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「猪養部」を深掘りリサーチ!「猪」と「豚」の呼び名の歴史についてもまとめレポート

今回の「生き物にまつわる言葉を深掘り」のテーマは、「猪養部(いかいべ、いのかいべ)」です。

古代日本で"「猪」を扱った氏族"である「猪養部(いかいべ、いのかいべ)」について深掘りリサーチしたところ、「猪」と「豚」の呼び名の歴史にまでたどり着きました。

その結果を以下の目次に沿ってまとめでレポートとしました。

 

猪養部について

それでは、猪養部(いかいべ、いのかいべ)について、解説していきます。

古代日本における部民(べみん)制については以下の過去記事に詳しいので参考になさってください。

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猪養部の時代と役割

猪養部は、古代日本において猪の飼育を主な仕事とした部民(べみん)の一種です。

部民とは、特定の仕事や役務を世襲的に担う集団を指し、古代社会の生産活動において重要な役割を果たしていました。

猪養部が最も活発に活動していたのは、古墳時代から奈良時代にかけてと考えられています。この時代、猪は食料だけでなく、毛皮や牙などの副産物も利用されており、その需要は高かったと考えられます。

猪養部は、こうした需要に応えるため、猪の飼育技術を確立し、安定的に猪を供給する役割を担っていたのです。

飼育対象の動物種

猪養部が飼育していたのは、主にイノシシを家畜化した豚です。

いや正確には、猪養部が飼育していたのは、「野生に近いイノシシから、徐々に家畜化が進んだ過程にある動物」といえましょう。

イノシシは本来、野生動物ですが、人間によって飼育され、家畜化される過程で、より人間に適応した品種へと変化していきました。そのあたりの詳細は後述します。

猪養部の職務内容

猪養部の具体的な職務内容としては、以下のことが考えられます。

  • 猪の飼育: 猪舎の建設や清掃、餌やり、繁殖管理など、猪の飼育に関する全ての作業を担当していたと考えられます。
  • 猪肉の加工: 屠殺、解体、保存など、猪肉を食料として利用するための加工も行っていた可能性があります。
  • 毛皮や牙の加工: 猪の毛皮は衣服や装飾品に、牙は道具や装飾品に利用されました。猪養部は、これらの副産物の加工も担当していたと考えられます。

猪養部の社会的地位

猪養部は、当時の社会において、特別な地位を有していたわけではありません。

しかし、食料の安定供給という点において、重要な役割を果たしていたことは間違いありません。

また、猪の飼育技術は、当時の農業技術の発展にも貢献したと考えられています。

猪養部のその後

ヤマト王権時代において、猪養部は重要な役割を果たしていたとされますが、その後の歴史的な記録は少なく、具体的な状況や関連性については不明確な部分が多いです。

部民制自体が徐々に変化し、中世以降には異なる社会構造へと移行していったため、猪養部もその中で次第に姿を消していったものと推測されます。

平安時代におけるブタの飼育については、部民制が衰退した後も続いていたと言われています。以下にその背景と状況をまとめます。

平安時代のブタの飼育

  • 農業の発展: 平安時代は農業が発展し、食料供給が安定してきたため、ブタの飼育が一般的になりました。
  • 食文化の変化: ブタ肉は食文化の中で重要な位置を占め、特に祭りや特別な行事での食材として重宝されました。
  • 地方の飼育: 猪養部がなくなった後も、地方の農村ではブタが飼育され続け、地域ごとの伝統や飼育方法が形成されました。

平安時代において、猪養部の制度がなくなった後でも、日本全体でブタの飼育は続き、むしろその重要性は増していったと言えます。

食文化の発展や農業の変化が、ブタの飼育を促進した要因とされています。

 

猪の飼育とイノシシの家畜化

猪養部による「猪の飼育」と「イノシシを家畜化した豚の飼育」という表現には、一見矛盾があるように思えます。

しかし、この矛盾は、歴史的な文脈と日本語における言葉の変遷を考慮することで解消されます。

  • 古代における「猪」と「豚」: 古代日本においては、「猪」と「豚」という言葉が厳密に区別されて使われていたわけではありません。
    一般的に、イノシシも家畜化した豚も「猪」と呼称されていたと考えられます。
    これは、現代の生物学的な分類とは異なる、当時の人の認識に基づいた呼び方です。
  • イノシシの家畜化: 日本におけるイノシシの家畜化は、弥生時代以降、大陸から渡来した技術とともに進んだと考えられています。
    しかし、完全な家畜化には時間がかかり、野生の特徴を残したまま飼育されていた個体も多かったと考えられます。
  • 猪養部が飼育していた動物: 猪養部が飼育していたのは、上述のように、厳密に言えば「イノシシを家畜化した豚」ですが、当時の言葉で「猪」と呼ばれていた動物です。

つまり、野生に近いイノシシから、徐々に家畜化が進んだ過程にある動物を飼育していたと考えることができます。

 

「豚」の語源と、日本における初期の「豚」の表現と定義、及び字源について

「豚」という言葉は、古くから私たちの生活に深く根付いており、その語源や意味は、長い歴史の中で変化を遂げてきました。

字源と初期の定義

漢字「豚」の起源:

甲骨文字の段階から、「豚」はイノシシ科の動物、特に家畜化されたイノシシを指す言葉として用いられていました。

「豚」の字形は、イノシシの鼻や体形を象形化したとする説や、鳴き声に由来する説など、様々な説が存在しますが、定説はまだありません。

初期の定義:

