラの最低賃金は月給約6ドル。「ブラウニー」はこの水準の月給2・5カ月分だ。

 マネジャーのロナウドさん(2…

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