面会交流とは?取り決める方法や認められないケース、拒否するリスク
子どものいる夫婦が離婚や別居をする際、どちらか一方の親は子どもと離れて暮らすことになります。しかし、子どもが健全に成長するためには、両方の親とよい関係を続けていくことが重要です。
そこで、「面会交流」を実施することが考えられます。面会交流は、目的を理解したうえでルールを守って行うことが大切です。
このコラムでは、面会交流の目的や基礎知識に加え、取り決め方法、注意点などを解説します。面会交流が認められないケースや、面会交流を拒否するリスクなども解説していますので、父母間のトラブルを避けるためにもぜひ最後までご覧ください。
目次
このページでわかること
- 面会交流の目的・概要
- 面会交流を取り決める方法
- 面会交流が認められない可能性があるケース
面会交流とは
面会交流とは、離婚や別居などにより子どもと離れて暮らす親(非監護親)と子どもが、直接会ったり手紙や電話でやり取りしたりして、親子の交流をすることです。
離婚や別居をすると、通常、子どもはどちらか一方の親と暮らすことになります。
しかし、親子である以上、お互いに会いたいと思うのは自然なことです。また、親子の交流は子どもが健やかに成長するために必要であると考えられています。
そのため非監護親とその子どもには、法律上、面会して交流することを求める権利(面会交流権)が認められているのです。
面会交流を実施する目的
面会交流は、子どもの福祉・利益を実現することを目的としています。
子どもにとって、両親から愛されていることを実感し、安心感や自信を得ることはとても大切です。面会交流を通して親子の信頼関係を築くことで、子どもの健やかな成長に繋がります。
また、定期的に子どもに会うことで非監護親が子どもに対する愛情を持ち続けられれば、養育費の不払い防止にもなるでしょう。
面会交流を実施する期間
取決めに基づいて面会交流を行うのは、基本的に子どもが成人するまで(2022年の改正民法施行後は18歳まで)とされています。
ただし、子どもの年齢が上がるにつれて本人の意思が尊重されるようになるため、必ずしも成人するまで面会交流ができるとは限りません。
なお、成人後は親権・監護権がおよばないため、監護親の意向や取決めた内容に関係なく、子どもの意思で自由に会うことができるようになります。
面会交流を取り決める時期
面会交流は、離婚時だけでなく離婚後に取り決めることも可能です。
ただし、必ずしも離婚後に面会交流について話合う機会があるとは限りません。そのため、離婚する際に取り決めておくことが望ましいといえます。
面会交流について取り決める内容
面会交流について取り決める際は、主に以下のような内容について合意する必要があります。
項目 | 具体例 |
---|---|
面会交流の頻度 | 「月に1回」、「週に1回」など |
面会交流の場所 | 「公園」、「非監護親の自宅」など |
面会交流の時間 | 「第1土曜日の12時~16時」など |
宿泊の有無 | 「宿泊なし」、「夏休みに1泊2日だけ可能」など |
子どもの引き渡し方法 | 「監護親が○○駅の改札に連れて行く」など |
具体的な交流方法 | 子どもにプレゼントやお小遣いを渡すことの可否など |
学校行事への参加の可否 | 参加の可否、参加してよい学校行事など |
面会交流に関する連絡方法 | 電話・メール・LINEなどの連絡手段や、日程変更の方法など |
どのくらい詳細に取決めを行うかは、具体的な状況によっても異なります。
また、これらの内容は子どもの成長などにあわせて、あとで変更することも可能です。
詳しくは、以下のコラムでも解説していますので併せてご覧ください。
面会交流を取り決める方法
面会交流は、夫婦間の話合い、または家庭裁判所の手続である調停・審判のなかで取り決めます。
以下で詳しく見ていきましょう。
夫婦間の話合い
まずは、夫婦間で面会交流の可否やその条件について話し合います。
話し合いの場合には、子どもの福祉・利益を最優先に考えることを前提として、柔軟に条件を取り決めることが可能です。