古代において、「豚」は必ずしも現代のような明確な定義を持っていたわけではありません。
家畜化されたイノシシだけでなく、野生に近い個体も「豚」と呼ばれていた可能性があります。
地域や時代によって、その意味合いは多少異なっていたと考えられます。

日本における「豚」の表現と定義

古代の日本:

古代日本においても、「豚」は中国から伝来した言葉として用いられ、イノシシ科の動物を指していました。

『日本書紀』などに見られるように、古代の日本人は、豚を食用として利用していたことがわかります。

中世以降:

中世以降、豚はより明確に家畜化されたイノシシを指す言葉として定着していきました。
養豚技術の発達とともに、豚の品種も多様化し、食文化にも大きな影響を与えました。

「豚」の語源に関する諸説

  • 鳴き声説: イノシシの鳴き声である「ブーブー」が語源となったとする説。
  • 体形説: 丸々とした体形から「太い」を意味する言葉が転じたとする説。
  • 他の動物との関連説: 他の動物の言葉との関連で、「豚」という字が作られたとする説。

「豚」という言葉は、長い歴史の中で、その意味や範囲が少しずつ変化してきました。しかし、基本的にはイノシシ科の動物、特に家畜化されたイノシシを指す言葉として用いられてきました。

現代の「豚」:

現代では、生物学的な分類に基づき、「豚」はイノシシ(Sus scrofa)を家畜化した動物を指す言葉として明確に定義されています。

「猪」と「豚」の使い分け

  • 野生と家畜: 一般的に、「猪」は野生、あるいは半野生化したイノシシを指し、「豚」は完全に家畜化されたイノシシを指すことが多いです。
  • 地域差: 地域によっては、「猪」と「豚」の使い分けが異なっていたり、同じ言葉で異なる動物を指していたりする場合もあります。
  • 時代による変化: 時代とともに、言葉の意味は変化していくため、古代の文献を読む際には、文脈によって「猪」と「豚」の意味合いが異なることに注意が必要です。

「猪」と「豚」は、どちらもイノシシ科の動物を指す言葉ですが、その意味合いは時代や地域、文脈によって変化してきました。

  • 「猪」: 野生のイノシシを指すことが多い。
  • 「豚」: 家畜化されたイノシシを指すことが多い。

しかし、これらの言葉の使い分けは、必ずしも厳密ではなく、例外も存在します。

 

猪養部が扱っていた「家畜化が進行したイノシシ=ブタ」には、イノシシのように牙があったのか?

結論から言うと、家畜化の段階によって牙の有無は異なり、一概にどちらかとは言えません。

家畜化による変化

イノシシが家畜化される過程で、人間の意図的な選別や飼育環境の影響により、様々な身体的な変化が起こりました。その一つが牙の退化です。

  • 牙の役割: イノシシの牙は、主に食物を掘り返したり、他の動物と争ったりするためのものです。
  • 家畜化による環境の変化: 家畜化されたブタは、人間によって用意された餌を食べ、安全な環境で生活するため、牙を使って戦う必要性が減りました。
  • 人為的な選別: 人々は、穏やかで扱いやすい個体、つまり牙が小さい個体を選んで繁殖させる傾向がありました。

牙の有無の多様性

上記のような理由から、家畜化が進むにつれて、ブタの牙は次第に小さくなったり、退化したりする傾向が見られました。

しかし、家畜化の段階や品種によって、牙の大きさや形状は大きく異なりました。

  • 初期のブタ: 家畜化が始まったばかりの頃は、野生に近いイノシシの特徴を多く残しており、牙も比較的大きかったと考えられます。
  • 現代のブタ: 多くの品種では、牙が非常に小さくなったり、全く生えてこなかったりします。しかし、一部の品種では、まだ比較的大きな牙が残っているものもいます。
  • ブタにも犬歯は存在しますが、野生種であるイノシシの牙のように大きく発達することはありません。

猪養部が扱っていたブタの牙

猪養部が扱っていたブタにイノシシにような牙があったか否については、品種によって異なっていたと考えられます。

  • 品種: 猪養部が扱っていた品種によっては、牙が大きかったものもいたでしょう。
  • 目的: 肉用、毛皮用など、ブタの用途によっても、牙の有無が重視される度合いは異なっていたと考えられます。

家畜化されたイノシシ=ブタの牙の有無は、一概にイエスかノーと答えることはできません。家畜化の段階や品種、そして人々の選別によって、様々なパターンが存在したと考えられます。

 

まとめ

猪養部は、古代日本において、「豚(=野生に近いイノシシから、徐々に家畜化が進んだ過程にある動物)」を扱うことを専門とする氏族でした。

この時代には、「猪」という字が、イノシシとブタの両方を指すことが一般的でした。古代における「猪」と「豚」の言葉の使い分けは、現代とは異なっていたため「豚を扱うことを専門とした『猪養部』」という矛盾するような表現になることを理解する必要があります。

猪養部は、古代日本の食料生産を支えた重要な存在で、「豚(=野生に近いイノシシから、徐々に家畜化が進んだ過程にある動物)」の飼育を通じて、人々は自然との共生を学び、食文化を発展させてきました。

このように猪養部に関し研究することは、古代日本の自然観や動物との関わり方、社会構造や食文化を理解する上で、重要な手がかりとなります。

興味深いですよ!「猪養部」「『猪』と『豚』の呼び名の歴史」。