アノ映画日和

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「スパイラル ソウ オールリセット」感想 ジグソウとの決別、今度のSAWはココが違う!

 

SAWの最新作が公開されました。

へ~~またSAW続編やってるんだ
シリーズ全部観てたっけ?

いまいち覚えてないけど復習しないでも大丈夫かな?

こんな感じの方が多いのではないでしょうか

まだ続編やるの?もうSAWはいいんじゃね?

なんて方もいるかもしれません。
期待、不安、倦厭(けんえん)、そのお気持ち全て分かります。
僕もそれらの感情を全て持っていました。
SAWは好きなんだけど、うろ覚えなとこあるし、マンネリ化も否めないしなぁ…と
で、鑑賞した今 同じ感情を持つ人に伝えたい

過剰な期待はするな!
全部観てなくても大丈夫!うろ覚えで全然オッケー!
マンネリは打破された、もうワンチャンあげて!

良くも悪くも今作はSAWでありSAWではないから
もちろんコレはあくまで私見…だから
Watch or not , make your choice.

2021年/アメリカ
監督:ダーレン・リン・バウズマン
出演:クリス・ロック、マックス・ミンゲラ、マリソル・ニコルズ、サミュエル・L・ジャクソン、他
上映時間:93分f:id:hagane-mk:20210905045652j:image75点

ざっくりあらすじ

地下鉄の線路上。舌を固定され宙づりの男は2択を迫られていた。自ら舌を引きちぎって脱出するか、電車に跳ねられて死ぬか。悲惨な末路を迎えた男の現場、ジーク刑事と相棒ウィリアムが捜査にあたる。遺留品から男は仲間の刑事と知る。そして犯人からメッセージが届く。その内容を見た者誰もが かつて世界を震撼させた猟奇殺人鬼ジグソウを想像した。ジグソウは間違いなく死んだ。ではこの犯行はいったい...
ジグソウをも超える猟奇殺人犯のゲームが今、はじまった。

もっと違う設定で もっと違う関係で
出会える世界線 選べたらよかった

今回のシリーズ最新作がこれまでとどう違うのか
それを説明する前にこれまでのソウの続編が「ソウの続編」である為に何を重要視してきたか、まずはそれを説明させて下さい。

・痛みを伴う「生」か「死」か強制2択ゲーム
・ラストは驚愕の真相(真犯人)でGAME OVER
・犯人とジグソウとの繋がり

この3つさえクリアしていれば鑑賞者は「ソウの続編」として認識し納得して貰えるはず。おそらく作り手はそう考えてきたに違いありません。
そしてそれは間違いではない。
ただし、

納得することと満足することは別

まず1つ目、
犯人が仕掛ける残酷なゲーム
SAWシリーズで1番嫌なゲームはどれか?なんて語られる位、皆が楽しみにしているところです。
鑑賞者もシリーズを重ねるごとに

More グロ! More グロ!

となっていきました。
でもちょっと待って、1ってそんなグロかったっけ?
残酷だけど重要なのは

痛みを伴う「生」か「死」
Live or not die, make your choice.

必ず生き残るチャンスがあり、生き残った者に生への感謝を与える事、
それこそが強制ゲームの目的だったはず。
ところがグロ度を増す為に如何に残酷に殺すかばかりに目が行き
ほぼDEATHゲーム化していきました。

ゲームはより複雑に、より大掛かりにと進化し続け
お金と時間と労力がかかりそうな装置ばかり。
もう個人、少人数の仕事ではないですね。
株式会社JIGSAWとして情熱大陸かガイアの夜明けで紹介されそうな勢いです。

でも皮肉なもので結局1番記憶に残っているのは初期の逆トラバサミだったりしますね。ジグソウの思想を置き去りにしたが為に、グロは増しても印象は弱まりました。
2以降どのゲームがどの作品のゲームか把握してる人います?
僕はしてません。だって既視感につぐ既視感
味のしない出涸らしゲームはとっくに限界過ぎてましたから。

2つ目、
驚愕と絶望を同時に味合わった あの1のエンディング
被害者に無慈悲に告げられた

GAME OVER

まさに映画史に残るエンディングでした。
あれを追体験させたくて2以降も同じ手法が使われました。
そのファンサービスは有り難い…けど なまじ同じ手法なだけに1と比べてしまう。
で、見劣りしてしまうという...

3つ目、
やはりSAWと言えば
ジグソウ!ジョン・クレイマー!

