2000万円足りない人の、とりあえずの500万円 佐藤治彦

2019.11.8

01貯蓄ゼロのあなたのために


 貯蓄ゼロのあなたのために、僕は伝えたいことがあるんです。
 まず最初にこの文章にたどり着いてくれてありがとう。あなたがこうして読んでみようと思ってくれないと、僕はあなたに出会えません。今までいろんな本を書いてきて、いつも僕が書きたいと思っていたのは、貯金が全然ない人のための文章です。でも、全ての出版社から反対されました。そういう人は本を買わない、文章を読まない。プロの編集者が言うのだからそうなのかもしれません。でも、誰よりも、お金について知ってもらいたいのは、貯金がゼロの人なのです。そこそこ貯金のある人は僕の本や文章を読んでくれます。話も聞いてくれます。そして、どんどん得をしていきます。どんどん貯蓄も増やしていきます。それも嬉しいのですが、もっと聞いて欲しい、伝えたい人がいるんだよなあ。何年も悶々としていたら、亜紀書房さんが、そう言う企画をやってみたいと言ってくれたのです。
 多くの人が失敗するよ、と思ってるはずです。貯蓄のない人は文章は読まない。本も買わない。だから、この文章が注目されないと、きっとこれで終わってしまいます。次のチャンスがあるかどうかは分かりません。そんな凝り固まった世の中の常識をひっくり返すためにも、この前書きを読んでいただいて、いいなと思ったらぜひ拡散していただきたいのです。そのうち本にもする予定ですが、できるだけ本の代金も安くしてくださいと出版社にお願いして、出版社もギリギリの努力をしてもらいたいと思っています。

 ちょっと話がそれました。続きです。
 毎月のお給料が入ると、そこから家賃や光熱費が引かれ手元に残ったお金で、1ヶ月のあいだに食べることや、遊ぶこと、時には家具とか洋服とかそういうものにあっという間にお金が消えていくものです。年に何回かは、次のお給料まで、あと10日というところあたりで本当にお金に困ってしまってどうしようと悩む。そういう人は少なくありません。言いたくないけど毎月の生活がギリギリな感じです。
 もしかしたら、あなたもそういう経験があったり、いや、今も生活をしていませんか? となると、通帳にお金がほとんど入っていないと思います。貯金ゼロです。昭和から平成の前半にかけての日本と、令和の日本では働く人の経済環境がすっかり変わってしまいました。今は貯蓄ゼロは珍しくありません。普通のことです。

