カテゴリ
以前の記事
2019年 05月 2019年 04月 2019年 03月 2019年 01月 2018年 11月 2018年 06月 2018年 02月 2017年 11月 2017年 10月 2017年 03月 2016年 09月 2016年 07月 2016年 04月 2016年 03月 2016年 02月 2015年 05月 2015年 04月 2015年 03月 2014年 04月 2014年 03月 2014年 02月 2013年 12月 2013年 11月 2013年 09月 2013年 08月 2013年 07月 2013年 06月 2013年 05月 2013年 04月 2013年 02月 2012年 10月 2012年 09月 2012年 08月 2012年 06月 2012年 05月 2012年 04月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 09月 2011年 08月 2011年 07月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 12月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 09月 2008年 08月 2008年 07月 2008年 06月 2008年 05月 2008年 04月 2008年 03月 2008年 02月 2008年 01月 2007年 12月 2007年 11月 2007年 10月 2007年 09月 2007年 08月 2007年 06月 2007年 01月 2006年 12月 検索
その他のジャンル
|
2018年 02月 17日
1. 前回扱った三浦瑠麗の発言だが、その後、下のツイッターまとめを知った。ネットで検索すると、三浦の発言は佐藤優の発言が元ネタではないか、という指摘も多い。 このまとめで言及されている、『週刊金曜日』2017年4月28日・5月5日合併号(第1134号)に掲載された記事、<文化放送「くにまるジャパン極」での語りとデマの拡散――「朝鮮半島有事」をめぐる発言の真意を佐藤優氏に聞く>で、『週刊金曜日』取材班は以下のように述べている(強調は引用者、以下同じ。なお、「(佐藤)」は引用者による補足)。 <ネットでは、北朝鮮の平壌放送が最近、乱数表の読み上げを再開したことについて、日本で「テロ」を起こすよう指令を送っているのではないかと懸念する声や、「在○に気をつけろ」など在日朝鮮人が「テロ」を起こすかのように煽るデマまで出回っている。 本誌取材班が調べると、乱数表読み上げの話は、佐藤優氏が文化放送「くにまるジャパン極」の4月7日放送で話した内容がソースとされていることがわかった。在日へのデマも、佐藤氏の発言がソースとして使われて出回っているものもある。 佐藤氏は同放送で、①米国が北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長を「中立化」(首狩りの意)をした場合、人の判断に拠らない「自動装置」が動き出し、防衛省のある東京・市ヶ谷と沖縄の嘉手納基地、青森の三沢基地が北朝鮮からミサイルで「迎撃」される、②スリーパーとして普段は見えない形で日本社会に潜んでいる工作員は、乱数表から何らかの指令を受け取って「テロ」を起こし、北朝鮮と接触している可能性が高いIS(「イスラム国」)がその犯行声明を出すかもしれない、③「テロ」など想定外のことがいろいろ出てくるから、日本政府は共謀罪の制定を急いでいる、④いま第2次世界大戦後、一番緊張が高まっている――などと話した。 なぜこのような「想定」となるかが不明であったため、取材班は真意を確かめるべく、4月17日にインタビューした。> 確かに、「スリーパー」という用語も含めて、三浦の発言とそっくりである。だが、用語だけではない。 <――ソースはどこでしょうか。 (佐藤)教えられません。それはお互いそうでしょう。>(注・北朝鮮とISの結びつきの可能性に関して) <――これまでの話のソースで、具体的に名前を明かせるところは? (佐藤)すでにさっきも答えました。