SPOT読者の皆さん、はじめまして。
愛知出身大阪在住ライターのLonow(ろなう)と申します。
今回は私の大好きな大阪府の街、箕面(みのお)市をご紹介させていただきます。
箕面市は「大阪の奥座敷」とも称され、日本の滝百選にも選ばれている箕面大滝(写真)をはじめ、勝尾寺、箕面温泉などが代表的な観光スポットです。
大阪市中心部からもたったの1時間ほどで遊びに行けるアクセス良好な場所で、春はお花見、夏はホタル観賞、秋の紅葉狩りと四季折々の自然を楽しめることも人気の理由。
また、箕面市は住宅地としても人気の街です。このように段々畑のように家が並び、関西エリアの住みよい町ランキングでは常に上位にランクイン。有名な芸能人やタレントの方の中にも、箕面市に自宅を持たれていることを公言されている方が多数います。
2023年度には北大阪急行が市内まで延伸開業予定と明るいニュースも多く、今後ますます注目を集めていく街になっていくこと間違いなしの箕面市には解決しなければならない大きな問題がありました。
箕面のローマ字表記、パターンありすぎ問題
それが「箕面のローマ字表記、パターンありすぎ問題」です
例えばこちらの写真、一見ただの交差点を撮影しただけの写真ですが、ある違和感がございます。
四角で囲ったところをご覧ください。
箕面市民の生活を日々支えている市役所の看板には「MINOH」と大きく表記されているものの、
市内各所を走るみのお自動車教習所の車両には「Minoo」と大きく車体にラッピングがされています。
更に目線を上にあげると、交差点の信号に設置されている地名看板には「Mino」と書かれているではありませんか!
このように現状、大阪府箕面市には、「MINOH」「MINOO」「MINO」と3つの異なるローマ字表記が存在してしまっているのです。
グローバル化が日々加速している現代社会において、このままではこの「箕面」という地名を世界各地の方に知ってもらう際に障害になってしまうのでは……!? そもそもどれがメジャーな「箕面」のローマ字表記なのでしょうか……?
これは解決しなければなりません。早速、調査に乗り出しました。
全力調査!真夏の「箕面」大捜索大作戦
まずは問題の実態を把握すべく、徒歩と自転車を駆使して箕面市内各地にある「箕面」の表記を確認しに行きます。
例えば、こちらのシネマコンプレックスの看板には「MINOH」と書かれています。
調査方法はこのように極めて単純に、英語を用いて「箕面」を表記している施設がどのローマ字表記を採用しているかを撮影して確認します。
また、信号や地名の看板ばかり撮影してしまうと偏りが大きくなってしまうので、今回の調査では可能な限り商業施設やマンションの看板を中心に「移動する→探す→撮影する」を繰り返し行っていきます。
「みのお」の語呂合わせで「300」個集めようかなと思いましたが、計算せずに割合も出したいので、キリの良い100か所探しましょう。
移動する、探す、撮影する。普段の感覚では、駅前や国道沿いのお店の看板にはだいたい店名や地名が表記されている気がしていたのですが、実際にこうして調査してみると日本語表記のみのお店がなんとまあ多いこと。
ついでに、歩き続けていく中で「外車の販売店や病院には地名の英語表記がありがち」というコツも掴みました。地名の英語表記看板をお探しの方は是非参考にしてください。
移動する……探す……ふぅ、撮影する……。コツを生かしながら、箕面市内の主要道や商店街を練り歩くも60か所を撮影したあたりから全くと言ってよいほど看板が見つからないスランプ状態に陥ってしまいました。このままでは100か所を集め終わるのは厳しいと判断し、調査範囲をさらに広げることにしました。
ゼェゼェ……移動する…………サ、探す……ハァハァ、撮影する……ほとんどの主要道路を歩ききってしまったため、終盤は「箕面」の看板を求めて細い路地までフラフラと歩きながら捜索を行っていました。不審者に間違えられないように、モンスターを探すスマホゲームをしている人に擬態しながら「箕面」の英語表記を探し歩きます。
これを繰り返すこと3日間、合計移動時間がおよそ12時間を超えたところでやっと100か所を探し集めることに成功しました。地図アプリのロケーション履歴を見ると、箕面市内の総移動距離は60kmを超えていました。首都圏の方に分かりやすくお伝えすると、これは東京駅から横須賀中央駅までの距離とほぼ同じくらいの移動距離です。
これでやっと100か所なので、もしあの時本当に300か所集めようとしていたら……恐ろしい話です。
世界初公開!箕面ローマ字表記比率
自宅に戻り、撮った写真を見返して各施設の看板や業種業態を書き起こし、カウントを行いました。
それでは世界初公開の「箕面のローマ字表記の比率」をご覧ください。
ダラララララララララ(ドラムロール)
ジャン!
