演説に起立して拍手を送る自民党議員たちに満足げに応じる一方、自らへの批判には敵意を隠そうとしなかった安倍首相。政権後半期には野党議員にたびたびヤジを飛ばし、問題視される。
2016年秋の臨時国会は異例の幕開けとなった。
首相、安倍晋三の所信表明演説の途中、自民党の若手議員たちが一斉に立ちあがって拍手を始めたのだ。
「今この瞬間も海上保安庁、警察、自衛隊の諸君が任務に当たっている。今、この場所から、心からの敬意を表そうではありませんか」。安倍の呼びかけに合わせたスタンディングオベーション。安倍も壇上から拍手を送った。この間、約10秒。議長の大島理森の注意がこだました。「ご着席下さい。ご着席を」
直後の党役員会。党首の下に一致団結した所属議員の姿に副総裁の高村正彦は「自分の経験上も初めて」と興奮を隠しきれなかった。しかし、拍手は自然発生ではなかった。官房副長官の萩生田光一が党の国会対策委員会幹部に「海保や自衛隊を取りあげるから、温かみを持って演説をもり立ててほしい」と事前に依頼。国対のメンバーが、演説の途中、本会議場の前に陣取る若手議員に演説文の具体的なくだりを指さしながら「ここで立って拍手してほしい」と伝えていた。
演出された身内による拍手に満足そうな表情で応じた安倍だが、自らへの批判には敵意をあらわにした。
4日後の衆院予算委員会。「総…