彼を出さずして何がSAWか
てな訳で真犯人は必ずジョン・クレイマーと何かしらの関係がありました。

私が彼の後継者だ、いや私こそが後継者、いやいや実は私が後継者…

ややこしい!

また時間軸が前後するので
4に出てきたアイツが実は2の裏でこれをやってて、6のコイツは1の時既に…

無理!頭が追いつかん!

鑑賞者が新作を観るにあたり不安になる最大要因はココにある気がします。
相関図がグチャグチャだし所々矛盾が生じてるし…
てかジグソウ
むっちゃ社交的やな!死ぬ前めっちゃ忙しかったな!

という感じでSAWシリーズは傑作の1を意識し、3つの約束事を守ってきました。
縛られてきたと言い換えても良いかもしれません。
それがマンネリ化の原因なのに...
こんなのいつまで続けても満足には程遠い、もうSAWシリーズはオワコンなのか?

否!

今度の新作 副題のオールリセットが示す通り

解放!

鎖を断ち切り新たな境地に挑んでいます。
ということで前振りが長くなりましたが、新作がこれまでとどう違うかようやく紹介に入ります。

違う 違う ソウじゃ ソウじゃない

何が違うって、そもそも創りが違う。
物語があり、主人公がいて、事件が起こる。

それって当たり前じゃんw

いやいやSAWシリーズにおいてはそれは当たり前じゃないんです。
まず設定があって、事件があって、登場人物が配置される。
その上で辻褄合わせの如く物語が創られる。
いわゆるSolid Situation Thriller(ソリッドシチュエーションスリラー)(以下S.S.Tと略)というジャンルは大概そうですね。そもそもS.S.Tが認知され爆発的に量産されたのはSAWの大ヒットに寄るところが大きい。
それも今や玉石混交を通り越してアタリショック状態(僕はこれをジェームズ・ワンの弊害と呼んでいます)
奇しくもムーブメントの生みの親であるSAWシリーズもその中に埋もれてしまいました。
で、気づいたんでしょうね?
映画はまず脚本(物語)ありきだって

遅ッッッ!!!

でも生みの親 自ら 脱S.S.Tという決断には拍手を贈りたい。

次に違うところ
主人公ジークの存在と登場人物の魅力

主人公が良いです、
ジーク・バンクスが!
俺は刑事だという正義感と責任感が人一倍強く、それゆえ親や仲間の不正も見逃す事が出来ない。
法の正義よりも己の正義に準じ、時にルール破りな捜査も辞さない。
それでいてウイットにとんだジョークも得意。

え?踊る?青島?Love Somebody?

いやいや彼ほど仲間に愛されてはいないです。
裏切り者扱いでめっちゃ嫌われてハブられてます。
でも映画的にはビジュアル、内面共に魅力的な主人公

そんなジーク目線で物語が進行していくので、今何がどうしてどうなっているのかが分かり易い。
SAW2以降シリーズ全般、結局ジグソウに全部持ってかれてて主人公不在な感じがありました。

いったい誰目線で追いかけていいのやら (´・ω・`)コマル

正直SAWの登場人物で名前憶えてるのってアマンダとゴードン先生ぐらいです←僕の記憶力の問題の可能性大

ジークの相棒ウィリアムの存在も良い。
警察学校を首席で卒業したエリート新米刑事という超ベタ設定だけど
ビジュアルも含め初々しくて良い。
はみ出し者と真面目クンというバディムービーとしての面白さ、これも今までになかった。

あとジークの親父役を演じたサミュエル・L・ジャクソンも当然良い。
あ、マザフ××カ良い!
SAWシリーズ初のビッグネームの出演は映画全体を締めてます。

とにかく今回はキャラに魅力を感じます。

次の違い
ジグソウの排除

これは英断!

余命わずかな老人がどんだけ働いとんねん問題もあるが、何より
過去や考え方、行動、素性が明らかになるにつれジグソウという存在が薄っぺらくなる。
分からないから不気味、怖いという部分は絶対あります。名残惜しくはありますが、そろそろ退場して貰いましょう。

good-by jigsaw

替わりに登場するのは豚マスクの男。
※ゲーム参加者を誘拐するいつもの豚マスクとは別
ジグソウとは縁もゆかりも無い いわゆるコピーキャット。
え〜コピーキャットにジグソウの代わりが務まるぅ?
務まるかどうかはさておき、なかなか面白い奴ではあります。

豚マスクはジーク刑事宛にメッセージと犯行ヒントを送りつけてきます。
ヒントを元に辿り着いた場所には、大きく描かれたスパイラルマークと箱。
箱の中身は遺体の一部と次のメッセージ。
警察という組織に対して挑発とゲームを仕掛ける豚マスク。
襲われる者と追う者 両方に仕掛ける同時進行 二重構造のゲーム。

こ、こいつ、只の愉快犯、コピーキャットじゃねえ!
狡猾さA 行動力A 残酷性A+
映画を禍々しく染める狂気師を担ってやがる!

