ジャニーズ事務所の創業者、ジャニー喜多川氏(2019年に死去)による所属タレントへの性暴力疑惑。いち早く追及したのは、1999~2000年に掲載された週刊文春のキャンペーン報道だった。

 それから二十数年。取材班の一員だったジャーナリストの中村竜太郎さんは「見て見ぬふりをし続ける日本のメディア」を批判してきた。「23年間、私は絶望したままです」と最近発言したことでも話題になっている。メディアの責任と課題とは何か。中村さんに聞いた。

 ――故ジャニー喜多川氏による性的虐待疑惑を追及した週刊文春のキャンペーン報道で、取材班の一員だったのですね。

 「週刊文春の専属記者として取材しました。アイドルスターを目指す少年たちがジャニー喜多川氏から性的虐待を受けている、と私たちは報じました。少年から大人まで、たくさんの関係者たちを対象に長時間にわたる取材を重ねて、多くの具体的証言を得た結果です」

 「被害者の多くは、喜多川氏に嫌われたら、デビューできなくなったりステージでの立ち位置が悪くなったりしてしまうと恐れていました。拒むと仕事上の不利益を受ける環境下で強いられたことであり、単なる性的虐待ではなく、パワハラやセクハラの要素が含まれていたのです」

 ――取材で印象に残っているシーンを教えてください。

 「私には、たまたま、以前にジャニーズ事務所に所属していたことのある友人が複数いました。そのうちの1人は、10代前半でジャニー喜多川氏に直接スカウトされた人でした。もちろん問題の性格上、気軽に『昔ジャニーズにいたよね。性的虐待は受けなかったの?』などと聞けるものではありません。私たちがキャンペーン報道を始めたあと、日頃の雑談の中で友人の方から『文春が始めたんだね』と言ってきてくれたことを機に、取材することができました」

ジャニーズ事務所での性暴力疑惑に対し、「大手新聞は問題を矮小化していた」と中村竜太郎さんは指摘します。報道できなかった背景、メディアの責任について、このあと中村さんが語ります。

元ジャニーズの友人、突然流した涙

 「彼が『竜ちゃんだから話すけ…

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