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    掲載日:2024.07.25

    中国地方の秋旅:ハイキング、サイクリング、ドライブで楽しむ絶景紅葉スポット

    中国地方の特徴の一つに、南北で瀬戸内海、日本海に挟まれ、中央には中国山地が東西に延びる変化に富んだ地形があります。それだけに行く先々で出会える紅葉の景色もまた多様。今回は、ハイキング、サイクリング、ドライブと3つの異なるアプローチで楽しめる、絶景紅葉スポットを紹介します。

    三段峡(広島県):色鮮やかな"峡谷凝縮美"を味わい尽くす

    最初にご紹介するのは、中国地方屈指の紅葉スポットの一つ、広島県北西部の安芸太田町にある三段峡です。同じ広島県の厳島と並ぶ国の特別名勝で、約118万におよぶ広島市民の生活を支える水源の一つ、太田川上流の水系沿いの大峡谷です。極端に切れ込んだV字谷で湿度が高い一方、北からの風が吹き込んで寒暖差が激しい上、広島県の最高峰、1,346mの恐羅漢山(おそらかんざん)もあり、地形は多様。キシツツジをはじめとする希少植物、日本に生息するうちの5分の1に匹敵する約400種のコケも自生しています。

    山深いエリアですが、アクセスは良好で、広島、萩・石見、岩国の各空港から、車で1時間~1時間30分ほどで到着します。また、広島駅からもバスや車で1時間~1時間20分の距離にあるため、厳島神社や広島市街の観光と合わせて楽しんでもいいでしょう。紅葉シーズンが始まるのは、例年10月中旬からで、その後下旬から11月中旬までがピークです。

    複雑な造形の岩々、清流、赤、橙、黄緑に彩られる樹木の共演は息を飲む美しさ

    初心者から上級者まで対応する多様なハイキングコース

    三段峡の紅葉は、川沿いに作られたコースのハイキングで楽しみましょう。全長16kmにおよぶ長いコースで見どころが多いため、往復20分ほどから1時間、2時間、さらに4~5時間など、長短さまざまなコースから選ぶことができます。なかでもおすすめは、三段峡正面口から「黒淵(くろぶち)」を往復する計約2時間のコースとのこと。

    写真中央が黒淵荘。安芸太田町内で採れた新米のおむすびなどをいただける

    「峡谷内で唯一の食事処である黒淵荘を目指します。併設されている渡舟場から舟に乗り換えて眺める切り立った絶壁と原生林、川底までクリアに見える清流は、まさに山水画の世界。川底には"生きた化石"と称される特別天然記念物、オオサンショウウオがゆったりと泳ぐ姿も見られます」(一般社団法人地域商社あきおおた 有田隆司さん)

    なお、「紅葉シーズンには気温がひと桁になる場合もあるため、基本の服装は、秋~冬用のジャケットなどを着用し、歩きやすいスニーカーを履いてきてください」と有田さん。さらに、冬眠前の熊を遠ざけるための熊鈴があれば安心でしょう。

    黒淵渡舟。船頭が長い竹竿でこぎ、ゆったり進む。11月下旬まで運航予定

    ガイドの「森林セラピー」でより深く自然に分け入る

    体力に自信のない初心者や、より詳しく三段峡の自然を知りたいという方には、専門ガイドによる「森林セラピー」がおすすめです。ガイド事務局の梅本雅史さんに聞きました。

    「三段峡には2つのセラピーロードがあり、ガイドが案内をしながらハイキングをします。マツタケをはじめとする豊富なキノコ類や、葉の裂片が通常の4~5枚ではなく、十数枚におよぶモミジの観察など、学びを取り入れた解説はガイドツアーならではです」。ちなみにセラピーロードは、三段峡以外にも、恐羅漢山や深入山(しんにゅうざん)、龍頭峡など計4つのコースがあります。出会える野鳥、植生が異なり、登山体験もできるなど、違う形で紅葉を楽しめるでしょう。

    森林セラピーでは、各ガイドが趣向を凝らしたプログラムを用意している
    写真:(一社)地域商社あきおおた

    安芸太田町の紅葉スポットは三段峡だけではありません。例えば、アーチ式ダムとしては西日本1位の高さを誇る温井ダムの紅葉、江戸時代中期から続く名園で、例年初夏と秋の年2回しか公開しない「吉水園(よしみずえん)」、さらに、大歳神社の境内で、推定樹齢1,100年を超える「筒賀(つつが)の大銀杏」などがあります。