やはり箕面のローマ字表記はバラツキがあり、その比率はおおよそ「6:3:1」という割合になっていました。この「6:3:1」という数字にも何かしら意味があるのではないかと調べてみると、どうやらデザインの配色に使うと見やすくなる比率らしいです。確かに、このグラフも妙にしっくりくる、テンプレートのような図になっています。
また、それぞれのローマ字表記を用いている施設には以下のようになっていました。一部を抜粋してご紹介します。
やはり、最多の割合を占めるだけあって飲食店から葬儀場まで幅広いジャンルを抑えていました。また、公共施設にも数多く見られました。
カウント数としては27か所と決して多くない数ですが、道路標識や電柱の地名表記に数多く用いられてえいたのでかなり感覚としてはたくさん見つけられた感じがしました。こちらの表記の方が、マンションや雑居ビルなどより生活に近い施設で用いられているケースが多かったです。
市内全域でもたったの10か所と数は圧倒的に少ないものの、商業施設からマンションまで一通りのジャンルを抑えていました。こちらも、みのお自動車教習所の教習車が市内各所で練習走行をしているため目撃する回数は意外に多かったです。
調査の結果、やはり箕面のローマ字表記には謎が隠されていることが確信に変わりました。
でもなぜ一体、ここまで「箕面」のローマ字表記が異なっているのでしょうか?
解明!なぜ「箕面」のローマ字表記は異なっているのか
なぜ「箕面」の表記が異なっているのか?という問題を解明するためには、箕面市を一番詳しく知り、仕事をされている箕面市役所の方に尋ねるのが一番でしょう。
今回は箕面市観光協会のご協力のもと、箕面市役所の方からメールで回答を頂くことが出来ました。
そもそも、箕面市役所の皆さんはこの「箕面」の英語表記について、問題を認識しているのでしょうか?
ローマ字表記において「箕面(みのお)」が「MINOH」「MINOO」「MINO」と分かれていることは、本市としても承知しております。
やはり、箕面市としてもこの問題は認知をしていたのですね……!では、ローマ字の表記を統一する動きは無かったのでしょうか?
本市では、平成7年(1995年)に定めた「箕面市公共施設における外国語表記マニュアル」に基づき、市のホームページや公共施設での表記を、「Minoh」と統一しております。
なんと!箕面市としては、25年前に既に正式な英語表記を決められていたのですね。確かに、今回の調査中も市役所や図書館といった公共施設は「MINOH」の表記ばかりでした。ちなみに、この「MINOH」という表記にした理由はあるのでしょうか?
本市が「Minoh」とした理由は、
①日本語と発音が近く、外国人市民にわかりやすい、
②他市(例、美濃市)と混同されにくく、国際交流に適しているためです。
「Minoo」だと「ミヌー」と間違って発音されやすく、外国人にとってわかりにくいという理由から、「Minoo」ではなく最終的に「Minoh」と決定しました。
なるほど……! しかし、25年以上前から市として「MINOH」の表記で統一しているにも関わらず、道路標識や国道の看板では「MINO」という異なった表記が続いています。道路標識も公共のものではないのでしょうか?
道路標識などは、国の標識令に基づき、ヘボン式ローマ字の「Mino」を使うよう定められています。道路標識については、市のマニュアル策定当時、市から国・府へ統一を申し入れましたが、実現しませんでした。
公共施設を管理する箕面市と、道路標識を管理する大阪府や国で担当が異なるために英語表記にも違いが生じているたのですね!
また、今回の調査では阪急系の商業施設では「MINO」表記であったものの、阪急の駅構内の看板や行先表示には「MINOH」の表記が使われていたように、同じ企業グループであっても場所によって表記にバラツキがある施設も存在していまいしたが……
こちらは箕面警察署、箕面郵便局、阪急電鉄、阪急バス等に申し入れたところ、経費の都合もありますので、すぐにではありませんが徐々に「Minoh」に変えていただいています。駅や車両の場合、新しいものは「Minoh」になっていると思います。
なるほど、私が見つけた阪急間のこの違いは、「MINO」から「MINOH」へ徐々に切り替えが行われている最中だからこそ見える光景だったということですね!
しかしながら、市の英語表記が3パターンも存在している今の状態は、やはり外国人観光客を含め、他の地域の方にとっては分かりにくいかと思います。今後もこのような形が続くのでしょうか?
インバウンド観光の増大、オリンピック開催等を通じ、日本におけるローマ字表記を統一しようという動きがあります。例えば、外務省のパスポートでは、「Minoh」のように長音を「H」で表すことが認められているのに、国土交通省による道路標識等はヘボン式というように、省庁間においても不統一なのがそもそもの原因だからです。
市と国の間だけではなく、国の省庁内でも人名・地名のローマ字表記に違いが生じている場合があるのですね……これは混乱を招いてしまいそうです。
現在、国土交通省と国土地理院で表記統一の動きがあり、それについて市の意見も求められたため、本市としては、先述したとおり「Minoh」が定着してきているので、それを尊重してほしい、と要望しています。
今後とも本市としては、ローマ字表記に関する国・府の動向を見守りながら、可能な範囲で統一ができるよう、各担当室が業務について関係機関との調整を図ってまいります。
確かに、比率も高く定着しつつある「MINOH」に統一されるのが一番わかりやすいですね!
箕面市役所の皆さま、丁寧な回答を頂き、誠にありがとうございました!
というわけで、調査の結果このような結論が出ました!
もちろん、この他の「MINO」や「MINOO」という表記が必ずしも誤りというわけではありませんが、箕面市の見解なども参考に、今回の記事の結論としてはこのようにまとめさせていただきます。
いよいよ紅葉のシーズンへ突入していく箕面の街へお越しの際には、街の看板にも少し注目して頂ければ嬉しく思います。
また、皆さんのお住いの地域でも気になる地名の表記揺れなどがあれば是非教えてください。現地へ調査しにいきたいと思います!
それでは、また。(おしまい)