ジグソウ然りレクター博士然り、悪党の魅力次第で犯罪映画の格が決まります。
今作の悪党は比べるとまだまだ小物。
しかしながら確かな伸びしろを感じました。
どこか金田一少年の事件簿の地獄の傀儡子(高遠遙一)に通ずる魅力があるな…と。
次作以降ひょっとしたら大化けするかも
成長性Sです。
 

f:id:hagane-mk:20210909090125j:image咲き乱れるのか 朽ち果ててるのか
二つに一つのダイス

あれも違う、これも違う、て それもうSAWじゃないじゃん

Exactly(イグザクトリー)(そのとおりでございます)

だから最初に申し上げました。

良くも悪くもこれはSAWでありSAWではないと
これまでのSAWと同じ世界線上の新たな物語です。

ですから今作はシリーズ史上最も賛否両論 別れます、絶対。
SAWシリーズにマンネリを感じてた人は受け入れるでしょう。
逆に従来のシリーズファンはこの様変わりを受け入れ難いでしょう。
どちらの気持ちも分かります。
でも両者を繋ぐべくしっかり引き継いだものもあります。それは

痛みを伴う「生」か「死」か強制2択ゲーム!

要はみんなコレが観たい!でしょ?
ただゲームにも大きな違いはあります。

ジグソウが仕掛けるゲームの根源は
命を冒涜する者、粗末にする者が許せないという自身が余命僅かになって芽生えた思想にあります。
だから助かるチャンスは必ずあります。
後継者達もその思想があるか否かが重要なポイントでした。

が、今回の豚マスクが仕掛けるゲームの思想は全く違います。
お前は刑事の癖にこういう罪を犯した、だからその罪に見合った代償を支払わなければならない。
ある者は舌を、ある者は十指を、罪の代償として天秤に掛けられます。
それさえ払えないのであれば

æ­»

ね

と。

偽りの正義を裁く執行者気取り。
やっかいな思想。
ま、被害者からすれば、ジグソウだろうが後継者だろうが豚マスクだろうが、やらされる事は生か死かの2択ゲームなんですけど。
観る側としては、◯◯刑事は裁判で何度も偽証し罪のない者を有罪にした。
だから舌の代償を強いられた。
と、理由とゲームの繋がりがハッキリしていて、かつストーリーに結びつくので覚えやすいです。優秀だと思います、はい。

f:id:hagane-mk:20210909124308j:image血のにじむような遊びはこれから
少年はつぶやく

S.S.Tを捨て、シンボルであるジグソウも捨て
解り易い物語に解り易いキャラクターを配置し、ゲームは凝り過ぎず、
そこまでして今作は何がしたかったのでしょうか?

原点回帰

う〜ん、確かにそれもあると思いますが、これ原点に帰ってるかなぁ?
1の印象とは大きく異なります。それ以降のシリーズのどれとも違う。
原点回帰というより

再生の方がしっくりきます。

これはあくまで僕の予想ですが
今回のシリーズは長編ものとして構想が練られてるんじゃないでしょうか?
これまでのSAWシリーズのように後付けで無理矢理繋いだ長編ではなく
少なくともあと2、3本分は見据えて大まかなストーリーが組まれてる気がします。

新たな服を纏う為には一旦裸にしなければならない。
だから削げるものは削ぎ落としシンプルに。
きっとここから螺旋(スパイラル)は色んなものを渦に巻き込みながら拡大していきます。
良い意味でまた複雑になっていくでしょう。
そうなってくると僕は予想を超えて妄想モードでニヤケモード。

次は奴、別の犯人を用意して裏で操りやがるな
ジークは翻弄されながらも、次第に追い詰めていく。
が、最後は操り人形を犠牲にして奴は逃亡
犠牲者候補としてはジークの元妻とか対象になるね。
で、どんどんジークの心が壊れていき、何が正義で何が悪か分からなくなる。

最終的にはジーク闇堕ちか?(゚∀゚*)(*゚∀゚)オオオ
オモシロイィィィ

妄想が暴走して勝手に動揺。
だから60点くらいの普通の出来でも加点して75点あげちゃう。

は?普通?結構褒めてたのに?

