INTERVIEW2024.12.23

教育

鉱石を象ったイルミネーションの輝きを -イルミネーションプロジェクト2024

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  • 京都芸術大学 広報課

足先が冷え始める12月の夜、京都・白川通りに面する京都芸術大学の大階段では、夜空をきらびやかに照らすイルミネーションが点灯されました。

今年で17年目を迎える本プロジェクトの点灯式は12月13日(金)18時より、学科を横断した1年生30名、2年生12名、MS(マネジメント・スチューデント)2名の計44名によって開催されました。
本記事ではイルミネーション制作に込められた想いを、大盛況となった点灯式の様子とともにお届けします!
*MS:先生のサポートをしたり、受講している学生が円滑に制作できるようにサポートしたりする役割の学生のこと。


『MINE』に秘められた想い

2005年から始まった「イルミネーションプロジェクト」(未実装の年度も有り)。学生が実際の社会のなかで学ぶことで、芸術による社会貢献ができる人材の育成を目的として行われているリアルワークプロジェクト(社会実装プロジェクト)のひとつです。

毎年、学生たちを悩ませるのが、イルミネーションの背骨となるタイトルです。今年のタイトルとして選ばれたのは「私のもの」「鉱石」といった意味をもつ『MINE』でした。
イルミネーションの「輝き」から、人々の過去の思い出や今の日常、日々の努力こそが、あなたの内なる輝きであるということに気付いて欲しいという思いがこめられています。
また、「鉱石」とは削り磨かれ形を整える宝石の前段階。社会に出る前、大学に通う学生を「鉱石」に見立てて、学生ひとりひとりの成長を示唆しているようです。

鉱石を模して制作されたオブジェに学生・教師たちの視線が続々と注がれます。今か今かと皆が待ちわびるイルミネーションの点灯式。司会者によりタイトル、コンセプトについて説明がされるといよいよ、「3、2、1……」と、カウントダウンが行われて、集まった学生たちの声も重なりました。
感嘆の声とシャッター音が一斉に広がる大階段。大学前の白川通りでも立ち止まる方々が散見されて、向かいのマンションからも点灯にわきたつ様子がみられました。

点灯式が終わると、その夜限定のフード提供イベントの始まりです!
新型コロナウイルス感染症対策が明けた昨年から復活して、今年で2年連続の開催となりました。
大階段で写真を撮っていた人たちも、ぞくぞくと屋台のほうへ向かっています。
屋台で用意されていたのは身体を温めてくれる「紅茶」と「飴玉」です。
鉱石の硬さを連想させる飴玉は味にもバリエーションがあり、飴玉を封入した袋にはテーマをイメージしたステッカーがキラキラとお宝のように隠れていました。その夜にだけ屋台に眠るレア鉱石のようでした。

プロジェクトに対峙して

プロジェクトの期間は約3か月。3か月もあれば充分だと思われるかもしれませんが、むしろ時間が足りないほどだったといいます。
最初の1、2か月で学生たちはテーマについての研究や、装飾についてのワークショップなどをこなします。また、並行してOB・OGや芸術教養センターに向けてのプレゼンの準備をします。さらには毎年最大の壁とされるクライアント、瓜生山学園理事長へのプレゼンを乗り越える必要があります。

プロジェクトの担当教員である森岡厚次先生(以下:森岡先生)によると、外部の方やクライアントと関わることには、個人制作や他のプロジェクトとは異なる難しさがあるそうです。けれども、クライアントの依頼を受けて制作することは、いずれ実施される学科プロジェクトの練習になるとも。

1年や2年では大学内での制作がメインですが、学年が上がるにつれて本格的な学外でのプロジェクトを企画することもあります。
イルミネーションのようなオブジェの制作でなくとも、学外の方と関わるとなると、企画を立案・制作していくうえでの難しさは格段に跳ねあがります。そうしたときにここで培った経験が活かされるようにと、未来をみすえた取り組みでもあるのです。