 今の日本で貯金がまったくない人は若い世代で3世帯に1世帯。60代以上でも3割くらいいます(2人以上の世帯)。だからだいたいほぼ全ての年齢で3割強です。でも、いっぽうで平均的な貯蓄額は30代で470万、60代以上だと1410万円なんてことも報告されているんです(2017年11月に金融広報中央委員会)。貯蓄ゼロの人が3人に1人なのに、貯金の平均が30代でも470万ということは、持ってる人が平均をグーンと押し上げているわけです。そんなこと聞きたくないですよね。わかります。でも事実なんです。きっとものすごくいい給料をもらってるからだろうと思うかもしれません。まあ、その通りです。確かに、収入の高い人は貯蓄も増える傾向はあります。しかし、年収1000万円以上もある人でもまったく貯金がない人もいるんです。それも1割くらいいます。反対に年収が200万円でも貯蓄できている人もいます。だから、貯蓄ができるかどうかは、年収に関係ないとも言えるのです。
 僕は皆さんに年収に関わらず少しでも貯蓄できるようになって欲しいのです。できれば、500万円くらいの貯金をしてほしい。年収が低く、貯金がまったくない人は自分には貯金なんかすることはできないと思ってます。確かにできない人もいるとは思います。そして、多くの人にとって、今までと同じような生活を送っているだけでは貯めるなんて難しいでしょう。だって、今までの生活では貯蓄ができなかったわけですから。つまり、貯蓄ができるようになるためには、生活を変えなくてはいけません。こういうと「ケチになれっ」ていうことでしょ! と決めつける人がいます。そういうことではないのです。まあケチになっても貯蓄はできますが、楽しくないです。
 ちょっとよく考えてもらいたいのです。廻りにあなたと同じくらいの年齢で同じくらいの給料をもらっているのに貯蓄ができている人はいませんか? 別に300万円の貯蓄がなくても100万円でも50万円でもいいです。まったく貯蓄がない人と、50万円の貯蓄がある人との差はどこにあるのでしょうか? なんで貯蓄した方がいいのでしょうか? それは、生きていくための自由を得るためです。自分を守るためです。毎月のお金が右から左ということになると、暮らしていくためにお金を追いかけ、お金に追いかけられる生活になります。きちんと働かないと食べて行けないし、ちょっと辛くても残業代やバイトの時間を長くして少しでも多くお給料が入ってくると、正直、今月はああよかったなあとなります。
 僕の良くいく居酒屋はお客さんが少ないと、元々は11時まで働く約束だったバイトの若者に9時過ぎに上がっていいよと店長さんが伝えてます。遊ぶお金のために働いている人はそれでもいいのでしょうが、そのバイトのお給料で生活している人にとってみると、2時間早く仕事が上がるということは、だいたい2000円も給料が減るということです。シフトに入っていたバイトをこのごろお客さんが少ないからとか、新しくバイトを入れたとかで、3日も働く日数を減らされたら、2万円以上も収入が減るわけですから、他のバイトも探そうかということになるわけです。来月の食費きついなあと心配にもなります。貯蓄がないとこうして少しでも収入を増やしたいとお金を追いかける毎日を過ごし、出ていくお金にどうしようと悩みながら生活をすることになるわけです。これはお金に縛られた生活だと言えます。
 令和元年の6月に年金2000万円問題というのが起きました。老後に公的な年金以外に2000万円の自己資金が必要だというリポートが厚生労働省が頼んだ偉い先生や金融のプロがまとめたら、国民が騒然としてしまったという話です。
 でも、僕は知ってます。2000万円どころか貯蓄が20万円もなくて、老後の心配でなく、今月のお金の心配をしている人にとってみると、何言ってんだよ、そんな老後の心配なんて、たいそう贅沢な悩みだよと思ったはずなのです。この文章を読んでくれているシニアの人は、今さら言われてもどうすればいいの? と思ってるはずです。
 もしも、あなたが貯蓄が全くないか、ほとんどない人だったら、ちょっと想像してみてください。貯金通帳に500万円、いや200万円でいいです。つまり、2の後にゼロが6つついた残高があったら、少し気持ちがラクになると思いませんか? 同じお金の心配をするのでも今月のお金の心配でなく、もう少し将来のことまで考えられる、つまり、自分の人生のことを考えられるようになると思うのです。全く貯金がないと、バイト先でいじめやセクハラまがいのことをされたとしても、バイト先を辞めたらすぐに食べられなくなります。でも、すごく嫌なことをされたら、少しでも貯金があればそんな最低のところから抜け出して他の仕事を探すこともできるはずです。
 高校時代の仲のいい友人が結婚するから式に出席してほしいと言われたら、お祝いのお金を考えると困ってしまって、欠席の理由を探そうとする、そんな哀しいことをしなくて済む。久しぶりに連絡してきてくれた友だちから、千葉にある東京の「ねずみ王国」に遊びに行こうと言われたら、たまには良いかも! とバイト先に休みを出して、楽しむこともできる。僕はそんな生活をしてもらいたいのです。もしも、もう少しお金があって、それこそ500万円の貯金があったら、若いうちにバックパッカーで世界を旅行して見て歩いてみようと思うかもしれないし、前からしたかった法律とか税金の勉強、簿記とか、いや、ペットの美容師になる勉強とか、そういう転職のために必要なことや、夢を叶えるための準備のお金にすることもできるかもしれません。お金の余裕があるということは、そういうことなのです。本を読むことなんてほとんどしないし、毎日の生活に疲れていて文章を読むのは辛いという人も多いと思うので、僕はできるだけ読みやすく文章を書こうと思います。ゲームをやったりバラエティ番組を見るような楽しさはないかもしれませんが、これからの皆さんの生活を変えるための話をするのです。お金に困ることを少しでも減らす話をしていこうと思います。
 30の質問と提案をします。それから、それにまつわる情報も書いておきます。人それぞれでいろんな環境で生きていますから、自分にとって使えそうだなと思うものから生活に取り入れていってください。きっと貯蓄ゼロの生活から脱出できるでしょうし、少し貯蓄のある人は、もっと多くの貯蓄を得ることができると思うのです。何か意見のある人や、具体的に困ってる人がいたら、編集部までメールをください。一緒に今よりも明るい明日にするための作戦会議を始めましょう。


【ご意見などはこちらのメールアドレスまで】
亜紀書房・編集部:[email protected]

(第1回・了)

この連載は月1回更新でお届けします。
次回2019年12月7日(土)掲載