喪黒福造「なぜなら、これは仮面パーティーなのです」 会社員「仮面パーティー!?」
1: 名無しさん 2018/11/12(月) 00:42:52.806 ID:xeSJcOtTD
喪黒「私の名は喪黒福造。人呼んで『笑ゥせぇるすまん』。
ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。
この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。
そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。
いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。
さて、今日のお客様は……。
笠原淳一(34) 会社員
【仮面パーティー】
ホーッホッホッホ……。」
ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。
この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。
そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。
いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。
さて、今日のお客様は……。
笠原淳一(34) 会社員
【仮面パーティー】
ホーッホッホッホ……。」
2: 名無しさん 2018/11/12(月) 00:44:50.533 ID:xeSJcOtTD
東京。「旭光商事株式会社」本社ビル。
デスクに向かい、仕事を行う会社員たち。とある男性社員が受話器を取り、取引先と電話をしている。
テロップ「笠原淳一(34) 旭光商事主任」
笠原は、電話機に向かって何度も頭を下げている。通話を終え、受話器を下ろす笠原。
しばらくした後、彼の前に部下の上条が現れる。
上条「あのぅ、主任……」
テロップ「上条芳明(29) 旭光商事社員」
笠原「どうしたんだ、上条君?」
上条「これを……」
笠原に対し、退職願を出す上条。
笠原「退職願?まさか、会社を辞めるというのか?」
デスクに向かい、仕事を行う会社員たち。とある男性社員が受話器を取り、取引先と電話をしている。
テロップ「笠原淳一(34) 旭光商事主任」
笠原は、電話機に向かって何度も頭を下げている。通話を終え、受話器を下ろす笠原。
しばらくした後、彼の前に部下の上条が現れる。
上条「あのぅ、主任……」
テロップ「上条芳明(29) 旭光商事社員」
笠原「どうしたんだ、上条君?」
上条「これを……」
笠原に対し、退職願を出す上条。
笠原「退職願?まさか、会社を辞めるというのか?」
3: 名無しさん 2018/11/12(月) 00:47:05.691 ID:xeSJcOtTD
上条「はい。これからの私は、小説家として生活していこうと思っているんです」
笠原「うーーーん、小説家か……。確か……、君はある文芸雑誌で新人賞の最終候補になったらしいな」
上条「ええ。おかげで、もの書きとして本格的に生きていこうという決意を持つことができました」
笠原「そうか……。見たところ、君の決意の気持ちは強いようだな」
笠原の前から、上条が去る。考え込む笠原。
笠原(上条が会社を辞める……。それも、小説家に転身するために――)
(あいつにあんな才能があったとは、本当に意外だった。才能があれば、自分の手で未来を切り開いていける)
(でも、俺にはああいった才能はない。俺は平凡な人間だ……)
旭光商事。廊下を歩く笠原。
笠原(俺は平凡な人間だから、平凡な人生を送るしかない。それが無難な生き方なんだ)
(だから、俺は何が何でも今の会社にしがみつく。平凡なサラリーマンとして生き、ゆくゆくは家庭も持つつもりだ)
笠原「うーーーん、小説家か……。確か……、君はある文芸雑誌で新人賞の最終候補になったらしいな」
上条「ええ。おかげで、もの書きとして本格的に生きていこうという決意を持つことができました」
笠原「そうか……。見たところ、君の決意の気持ちは強いようだな」
笠原の前から、上条が去る。考え込む笠原。
笠原(上条が会社を辞める……。それも、小説家に転身するために――)
(あいつにあんな才能があったとは、本当に意外だった。才能があれば、自分の手で未来を切り開いていける)
(でも、俺にはああいった才能はない。俺は平凡な人間だ……)
旭光商事。廊下を歩く笠原。
笠原(俺は平凡な人間だから、平凡な人生を送るしかない。それが無難な生き方なんだ)