    高さ48m、周囲8.2mの巨樹・筒賀の大銀杏。広島県の天然記念物に指定されている
    写真:(一社)地域商社あきおおた

    ハイキングと一緒に楽しみたいグルメ、温泉にも注目

    帰りにぜひ立ち寄ってほしいのが、地元ならではのお土産が並ぶ「道の駅 来夢とごうち」です。この時期のおすすめは、「柿の王様」と呼ばれる「祇園坊柿(ぎおんぼうがき)」。文豪・夏目漱石も好んだという逸品です。10月中旬頃から、あおし(脱渋)柿、干し柿などの商品が並びます。

    祇園坊柿の干し柿。トロリとした生の感じを残す、独自製法と昔ながらの伝統製法でつくられた味わい
    写真:(一社)地域商社あきおおた

    疲れを癒せる温泉が近いのもうれしいところ。「道の駅 来夢とごうち」から車で5分ほどの高台にある温泉宿泊施設「グリーンスパ つつが」は、日帰り入浴も可能。窓から見える紅葉を愛でながらお湯に浸かることができるので、ハイキングの旅にぴったりの締めくくりでしょう。

    「グリーンスパ つつが」の展望浴場。美しい夜景も自慢
    写真:グリーンスパ つつが

    三段峡

    • 住所:広島県山県郡安芸太田町柴木
    • ウェブサイト:三段峡

    黒淵荘

    • 住所:広島県山県郡安芸太田町藪ヶ迫
    • ウェブサイト:黒淵荘

    森林セラピー

    大歳神社

    • 住所:広島県山県郡安芸太田町上筒賀94

    道の駅 来夢とごうち

    グリーンスパ つつが

    出雲エリア(島根県):サイクリングで軽やかに神話の里を駆ける

    縁結びの最強スポット「出雲大社」や、国宝の「松江城」、米誌日本庭園ランキング日本一の「足立美術館」などがある島根県の東部も、中国地方を代表する観光地。10月下旬~11月下旬の紅葉シーズンにはさらに魅力を増し、多くの観光客が訪れます。

    さて、島根の紅葉を巡る旅の移動手段として、おすすめしたいのが「自転車」です。実は島根県はとても「自転車フレンドリー」なエリア。県内の至る所にサイクリングコースが設けられており、初心者から上級者まで、実力に応じたライドを楽しむことができます。自動車、徒歩にはない適度な疾走感は、ひと味違う旅の思い出になるはず。紅葉シーズンは気温が下がって空気がクリアになるだけに、快適なサイクリングと絶景が楽しめるでしょう。今回は、島根のサイクリング情報を発信するウェブサイト「しまねサイクリングNavi」を運営する、特定非営利活動法人サイクリストビューの森脇博史さんにお話を聞きながら、サイクリングの旅をご紹介します。

    有名観光地からマイナーな裏路地まで案内してくれるガイド付きツアーもある

    水の都・松江、「神在月(かみありづき)」の出雲へ

    松江、出雲の自転車旅なら、米子空港から車で約45分とアクセスの良い、松江を拠点にするのがよいでしょう。市内で自転車を借りたら、まずは松江のシンボル・松江城へ。全国で現存する12天守のうちの一つにあたり、美しい天守閣と紅葉のコラボレーションは優雅の一言です。松江の別名「水の都」の由来の一つで、城のお堀を一周する堀川も紅葉を楽しめるスポット。ここで遊覧船に乗り換え、城下町の武家街や商人街だったエリアを通りつつ、視点を変えて松江城の紅葉を愛でるのもまた一興です。

    松江城を中心に広がる松江城山公園から見た紅葉と国宝天守の共演

    松江市内だけでも十分楽しめますが、もし行程と体力に余裕があるなら、松江から自転車で3時間弱、島根県の王道観光スポット・出雲大社へのロングライドにもチャレンジしたいところ。美しい宍道湖沿いを走る気持ちのいいルートです。名物のうなぎを楽しみつつ、出雲大社を目指しましょう。この時期、日本のほかの土地では神様が留守になるため「神無月」になりますが、神様が集まるとされる出雲は「神在月(かみありづき)」に。「神在祭・縁結大祭」などが行われ、良縁や家内安全を願う多くの方が訪れます。

    1963年に新築された出雲大社の拝殿は戦後最大の木造神社建築といわれる

    奥出雲サイクリングでさらなる紅葉の絶景を体感

    島根県内には、ほかにもたくさんの紅葉ビューを楽しめるサイクリングコースがあります。なかでも森脇さんがおすすめしてくれたのが奥出雲町の「おろちループと神話を巡るコース」。

    「スタート&ゴールは、奥出雲町サイクリングターミナル。出雲大社方面からは車で約1時間、松江方面からも約1時間で到着します。道中では、安来の足立美術館に寄って紅葉する日本一の庭園を楽しんでもいいですね」

