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ほぼ日刊イトイ新聞

2025-01-25

糸井重里が毎日書くエッセイのようなもの今日のダーリン

・井上尚弥が石で殴りつけたような右ストレートで、
 挑戦者のキム・イェジュン選手をノックアウトして、
 スーパーバンタム級4団体統一の世界タイトル戦が終了。
 もともと、この試合は別の選手が戦っているはずだった。
 その相手選手が負傷したために、急遽代役として
 韓国のキム・イェジュン選手がリングに上がったものだ。
 勝者の井上尚弥選手も、試合を目撃した観客席も、
 敗者であるキム選手のファイトに敬意を表していたらしい。
 ここで、あらためて試合に出られなかった
 サム・グッドマン選手のことを思い出す人は少ないだろう。
 ぼくも、もちろんのようにすっかり忘れていた。

 しかし、スポーツニュースの片隅に、
 沈黙していたグッドマン選手のことばが掲載されていた。
 じぶんを応援できないという人のことはもういい、
 俺に愛と支援を示してくれた皆のことが大好きだ、
 というようなことばに続いて、
 「『お前はもう終わりだ』と言いたい奴ら、
 お前らは間違っているぞ。
 俺はどこにも行かない、帰ってくるぞ」
 (THE ANSWER編集部の記事より)
 この「お前はもう終わりだ」ということばが、
 いい歌のサビみたいに、ぼくの耳に届いた気がした。
 あちこち、ひっきりなしに、だれかがそう言われているよ。
 言う側は特別な努力も覚悟もいらないし、
 そう言えるような機会はいつでもいくらでもある。
 人でも、企業でも、チームでも、システムでも、
 「お前はもう終わりだ」と言われながら生きている。
 笑い話のようだけれど、ぼくなんかも30代のころから、
 何百回言われてきたかわからない。
 もちろん、いまもどこかで言われているだろうと思う。
 「お前はもう終わりだ」は「これからはこいつの時代だ」
 とセットで語られることも多いが、
 後釜として語られた「こいつ」の時代がほんとに来ても、
 やがては「もう終わりだ」と言われることになっている。
 グッドマン選手は「お前はもう終わりだ」ということばを、
 今の状態ではほんとうに痛く受け止めているだろうな。
 しかし、「俺はどこにも行かない。帰ってくるぞ」と、
 大声で言える人を、ぼくは尊敬する。
 そういう人は、世界中あちこちにたくさんいるはずだ。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
ぼくは、何度も「終わり」と言われてきたことが、誇りです。


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