京都芸術大学 文芸表現学科 社会実装科目「文芸と社会Ⅱ」は、学生が視て経験した活動や作品をWebマガジン「瓜生通信」に大学広報記事として執筆するエディター・ライターの授業です。
本授業を受講した学生による記事を「文芸表現学科の学生が届ける瓜生通信」と題し、みなさまにお届けします。
(構成・執筆:文芸表現学科2年生鈴木万葉)
「ボーっと部。」とは
「ボーっと部。」とは、散歩が好きな京都芸術大学 文芸表現学科の学生5人が集まってできたグループです。
主に制作に行き詰まったときにアイディアを探しに、ボーっと探索に出かけています。
同じ場所に立ち寄っても、それぞれ見る視点が違う!
そんな芸大生らしい、フィールドワークを、【ボーっと部。】では取り上げていきます。
日常に漂う匂いたち
突然ですが皆さん、日常に漂う香りについて気になったことはありませんか?
今年度は夏が非常に長く、制汗剤の香りが10月までいたるところから漂ってきた気がします。
そんな夏の香りを残しつつ、秋の香りも漂い始めています。例えば、甘い焼き芋の香りや、鍋で具材が煮込まれている香り。
年中漂う、大学の学食から流れてくる食欲をそそる香り。
日常には多くの香りが漂っています。
そう、何を隠そう私は、生粋の香りフェチです。
いろんな場所に足を運ぶたび、まずその場の香りを堪能する癖があります。
例えば、雨の日の駐車場でタイヤのゴムの香りを嗅いだり、わざわざ遠回りして夕ご飯時の住宅地でご飯の香りを嗅いだり。日常でふとかおる香りは格別です!
今回は、そんな私の視点から見た円山公園をお伝えしようと思います。
(※この記事は、円山公園の方々のご協力のもと、10月某日に取材執筆を行いました)
【円山公園とは】
京都河原町から徒歩およそ15分。京都にある神社の中でも歴史が古く、重要とされている22社の1社である八坂神社が正面で迎えてくれます。
年間を通して、様々な季節の植物が開花し、日々多くの人が訪れます。
ベンチでまったり金木犀
早速ですが皆さんは、金木犀の香りをご存じでしょうか。金木犀とは、9月末~10月に咲く季節の花で甘い香りが特徴的な常緑高木です。オレンジ色の小さな星の形をした花が特徴的です。
しかし、今年は例年よりも気温が高いため、開花の時期が遅れたようでした。取材に行った円山公園の開花も遅れていたようで、あま~い香りがあたりに漂っていました。
円山公園にはいたるところに、金木犀が植えられています。あちこちから甘い香りが漂ってきて、幸せな気持ちになれます!
また、金木犀の数と同じくらいベンチが多く設置されています。ベンチでゆったり、金木犀の香りを感じるのも1つの楽しみ方かもしれません。
円山公園には、他にも枝垂れ桜や、藤など、季節によって開花する花や木が植えられています。どの時期に行っても、その季節の香りを楽しめると思います。
ひょうたん池は上流と下流で香りが違う!?
金木犀の香りを楽しんだら、次はひょうたん池にそって歩きます。
ひょうたん池は、名前の通り池がひょうたんの形をしており、美しい鯉や鴨のカップルが泳いでいます。
その上流にはゆっくりと流れる水草が豊富に生えた青々とした姿の小川があり、心が爽やかになる香りが立ち込めています。生えている水草も、どうやら上流と下流では違うようです。
そして近くには、甘そうなビワが実っていました。ずっしりとしたビワがこんなにもたくさん! 残念ながら地面には落ちていませんでしたので、地上からビワの香りを嗅ぐことにしました。それでも十分、ビワの香りを堪能できます!
池の爽やかな香りと、ビワの甘酸っぱそうな香りがとてもマッチし、自然を贅沢に味わえるスポットです。
下流には水草が少なく、鯉や鴨たちが悠々と泳いでいました。下流は、上流の爽やかな香りと比べ、やや香りが薄いです。
ぜひ、皆さんも上流と下流の香り比べをしてみてくださいね!