    宿泊もできる奥出雲サイクリングターミナル。併設の仁多米(にたまい)食堂では、この時期なら新米の仁多米を食べることができる
    写真:一般社団法人 奥出雲町観光協会

    目指すはこの地域に伝わる古事記の神話「ヤマタノオロチ」にちなんだ日本最大規模の二重ループ方式道路「奥出雲おろちループ」です。上りが続きますが、電動アシスト付きのeバイク(3日前までに要予約)なら、比較的ラクに走ることができます。

    「おすすめの紅葉ビューは、何といってもおろちループ付近です。最も高い場所の谷間にかかる三井野(みいの)大橋の真っ赤なアーチと紅葉のコラボが素晴らしく、SNS映えも間違いなし。ほかにも、巨大な奇岩が折り重なる"鬼の舌震(したぶるい)"や、"金言寺(きんげんじ)"の高さ約33mの大銀杏でも素晴らしい紅葉を見ることができます」

    奥出雲おろちループの頂上、標高約700mに位置する「道の駅 奥出雲おろちループ」からの絶景

    この時期の奥出雲でもう一つ外せないのが、新そばの提供が始まる出雲そばです。例年11月初旬からの2週間は「奥出雲新そばまつり」が開催され、多くの方が訪れます。

    「おすすめは釜揚げ。ゆで湯ごと丼に盛る温かいそばで、薬味とそばつゆをかけ、好みの味にアレンジして食べてみてください。特に新そばは香りと甘みが際立つ絶品です」

    奥出雲の名店の一つ「八川そば」の「釜あげそば」。おろちループへのコース沿いにあり立ち寄りやすい

    サイクリングを満喫した後の温泉なら、奥出雲町サイクリングターミナルから車で約10分の亀嵩(かめだけ)温泉 玉峰山荘へ。名産の仁多米や奥出雲ポーク、マイタケなど地元グルメも楽しむことができます。立ち寄り湯はもちろん、宿泊も可能なので、紅葉の中でゆっくり過ごしたい方にはおすすめです。

    亀嵩温泉 玉峰山荘には紅葉が美しい玉峰山を見ながら入ることができる露天風呂もある
    写真:亀嵩温泉 玉峰山荘

    しまねサイクリングNavi

    足立美術館

    • 住所:島根県安来市古川町320
    • ウェブサイト:足立美術館

    奥出雲町サイクリングターミナル

    金言寺

    • 住所:島根県仁多郡奥出雲町大馬木1060

    八川そば

    • 住所:島根県仁多郡奥出雲町八川99-1

    亀嵩温泉 玉峰山荘

    • 住所:島根県仁多郡奥出雲町亀嵩3609-1

    秋吉台(山口県):壮大な自然の営みを五感で味わうドライブ旅行

    中国地方の紅葉を楽しむ旅、最後の提案は山口県の秋吉台を起点にするドライブです。秋吉台は、山口県中部の美祢市にある、広さ約130k㎡、標高200~400mの日本最大級のカルスト台地。地表の石灰石は、約3億5千万年前に南方の海でサンゴ礁として誕生し、長い長い年月を経て現在のような景観を作り上げました。また、秋吉台の南麓、地下約100mの場所には、日本屈指の大鍾乳洞「秋芳洞(あきよしどう)」も。観光コースの長さは約1kmで、ダイナミックな自然の造形美は見ごたえ十分。秋吉台へは山口宇部空港から車で約45分とアクセス良好です。

    秋吉台エリアのカルストロードは約7km。爽快なドライブが楽しめる

    まずはカルストロードへ。突然現れる絶景に感動!

    秋吉台の紅葉シーズンは、例年10月下旬~11月。何はともあれカルストロードへ向かってほしいと、一般社団法人 美祢市観光協会の飯田昭太郎さんは話します。

    「秋吉台カルスト展望台近くの三差路からカルストロードを北上してください。最初は左右とも低木が迫っていて眺望はないのですが、すぐに秋吉台の大パノラマがフロントガラス越しに広がります。初めて見た方は歓声を上げずにはいられないプライスレスな眺めです」

    同協会の阿野太助さんは、秋吉台の北端に潜む絶景ポイントを教えてくれました。

    「長者ヶ森駐車場に車を停め、見渡すとそこかしこに"草紅葉"が点在しているのがわかるでしょう。石灰石の台地である秋吉台にはモミジやカエデなどの樹木はないのですが、その代わりに、この時期になると赤く染まるチガヤが、秋の到来を知らせてくれます。時間が許せば、ぜひ夕陽が沈む時間帯に行っていただきたい。日没直前~直後の数分間、夕陽を浴びて真っ赤に燃え上がる草紅葉は言葉を失う絶景です。また、駐車場近くの美東(みとう)展望所も穴場的な絶景スポットで、360度の大パノラマを独り占めできます」