夫婦間で合意できた場合には、あとで「言った・言わない」のトラブルに発展することを避けるためにも、合意内容を書面に残しておきましょう。
調停・審判
話合いによる解決が難しい場合には、非監護親が監護親の住所地を管轄する家庭裁判所に、「子どもの監護に関する処分(面会交流)の調停」を申し立てましょう。
面会交流の調停は、調停委員を交えて面会交流の可否やその条件(頻度、場所、日時など)について、話合いで合意を目指す手続です。調停で合意できなかった場合には自動的に審判に移行し、裁判官によって面会交流の内容が判断されます。
なお、調停や審判でスムーズな話合いや適切な判断をすることを目的に、以下のようなことが行われるケースがあります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
①家庭裁判所調査官による調査(調査官調査)
争いが激しく事件が長期化しそうなケースや、裁判所が判断に迷うケースなどでは、家庭裁判所調査官による調査が行われる場合があります。
家庭裁判所調査官とは、心理学、教育学、社会学など、人間関係の諸科学に関する知識・技法・法律知識をもとに事実の調査や環境の調整を行う人です。
たとえば、子どもの面会交流に対する意見や、面会交流が子どもや監護親に与える影響などについて、子どもの年齢や心身状態に配慮したうえで調査し、調査結果を裁判所へ報告します。
調査結果は、調停委員が当事者を説得する材料や、裁判官が審判において面会交流の可否・条件を判断する際に利用されます。
②試行的面会交流
面会交流が円滑に実施できるか不安があるケースなどには、試行的面会交流を実施することもあります。
試行的面会交流とは、テスト的に面会交流を行い、非監護親や子どもがどのような態度を取るかなど、親子の交流状況を観察することです。家庭裁判所調査官の立ち合いのもと、裁判所内の絵本や玩具が置いてある専用の部屋で行われます。
試行的面会交流が問題なく行われれば、監護親の安心感にもつながり、スムーズな調停の成立が期待できるでしょう。
ただし、通常1回しか行われないため、うまく親子のコミュニケーションを取ることができないと面会交流の実施を否定する要素にもなりかねません。試行的面会交流を行うか否かは、慎重に考えたほうがよいでしょう。
面会交流が認められない可能性があるケース
調停・審判において、裁判官が「面会交流を認めることが子どもの福祉に合致しない」と判断した場合、面会交流は認められません。
子どもの福祉に合致するかどうかは、子ども・監護親・非監護親・夫婦関係などの要素を考慮して判断されます。
具体的に、たとえば以下のようなケースでは面会交流が認められない可能性があるといえるでしょう。
- 子どもが面会交流を明確に拒否しているケース
- 子どもの生活に悪影響を及ぼすおそれがあるケース
- 子どもを連れ去られる危険性があるケース
- 非監護親に違法行為があるケース
- 別居・離婚の原因が暴力・DVであるケース
それぞれ詳しく解説します。
子どもが面会交流を明確に拒否しているケース
子どもが15歳以上などある程度の年齢に達している場合や、15歳未満でも監護親の影響を受けず自分の意見を述べられる場合、裁判所は子どもの意見を重要視する傾向があります。
そのため、子どもが明確に面会交流を拒否している場合には、面会交流が認められないケースがあります。
子どもの生活に悪影響を及ぼすおそれがあるケース
両親が離婚した影響で子どもが家庭内暴力をしたり、不登校になったりした場合、面会交流を認めることで、子どもの生活環境へ悪影響を及ぼす懸念があります。
そのため、面会交流が認められない可能性もあるでしょう。
また、実際に面会交流をしたあと、子どもが体調を崩すことや、精神的に不安定になることを繰り返すケースでは、必要に応じて一時的に面会交流を中断するなどの判断も必要になります。
子どもを連れ去られる危険性があるケース
非監護親が過去に連れ去り行為を行った場合や、連れ去りを示唆する言動をしている場合には、面会交流を行うことで子どもが連れ去られる危険性があります。