写真右 森岡厚次先生

プレゼンを突破すると始まる制作では、イルミネーションや電飾を制作・設置する「制作班」、ポスターやステッカーを担当する「広報班」、SNSを動かす「SNS・映像班」、点灯式当日のイベントなど企画を考える「運営班」などに分かれて活動します。

「制作班」をつとめた環境デザイン学科1年の大山真優さんは、はじめて触れる機械や素材への理解が追いつかないこと、オブジェの種類ごとに変化する素材の扱い方への対応、奥行きのある表現の模索などに苦労したと語ります。
一方、「鉱石」というコンセプトを追求することで、例年にはなかった変色するライトを導入することを決めたそうです。その他にも、ライトやオブジェといったイルミネーションの花形だけでなく、反射するステンレスを柱に取りつけるといった、細かい工夫を随所に施したと語ります。

制作班 大山さん

メインポスターや、叡山電鉄の茶山・京都芸術大学駅に掲示するポスターを制作したのは、「広報班」の田中寿々寧さん(情報デザイン学科・ゲームクリエイションコース1年)。ポスターでは優しい雰囲気を表現したかったと話します。
「自分の輝きに気づいて欲しい、というテーマには「願い」が詰まっていると感じたので、鉱石の輝きが脳裏に残って忘れられないようなポスターを描きました。その上で優しい色合いや穏やかさを意識しています」

制作を担当した田中さんと茶山・京都芸術大学駅に掲出されたポスター

また、昨年度よりプロジェクトでは「SNS・映像班」によってコンセプトムービーが制作されます。今年は、学生生活の中で悩みを抱えるひとりに焦点を当て、その悩みに気づき、寄りそってくれる人がいることをイルミネーション制作を通して表現しています。
今年は例年の倍である約2分の動画が仕上がりました。動画が長すぎると飽きられて視聴をやめてしまうのでは、という懸念もあったようですが、担当者の三村ことみさん(舞台芸術学科・舞台デザインコース1年)は、それでも発表したといいます。

「大学に通う人で自分の個性に自信を持てなかったり、見失ったりした人たちに向きあって、ホントは輝いているんだよってことを伝えたかった。そのことを伝えるために編集していくと、2分になってしまったんです」

コンセプトムービーを制作担当した三村さん
映像制作の様子

制作された映像はこちらから見ることができます。
https://x.com/kua_illumipj/status/1864631047289462822

 

来年に向けての総括

イルミネーションプロジェクトに年々注目度が高まっていると感じる森岡先生。改めて本学におけるプロジェクトの意義についてお話しいただきました。

「学科プロジェクトに繋がる一歩手前になれればと思います。
先述しましたが、これから学生は本格的に学外との連携が増えて、発信する規模も大きくなっていきます。そのためにも、魅せる力を身につけたり、クライアントの存在を立ち止まって考えたりできる場にしたいですね。
学外との連携においては、出資元であるクライアントから求められるモノを提供しなくちゃならない。同時にそれに応えながらも、自分の表現をどれだけ出していくかの判断力も求められます。
だからこそ、社会実装プロジェクトのひとつとして、参加する彼、彼女らが大学で学び成長するために少しでも挑戦することができる場にしたいです」


最後に、学生と先生たちの橋渡しとなってくれた、MSの2人。井上広叡さん(情報デザイン学科・クロステックデザインコース2年)と、是洞樹里さん(舞台芸術学科演技・演出コース2年)に来年に向けての言葉をいただきました。

左から 井上さん、是洞さん

井上さん「非常に短い期間のプロジェクトですけど、凝縮されたアート・デザイン活動になるので頑張ってほしいですね」

是洞さん「3か月間と期間が短く、制作に関しては2、3週間しかないので、学生の行動次第で成長が決まります。その経験を血肉にするためにも、ガッツをもって取り組んでほしいです」

取材にご協力いただいた5名の学生の「MINE」ポーズ

イルミネーションは12月25日(水)まで、毎日18時から20時の期間で点灯していますので、ぜひお立ち寄りください!

(文:文芸表現学科 轟木天大)

 

 

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