    日没直前~直後の時間帯は草紅葉の赤がさらに鮮やかさを増す
    写真:一般社団法人 美祢市観光協会

    そしてもう一つ、秋吉台の紅葉シーズンに欠かせないのが黄金色に輝くススキです。見ごろが始まるのは、草紅葉より少し早い9月後半から10月にかけてとのこと。

    「なかでも秋吉台最高峰、標高452mの龍護峰(りゅうごほう)付近から観賞するススキ原が美しい。秋吉台は周囲に人工の遮蔽物が一切なく、風が吹抜けやすい地形なので、ススキも風にたなびき、まるで雲海の上にいるような錯覚に陥ります」(阿野さん)

    ススキは朝霧がかかりやすい早朝、あるいは日没時も美しい

    秋吉台の地底に広がる、鍾乳洞も必見スポット

    地表の秋吉台で草紅葉、ススキの美しさを堪能した後は、合わせて地底に潜む日本有数の鍾乳洞にも"潜入"しましょう。あの広大な台地の下に、こんなに神秘的な空間があるとは…!と驚く方も多いはず。雨水が岩の割れ目から地下に流れ込み、石灰岩を溶かしてできた鍾乳洞は、地上では見られない神秘の絶景の宝庫です。

    秋吉台地下には400~500ヶ所の鍾乳洞があるとされていますが、そのなかで最も有名なのが「秋芳洞」です。無数の鍾乳石がぶら下がる「傘づくし」、地下水がたまって棚田のような「百枚皿」など、大自然が悠久の時を経て生み出した光景は、まさに圧巻。ほかにも、壇ノ浦の戦いに敗れた平家の武将・平景清が隠れ住んだとの伝説がある「景清洞」、幾層もの洞窟がたて穴でつながった立体的な構造の「大正洞」も見ておきたい場所です。

    秋吉台の名勝「青天井」。外の光が川に反射し、天井が青く見えることに由来

    秋吉台、鍾乳洞観光が終わった後は、地元グルメや特産品をチェックしては。秋芳洞入口近く、秋芳洞商店街にある安富屋では、秋吉台特産の「美東ごぼう」を粉末にしてうどん麺に練り込んだ「ごぼう麺」が名物です。

    ごぼうの唐揚げとお肉を乗せたボリューミーなごぼう麺
    写真:安富屋

    さらなる絶景を求めて日本海方面にドライブ

    せっかくのドライブ旅なので、もう少し足を延ばしてみてはいかがでしょうか。秋吉台から車で約40分北上すると、長門市の長門湯本温泉に到着。山口県最古・開湯600年の歴史を持つ長門湯本温泉の原点である元湯が湧く「恩湯(おんとう)」をはじめ、大小の温泉が並びます。御茶屋小路から温泉街へつづく紅葉の階段はこの時期のお楽しみ。両脇のもみじは燃えるような色彩で、温泉客を楽しませてくれます。

    長門湯本温泉の紅葉の階段は計88段。ライトアップも美しい
    写真:長門湯本温泉まち

    長門湯本温泉からさらに車で北上すること約20分で、日本海に面した青海島(おうみしま)に到着。荒波に侵食されて絶壁や洞門、石柱、岩礁などが約16kmにわたって続く景勝地で「海上アルプス」の別名も。秋吉台が陸の絶景なら、こちらは海の絶景。一度の旅で多くの絶景に出会えるのは、フットワークの良いドライブならではでしょう。

    青海島観光汽船一周コースの見どころの一つ「十六羅漢」

    秋吉台

    • 住所:山口県美祢市秋芳町秋吉秋吉台山
    • ウェブサイト:秋吉台

    秋芳洞

    • 住所:山口県美祢市秋芳町秋吉3449-1
    • ウェブサイト:秋芳洞

    安富屋

    • 住所:山口県美祢市秋芳町秋吉3442
    • ウェブサイト:安富屋

    長門湯本温泉

    旅の目的別に移動手段を選んで中国地方の秋を満喫

    秋の旅行の大きな魅力「紅葉名所巡り」。ハイキング、サイクリング、ドライブと現地での移動手段を変えることで、楽しみ方のバリエーションは自在に広がります。体力や一緒に行く方、そして何より訪ねてみたいスポットを吟味して、この秋の中国地方の旅を計画してください。

    • 記載の内容は2024年6月現在の情報です。変更となる場合があるのでご注意ください。
    ライター:Katsumi Yasukura

    取材協力:一般社団法人地域商社あきおおた、島根県観光振興課、特定非営利活動法人サイクリストビュー、一般社団法人 美祢市観光協会

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