子どもが連れ去られる懸念がなくならない限りは、面会交流が認められないことが多いといえるでしょう。
非監護親に問題行為があるケース
非監護親に薬物使用の疑いがあるなど、違法行為がある場合、子どもに重大な危害が加えられるおそれがあります。
また、非監護親が監護親を不当に非難したり、監護方針に干渉したりする場合、監護親と子どもの信頼関係を壊されかねません。
このように、非監護親に問題行為があるケースでは、面会交流が認められないことがあります。
別居・離婚の原因が暴力・DVであるケース
別居や離婚に至った原因が非監護親の暴力・DVである場合、面会交流を行うことで子どもに重大な危害が加えられるおそれがあります。
また、監護親や子どもが非監護親に対して強い恐怖心を抱いている場合、監護親や子どもの精神的な負担が大きくなる可能性も高いです。
そのため、非監護親に暴力・DVがあったケースでは、面会交流が認められないことがあります。
取決めをしたあと面会交流を拒否するリスク
面会交流は、子どもの福祉・利益に寄与する限り、監護親の都合で拒否することはできません。
調停や審判で面会交流を行うことについて合意し取決めを行ったにもかかわらず、正当な理由なく面会交流の実施を拒否すると、以下のような法的手続をとられるおそれがあります。
裁判所から履行勧告を受ける
履行勧告とは、家庭裁判所から「調停や審判で取決めた内容を守りなさい」と指導を受けることです。
履行勧告に強制力はありませんが、裁判所から電話や書面で連絡がくると、プレッシャーを感じることになるでしょう。
間接強制を申し立てられる
間接強制とは、調停や審判で取決めた約束に応じるまでの間、監護親に金銭(間接強制金)の支払義務を課すことで面会交流を実施するよう促す手続です。
たとえば、裁判所から「面会交流に応じない場合には1回につき○万円を支払うように」といった命令を受けるおそれがあります。
間接強制金の金額は、約束の不履行1回につき3万円~10万円程度であることが多いようです。ただし、監護親の収入が特に高いケースでは、10万円を超えることもあります。
面会交流に応じさえすれば、間接強制金を支払う必要はありません。
慰謝料を請求されるおそれがある
正当な理由なく面会交流を拒否すると、非監護親から「子どもに会えず精神的苦痛を被った」として慰謝料を請求されるおそれがあります。
慰謝料の金額は、精神的苦痛の程度に応じて決められるため一概にいくらとはいえませんが、数十万円程度であることが多いようです。
ただし、約束してから一度も会わせていない場合など、悪質性が認められるケースでは、高額な慰謝料を請求されるおそれもあります。
慰謝料請求が認められた場合、面会交流に応じるかどうかにかかわらず、慰謝料を支払わなければなりません。
親権者変更を申し立てられる
正当な理由なく面会交流を拒否し続けると、「子どもの健全な成長に悪影響を及ぼす可能性がある」として親権者変更を申し立てられるおそれがあります。
親権者の変更は、簡単に認められるものではありません。ただし、以下のようなケースでは、親権者としてふさわしくないと判断され、親権が変更される可能性もあります。
- 子どもに対する虐待や育児放棄をしている
- 養育環境が変わった・悪化した
- 親権者の心身の健康状態が悪い など
親権者の変更が認められてしまったら、子どもと暮らすことができなくなってしまいます。
面会交流を行うときの注意点
面会交流を行う際には、以下の点に注意しましょう。
お互いに約束やルールを守る
無用なトラブルを防ぐためにも、面会交流の日時や場所、引き渡し方法など、取り決めた内容はお互いに守るようにしましょう。
また、監護親・非監護親の双方が子どもやお互いに配慮をすることが大切です。
たとえば監護親は、面会交流に対してあからさまに不満そうな態度をとったり、非監護親の悪口を言ったりすることは避けるべきでしょう。面会交流を楽しみにしている子どもが、罪悪感を持ってしまいかねません。
非監護親は、監護親の了承なしに子どもと約束をしたり、教育方針に反するような行為をしたりしないよう注意が必要です。