言えないと。同じことを複数回聞かれるのは不快です。>(注・上の①に関して) と、ソースを挙げず、テロを起こすとする根拠が推定でしかない点も共通している。佐藤は、『週刊金曜日』取材班の質問<日本国内でも「テロ」が起きる可能性が高いと見ているということと、乱数表の読み上げによって日本国内のスリーパーが動く可能性があるという話はつなげて考えてよいのでしょうか。>に対しては、<(佐藤)北朝鮮の立場になって考えれば、日米合同の侵略が近づいているわけですよね。その侵略に対して、ありとあらゆる手段を通じて防衛していくというのは、国家の論理として当然なんですよ。>という回答しか出していない。これに関しては、「インテリジェンス筋」の情報ですらない。 むしろ、三浦の方が言論人の姿勢としてはまだマシなのである。三浦は発言の後で一応ソースを示そうとして、それが「デイリーメール」記事やら迫撃砲記事やらであったから、自爆したわけである。佐藤はソースを示そうという気すらない。 また、佐藤は、このインタビューの中で、当時争点となっていた、「共謀罪」法の制定の必要性を主張している。以下のやりとりを見てみよう。 <――ラジオで共謀罪について、「『テロ』を起こしそうな思想のやつは早く隔離しちゃえというものですが、そういう方法を採るしかない」と話していましたね。 (佐藤)当局はそれを意図しているでしょうね。そのためには、通信傍受の大幅な拡大と予防拘禁。いまでも通信傍受法は立ち会いが通信会社から警察になっていますから。 ――ご自身は、共謀罪の成立についてどのように考えていますか。 (佐藤)共謀罪の成立について、私はやむを得ないと思っています。現在、日本国内でも明確な「テロ」の脅威がある。いままでの法制度で対応できるのか。捜査当局も外交当局も大変な疑問を持っています。> 実際の「共謀罪」法の政府案は予防拘禁を認めているわけではないので、これは佐藤独自の見解と言うべきだろう。 佐藤は、これまた三浦と同じく、自分の発言は在日朝鮮人を意図してはいないかのように(三浦と同じく、後付けで)このインタビューでは述べているが、これはあくまでも『週刊金曜日』読者向けとみた方がよいだろう。現に佐藤自身が、朝鮮総連系の団体に対する「国策捜査」を日本で最も熱心に主張していた人物である。主張の一端は、以下を参照のこと。 私はこの2010年の記事で、<「拉致問題」の解決、「国益」のためには在日朝鮮人に対して差別的に扱ってもよいという論理の鼓吹において、近年、佐藤は最も貢献した人物だと言えると思われる>と書いたが、そのような人物の言う「スリーパー」に、在日朝鮮人が欠けているはずがない。私は10年以上前に書いた「<佐藤優現象>批判」という文章でも、佐藤の主張に関して、<「国益」の論理の下、在日朝鮮人の「人権」は考慮すらされてない>と述べているが、佐藤の主張は何も変わっていないどころか、エスカレートしていると言える。 なお、三浦が、「私は番組中、在日コリアンがテロリストだなんて言っていません。逆にそういう見方を思いついてしまう人こそ差別主義者だと思います。」などと、小学生レベルの逆ギレで、われわれを笑わせてくれたことは記憶に新しいが、この「逆ギレ」という点でも佐藤と似ている。佐藤は上記のインタビューで、『週刊金曜日』取材班の<在日の人へのヘイトが強まりかねない現状をどう見ていますか。>という質問に対する答えの中で、以下のように発言している。 <それから、俺だってやられているうちの一人だよ。沖縄については。ちょっと率直におうかがいしますが、今後もこのような国際情勢の分析があったときに、『週刊金曜日』で私は連載していますから、たとえばラジオで言ったことと同じようなテーマを扱う可能性はあるわけですよね。そうすると、あなたの考えでは、そのようなことについては、発言は抑制した方がいいということですか?> このような、自分もマイノリティだ、という弁明は、人権に関する発言・行動が批判されている人物の咄嗟の発言として、極めてありふれたものである。もちろん「沖縄人」であることと当該発言は何の関係もない。 2. テレビでの三浦の当該発言の特徴は、米軍の北朝鮮への軍事的介入には反対、という主張と同時に行われている点である。