不思議なトイレと金木犀のつながり
上記で紹介したように、円山公園にはいたるところに金木犀が植えられています。そのあま~い香りに誘われてボーっと歩いているとおやおや!? こんなところにトイレがあるではありませんか。
金木犀の陰に隠れたトイレを発見し「こんなところにトイレがあったなんて!」と、驚きました。金木犀には消臭の役割があるようで、香りに敏感な私をもってしても、トイレの香りをかぎ分けることはできませんでした。
また、円山公園には変わったトイレがあります。映画の舞台装置をそのまま持ってきたようなおしゃれなつくりです。中もとても清潔です!
香り探検家になりつつ、こういったおしゃれなつくりの建物を探しながら散策できるのも、円山公園の楽しみ方の1つだと思います。
秋の空に鳥の香り
香りにばかり気をとられていると、突然、奥の山から一斉に烏が飛び立ちました。その数、百羽は越えるのではないでしょうか?
秋の高い空に、点々とひじきのように飛んでいる烏の姿。烏の鳴き声とともに、鳥の香りがあたりに広がりました。動物の香りは独特です。
ですがまだ、私は香りだけでどんな動物かまで判断することはできません!
しばらくすると、烏たちはどこかへ行ってしまいました。
え! 今生えてきたの!?
散策を始めたのは午後1時すぎですが、あっという間に空は夕焼け色に。
昼間に来たときよりも、草花や、池の香りがうんと濃くなった気がします。
その証拠に、きたときには気づかなかったキノコを発見しました。どこかで、キノコご飯を炊いているんだろうか……と、香りに誘われ歩いていると、大量のキノコたちが。
近づいてみると、恐るべき強烈な香り! キノコのカサは1つ1つが大きく立派で、キノコの香りがにじみ出ています。
なぜ、昼間は気づかなかったのかとても不思議です。キノコには、夕方になると香りを放つ性質があるのでしょうか?
良い香りですが何のキノコかはわからなかったので、くれぐれも皆さん取って食べないように!
心に残った風景を詩にのせて
文芸表現学科では、詩を書くワークショップがあります。そのワークショップ内では、今回のように外に出ては気づいたことや、心ときめいた瞬間を詩で表現します。
私は普段、詩を書きません。しかし、私は京都芸術大学に入学したてのとき、この授業を受講し、詩を書く楽しさに触れました。
詩とは、自然の中で得た感動や衝撃を言葉に書き起こしてみたい! そんな衝動で書くものだと、私は考えます。
私は、今回の円山公園でボーっとを実行し、たくさんの香りに触れました。
その中でも強烈に印象に残ったキノコの香りを詩で書き表したい! という衝動から詩に書き表しました。
キノコご飯の香りを探して
ぐるぐる回った帰り道
同じ道を歩いても 見える景色は変わってく
空にはひじきカラスの群れ
ひょうたん池には鴨カップル
静かに泳ぐ金の鯉
ふと足を止め足もとに
漂うキノコご飯の香り
昼間にいたはずの彼らはひっそりと
今起床して 背伸びして
ふりまく香りは風に乗り
私の元までやってくる
一歩近づけば癖になり
二歩近づけばくらくらと
三歩目は危険な香りで威嚇して
一歩下がって嗅いで見る
うん、この距離が一番いい
キノコも群れで踊ってる
匂いを風に運ばせて 大きなカサを揺らしてた
今回の散策を終えて
今回は秋の円山公園にお邪魔しました。実りの秋とはいいますが、本当に多くの香りに包まれ幸せな気分になりました。
とても驚いたのは、これだけ多くの香りが漂っているのに、香り同士が打ち消し合わない点です。ひょうたん池からはひょうたん池の香り、金木犀の香り、キノコの香り。どれも強烈ですが、互いの香りを尊重するように調和していました。
他のチームメンバーは、私とは異なった視点から円山公園を視ています。そちらも是非、チェックしてみてくださいね。
皆さんもぜひ、円山公園に行ってボーっとを実行してみてください!
私は円山公園から帰る道、また香りを探してぶらりと散策を続行したいと思います! どこかで、本当にキノコご飯を炊いていないか探してみますね。
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