いや〜普通でしょ?
だってダメダメポイント結構多いし…
と言う事で、最後は当ブログらしくダメ出しもしっかりやって終わりましょう。
勢いでネタバレもあり得ます、鑑賞前に期待値を下げたくもありません。
鑑賞済みの方だけ先にお進み下さい。
未見の方はここまで、出来れば観賞後また読みに来て下さい。

f:id:hagane-mk:20210920004824j:imageマジヤバない?止まれやしない 不平不満垂れて成れの果て サディスティックに変貌する精神

何がダメって
鑑賞した方ほとんどの方が言うでしょう

犯人が解りやす過ぎるw

あんなん もうデコに犯人て書いてるようなもんです。
あれで実は…的なドヤ顔で再登場されても

でしょうね!

という感想しかありません。
タララン タララン タラ タラランていつものエンディングテーマ流れだしたけど
ちょちょ待て待て!
今回は衝撃の事実に重きを置いてないとはいえ、
もうちょっと裏切ってよ!騙してよ!

あとゲームね、
最初の方は良かったんですが、物語が進むにつれ無理が出てきました。

2択どころかDEATHまっしぐら
ただの死刑執行、私刑執行

ゲーム内容に意味も思想もなく目的だけが重視されていました。
それだとその辺の殺人鬼と変わらないです。

クソゲー無理ゲーじゃねえか豚野郎!

罵倒したい気持ちは僕も同じですが
彼は犯罪者としてはまだまだルーキーです。今後の成長に期待ってことで。

次、全体的にカラッとし過ぎ。
これまでのカビ臭いジメッとした不快感、素足で滑(ぬめ)ったタイルを歩くような嫌悪感
あの不衛生な感じが好きだったのに妙にクリーンで残念。

最後、これ1番の不満。
これだけSAW脱却を目指しながら
タイトルが
本国は「From the book of saw」
日本は「ソウ:オールリセット」
どっちも副題にSAWが入ってます…

何故そこを隠さない?

タイトル「SPIRAL」でいいやん
匂わせるけど明言せず、もしかして…と期待させて
オープニングのゲームと例のテープで

やっぱりそう!SAWや!

の方が絶対盛り上がるのに!口コミで広がるのに!
今度のSAWは予告から裏切ってきた、
面白そー観たい観たい!てなったのに!

それどころか、予告からSAWに目配せして、やり方がセコイ。
ジグソウの写真、USBに書かれたplay me、いつものテーマソング、あげく手錠で繋がれたジークの手に糸ノコって…
あのシーン全然意味なかったからな!

折角オールリセットしても結局頼るんかい…( ꒪⌓꒪)ハァ

ちょっとダメ出しが過ぎたかな。
SAW愛ゆえということでご容赦頂きたい。
これでも僕は今作 賛か否で問われたら
賛なので...
これだけダメ出ししといて信憑性ゼロだと思いますが、
シリーズランキングを作るなら

2番目に面白い。

そう思ってます。
これまでのSAWぽいに全集中してた続編たちより、
多くを捨てSAWを越えんと挑むSPIRALは好感が持てます。
更なる続編に期待してるのも楽しみにしてるのも本当本気です。

でもそれは対SAWシリーズという評価、感想で
大きく映画という括りで考えると何も斬新な事はやってません。
だから傑作か駄作か問われたなら
う~~ん

正直、普通

としか答えられないです。今のところ
褒めたいのか貶したいのか...なんとも曖昧な感想になって申し訳ない。
でもひとつだけハッキリ言えるのは
今作には次の新作が公開されれば必ず観よう。2人の決着を見届けよう。
そう思わせるだけの期待、見込みが間違いなくあります。
僕は追いかけると決めました。
あなたはどうですか?
追いかけますか?見捨てますか?

Watch or not , make your choice.

アノ映画日和でした。
f:id:hagane-mk:20210909090151j:image追伸、ラスト犯人が扉を閉める時、どうせGAME OVERて言うんでしょ?と思ったら言わなかったですね。あれ僕、結構な評価ポイントなんです。だってあの決めゼリフはゲームに負け死んだ者しか聞いてないはず。警察はおろか後継者も知るはずのない言葉。だから言わないが正解なんです。それに犯人とジークとのゲームはまだまだこれから。だから「to be continued」の意を込め沈黙。そう考えたら、ちょっとゾクゾクしません?え?全然しない?ふ〜〜ん…

Game Over.

最後にこの映画が好きな方にお勧めしたい映画を紹介して終わります。
・SAW
・セブン
・ボーン・コレクター

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