つまり、今の日本のテレビでは「左」的となる主張とセットで、排外主義的な主張が打ち出されているのである。 このような、「右」と「左」を同時に打ち出すことで一見「中立」という「芸」は、周知のように佐藤がその開拓者であり大家であるが、近年は佐藤に限らず、メディアでもネットでも飽きるほど見られる言説である。三浦としても、発言内容を思いついた際に、「一丁あがり!」という感じだったのではないか。 佐藤が「スリーパー」を言い出したのも、「オール沖縄」への加担で「右」から叩かれつつある、という事情が背景にあるように思う。三浦の例からも明らかだが、「右」「左」の中立芸で割りを食うのは、在日朝鮮人である。それを攻撃するのが「右」を演出し、「右」からの批判を抑えるためには一番効果的だからである。それをやればいくらでも「左」に行ける。だから、右派論客よりも、三浦や佐藤のような「右」「左」の中立芸の人物こそが、在日朝鮮人に関して排外主義的な主張を行っているのは、決して偶然ではない。 ところで、『リテラ』の記事の信憑性はさておき、以下の見解は正しいだろう。 <三浦氏の場合は、ネトウヨにしか支持者のいない長尾や青山と違って“知的で中立の立場から物事を俯瞰している国際政治学者”というイメージがあるからもっとタチが悪い。まったく根拠がない「在日=スリーパーセル」という差別的デマがネトウヨだけでなくもっと広い層にまで広がっていく可能性があるのだ。> 同じ論理で、<佐藤優現象>により、<「在日=スリーパーセル」という差別的デマがネトウヨだけでなくもっと広い層にまで広がっていく>と言えよう。 佐藤はソースを示さないのだから、本来は、デマを流しているとして無視されても仕方ないのである。人が佐藤の主張に説得力を感じるとすれば、多くの場合、それは佐藤が著名な書き手であり、また、「左」が佐藤を使うことによって、「左」「右」の両方から一目置かれるほどすごい人、という表象が存在するからである。だから、「左」のメディアの人物こそが、佐藤の提唱しているような排外主義の拡散に関して、大きな責任がある。 佐藤が書店業界の全面的バックアップで売れっ子の書き手となり、同じくリベラル系のメディアが使う池上彰がテレビでネット右翼のような主張を視聴者に「啓蒙」するといった状況で、そういった現象を批判せずに「日本会議」やら「ネトウヨ」やら「産経」を叩くだけ、であれば何の意味もない。 なお、佐藤の「情報」の信憑性に関して、シオニズム研究者の早尾貴紀氏は、以下のように記している。 <ハマースの指導者アフマド・ヤースィーンは、ガザの公道でイスラエル軍の攻撃ヘリのミサイルによって周囲の通行人10人もろとも公然と惨殺されたのだが、佐藤優は、密室で最先端のマイクロ兵器で傷も残さずひっそり暗殺したと主張してる。こんな嘘つきの素人にテロを語れるか?> ここまで言われているのであるから、この件に関して佐藤や、佐藤を使い続けるメディアは反論すべきであろう。 前回書いたように、今回の三浦の発言は、<佐藤優現象>の帰結である。しかし、佐藤を使うべきでないとなると、これまで使ってきた編集者・編集幹部の責任が問われることになるかもしれない。三浦の件をほじくると、佐藤に行きつくことは少し検索すれば明らかであるが、そのせいか、佐藤優と親しい書き手や出版関係者のフェイスブックやツイッターを見ると、今回、三浦の発言についてあまり言及されていないような印象を受ける。 三浦の発言は、これを批判しなくて何を批判するのか、という問題だと思うのだが、この種の「忖度」により批判が弱められていると思う。前回記事の末尾にも書いたが、三浦の発言だけではなく、その構造全体が批判されなければならないだろう。 三浦の発言やそれを使い続けるメディアへの批判は重要であるが、同時に、佐藤の発言と、このような主張を展開している三浦・佐藤を使い続けるリベラル・左派メディアも問われるべきであろう。それをしない論者は、リベラル・左派メディアに「忖度」していると見なされても仕方ないのではないか。
by kollwitz2000
| 2018-02-17 00:00
| 佐藤優・<佐藤優現象>
|
ファン申請 |
||