レコード評議会

お気に入りのレコードについてのあれこれ

Magic Bus / The Who【UK盤(モノラル)、US盤(モノラル)】

前回、変な小説「鑑識レコード倶楽部」に登場するザ・フーの 変な曲 "ハッピー・ジャック"を採り上げた。

 

と言うか、記事の半分は「鑑識レコード倶楽部」についてのあれこれだった訳だが、いやはや超マニアックな小説で、繰り返して言うが本当に 変な小説 だ( … 面白いけど)。

 

物語の中で様々な曲が登場するのだが、曲名だけしか書かれていない(歌詞の一部だけの場合もある)。アーティスト名は一切出てこない。読者が分かっている前提で、と言うか分かっていようがいまいが関係なく、話が進行して行く。

 

例えば、こんな感じだ。

「鑑識レコード倶楽部」の分派である「認識レコード倶楽部」の活動状況を調査するため、主人公(俺)が送り込まれることになり、どのレコードを持って行こうか思案しているくだり。

 

 これで解散、俺はみんなに頑張れよと言われ、家に向かって歩き出した。暗い街路を歩きながら、認識レコード倶楽部に何を持っていくかをつらつら考えた。もちろん候補はいくらでも、すごく広い範囲から思いつく。俺はあらためて任務の大きさを実感した。たとえば、〈Sloop John B.〉と〈Johnny  B. Goode〉との2つだったらどうやって選ぶのか。〈Friday on My Mind〉と〈Friday I'm in Love〉とならどうか、〈Last Train to Clarksville〉と〈Magic Bus〉なら。決めるなんて不可能だ。家に着いたころにはもう頭がクラクラしてきた。俺は疲れて神経もたかぶり、どさっとベッドに倒れ込んで、いったいなんでわざわざこんなことやってるんだという気になってきた。

 

 

アーティスト名が出てこないが、分かる人なら分かるのだろう。

ちなみに私の場合、半分は分かったが、半分は知らなかった。調べてみて、そうなんだ、と。

 

Sloop John B.:ビーチ・ボーイズ(The Beach Boys)

Johnny  B. Goode:チャック・ベリー(Chuck Berry)

 

Friday on My Mind:イージービーツ(The Easybeats)

Friday I'm in Love:キュアー(The Cure)

 

Last Train to Clarksville:モンキーズ(The Monkees)

Magic Bus:ザ・フー(The Who)

 

 

ということで、今回の「レコード評議会」はこれ。

 

 

The Who

Magic Bus(7" Single)

UK盤(1968年)モノラル

Track Record

604024

SideA:1  604024 A ▽ 1  2

SideB:1  604024 B ▽ 1  2


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A. Magic Bus

B. Dr Jekyll & Mr. Hyde

 

 

ザ・フーの"マジック・バス"、そのUKシングル盤。

 

「鑑識レコード倶楽部」の舞台はイギリスなので、主人公(俺)が持っている"マジック・バス"もこのUKシングル盤だろう。

 

 

ボ・ディドリー・ビートまたはジャングル・ビートと呼ばれるリズムによる曲で、ピートいわく「ザ・フーの中で演奏していて一番楽しい曲」なのだとか。一方で、ジョンは「ベースが単調なので大嫌い」なのだという。

 

歌詞は「彼の娘のところに向かう魔法のバス、魔法のバスは最高だ、売ってくれない?、いくらでも払うよ(そりゃムリだ!)、そんなこと言わないでよ、欲しいんだよ、魔法のバス」といった内容で、はっきり言ってアホな歌詞だ。

 

ライブでも頻繁に演奏されており、ザ・フーの中でも有名な部類の曲なのだが、カッコいい曲と言うよりはコミカルな曲と言える。

 

そう言えばこの曲を知ったのは学生の頃だが、曲名から「これってマジカル・ミステリー・ツアーのパクリか?」とも思ったものだ。

 

まあ、"ハッピー・ジャック"と同じくらい 変な曲 だと思う。もっと言ってしまうと、下らない曲 だ。

 

英国人はこの手の曲が好きなのだろうか?

 

 

と、あれこれケチを付けたみたいになってしまっているが、実はこの曲、嫌いでは無い。

と言うか、結構好きである。

 

繰り返されるボ・ディドリー・ビートに中毒性があるのか、聴いていて気持ち良い。

加えて、曲の後半からキースの爆発する様なドラムが凄い。

 

 

で、このUKシングル盤なのだが、ラウドなカッティングで音が大きく、音圧も高い。押し出し感の強い音だ。

 

ボ・ディドリー・ビートを刻むアコギの音が特に気持ち良く、ずっと聴いていられる。

そして後半、キースのドラムが爆発する辺りからは爆音・轟音と言って良いだろう。

 

変な曲、下らない曲 なのに、楽しく聴けてしまう。

 

 

ということで、"マジック・バス"はもう1枚持っている。

 

 

The Who

Magic Bus(7" Single)

US盤(1968年)モノラル

Decca

32362

SideA:45  120562  10   2

SideB:45  120563  11   2


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A. Magic Bus

B. Someone's Coming

 

 

USシングル盤だ。

 

レーベルは、UK盤がTrack Recordなのに対し、US盤はDecca(米Decca)。

 

B面は、UK盤が"Dr Jekyll & Mr. Hyde(ジキル博士とハイド氏)"なのに対し、US盤は"Someone's Coming"(どちらもジョンの曲)。

 

で、当然に音も違う。

 

UK盤は音圧が高く、押し出し感の強い音なのに対し、US盤はパリッとしていて、エッジが立った音だ。

 

それぞれ特徴があって、どちらも良い音だと思う。

どちらか1枚を選ぶなら、強いて言えば音圧がより高いUK盤かな?

 

 

 

ちなみに、UK盤もUS盤もピクチャー・スリーヴは無いが、Discogsによると欧州と日本ではこんなのがあるのだとか。

 

ドイツ盤、スペイン盤


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ノルウェー盤、日本盤


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フランス盤

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個人的にはフランス盤のデザインが一番好みだ。

だから何?という話だが…

 

 

 

と、「鑑識レコード倶楽部」をきっかけに"マジック・バス"についてあれこれ書いてきたが、ふと思った。

 

「いったいなんでわざわざこんなことやってるんだという気になってきた」(しかも変な曲、下らない曲 なのに…)。

 

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