夫婦関係と父母関係を切り離して考える
特に子どもがまだ小さい場合は、引き渡しの際に監護親と非監護親が協力しなければなりません。そのような場面で夫婦関係のいざこざやお互いへの不満を持ちだしてしまうと、面会交流が円滑に行えなくなってしまいます。
面会交流は、あくまで子どもの福祉や利益のためのものです。夫婦関係と父母としての関係は切り離して考え、子どものためにお互いを信頼することも重要になります。
子どもの負担を考慮する
面会交流を行う際、子どもの都合を無視した日程を設定してしまうと、大きな負担になってしまいます。部活や友達との予定なども考慮し、子どもの生活を過度に制限しないようにしましょう。
また、特に小さい子どもは、肉体的にも精神的にも未熟なため、ちょっとしたことで体調を崩してしまうことも少なくありません。
面会交流ではいつもとは違う過ごし方をすることになるため、注意して子どもの様子を観察し、途中で具合が悪くなった場合などにはすぐに対処することが大切です。
面会交流について覚えておくべきポイント
面会交流は、状況に応じてさまざまな方法で行うことが考えられます。そのため、以下の点も覚えておくとよいでしょう。
祖父母も面会交流できる場合がある
面会交流権は親と子どもの権利であり、法律上、祖父母に孫との面会交流権はありません。
そのため、祖父母が孫との面会交流を求めて調停や審判を申し立てたり、法的手続をとったりすることはできません。
ただし、監護親の同意があれば、祖父母などが面会交流に同席することは可能です。
面会交流について取り決める際に、祖父母との面会交流に関するルールを定めることもできます。
第三者機関を利用して面会交流をする方法もある
父母間で日程調整が難しい場合や、子どもが連れ去られないか不安がある場合には、第三者機関を利用して面会交流を行う方法もあります。
面会交流の第三者機関とは、自治体・民間団体による円滑な面会交流の実施を支援する機関です。利用には費用がかかりますが、面会交流の調整や、子どもの引き渡し、立ち合いなどを代わりに行ってくれます。
法務省のホームページでは主な第三者機関の一覧が公表されているため、利用を考えている方は確認してみるとよいでしょう。
監護親が面会交流に付き添う場合がある
「子どもが幼いため、子どもだけで非監護親に会わせるのは不安」といった場合に、監護親が面会交流に付き添いを希望することがあります。
「監護親が面会交流に付き添うことは許さない」といった取決めがなければ、監護親が付き添うことは可能です。
とはいえ、当日になっていきなり監護親が付き添うと、「そんな話は聞いていない」とトラブルになりかねません。事前に付き添いの可否について取り決めておいたほうがよいでしょう。
まとめ
面会交流は、子どもの健やかな成長に大きな影響を及ぼすものです。父母の都合だけを押し付けてしまうと、子どもを傷つけてしまうことにもなりかねません。
そのため、子どものことを最優先に考え、面会交流の可否や実施方法を取り決めましょう。
アディーレ法律事務所では、離婚や離婚条件の取決めに関するご相談を承っております。
離婚する際、面会交流についてどのように取り決めるべきかお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
監修者情報
- 資格
- 弁護士
- 所属
- 東京弁護士会
- 出身大学
- 慶應義塾大学法学部
どのようなことに関しても,最初の一歩を踏み出すには,すこし勇気が要ります。それが法律問題であれば,なおさらです。また,法律事務所や弁護士というと,何となく近寄りがたいと感じる方も少なくないと思います。私も,弁護士になる前はそうでした。しかし,法律事務所とかかわりをもつこと,弁護士に相談することに対して,身構える必要はまったくありません。緊張や遠慮もなさらないでくださいね。「こんなことを聞いたら恥ずかしいんじゃないか」などと心配することもありません。等身大のご自分のままで大丈夫です。私も気取らずに,皆さまの問題の解決に向けて,精一杯取り組みます。