(だから、俺は何が何でも今の会社にしがみつく。平凡なサラリーマンとして生き、ゆくゆくは家庭も持つつもりだ)
4: 名無しさん 2018/11/12(月) 00:49:14.292 ID:xeSJcOtTD
数日後、夕方。とあるホテル。宴会場に集まる多くの男女。ソフトドリンクの入ったコップを手にする笠原。
笠原(今までの俺は、婚活で連戦連敗が続いてきた。だが、今日こそはいい相手を見つけるぞ……)
会場内にいる女性たちと、次々と会話をする笠原。彼は、ぎこちない笑顔を浮かべている。
夜。駅と周辺の市街地。疲れた表情で、立体交差橋に立つ笠原。
笠原「フーーーッ……」
立体交差橋を歩く喪黒福造。喪黒は、物憂げな表情の笠原を見つける。
喪黒「もしもし……。何かお悩みごとですか?」
笠原「え?」
喪黒「さっき、あなたはため息をついていましたからねぇ……」
笠原「ええ、まあ……。悩みがないと言えば、嘘になりますけど……」
笠原(今までの俺は、婚活で連戦連敗が続いてきた。だが、今日こそはいい相手を見つけるぞ……)
会場内にいる女性たちと、次々と会話をする笠原。彼は、ぎこちない笑顔を浮かべている。
夜。駅と周辺の市街地。疲れた表情で、立体交差橋に立つ笠原。
笠原「フーーーッ……」
立体交差橋を歩く喪黒福造。喪黒は、物憂げな表情の笠原を見つける。
喪黒「もしもし……。何かお悩みごとですか?」
笠原「え?」
喪黒「さっき、あなたはため息をついていましたからねぇ……」
笠原「ええ、まあ……。悩みがないと言えば、嘘になりますけど……」
5: 名無しさん 2018/11/12(月) 00:51:17.749 ID:xeSJcOtTD
喪黒「なるほど……。私の仕事柄、あなたを放っておくわけにはいきませんねぇ」
喪黒が差し出した名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。
笠原「……ココロのスキマ、お埋めします?」
喪黒「実はですねぇ……。私、人々の心のスキマをお埋めするボランティアをしているのですよ」
笠原「は、はあ……」
喪黒「見たところ、あなたの心にもスキマがおありのはずです。何なら、相談に乗りましょうか?」
BAR「魔の巣」。喪黒と笠原が席に腰掛けている。
笠原「私の悩みは、婚活に関することなんです」
喪黒「ほう……。おそらく、今日のあなたは婚活パーティーにでも参加したのでしょう」
笠原「そ、そうですよ……。今日こそはカップル成立を実現しようとしたものの……」
喪黒が差し出した名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。
笠原「……ココロのスキマ、お埋めします?」
喪黒「実はですねぇ……。私、人々の心のスキマをお埋めするボランティアをしているのですよ」
笠原「は、はあ……」
喪黒「見たところ、あなたの心にもスキマがおありのはずです。何なら、相談に乗りましょうか?」
BAR「魔の巣」。喪黒と笠原が席に腰掛けている。
笠原「私の悩みは、婚活に関することなんです」
喪黒「ほう……。おそらく、今日のあなたは婚活パーティーにでも参加したのでしょう」
笠原「そ、そうですよ……。今日こそはカップル成立を実現しようとしたものの……」
6: 名無しさん 2018/11/12(月) 00:53:14.078 ID:xeSJcOtTD
喪黒「結果は思わしくなかった、ということですよねぇ?」
笠原「ええ、まあ……」
喪黒「笠原さんは、過去にも婚活パーティーに参加しているでしょう?」
笠原「おっしゃる通りです。これまで何回か、婚活パーティーに参加したけどカップル成立には至りませんでした」
喪黒「では、街コンや婚活居酒屋に参加したことはありますか?」
笠原「もちろん、参加しましたよ。でも、いずれも期待通りにはいきませんでしたね」
喪黒「婚活パーティーというのは、運営側が仕込んだサクラの人間も一定数いますからねぇ」
笠原「ええ。私も、サクラの人間に引っかかったことがあるんですよ」
喪黒「これはどんな場合にも言えますがねぇ……。平凡でお人よしな人というのは、カモになりやすいんですよ」
「例えば、笠原さんとかはまさにその典型でしょう」
笠原「平凡でお人よしとは、まさに私の生き方に当てはまっていますよ。返す言葉もありません」
笠原「ええ、まあ……」
喪黒「笠原さんは、過去にも婚活パーティーに参加しているでしょう?」
笠原「おっしゃる通りです。これまで何回か、婚活パーティーに参加したけどカップル成立には至りませんでした」
喪黒「では、街コンや婚活居酒屋に参加したことはありますか?」
笠原「もちろん、参加しましたよ。でも、いずれも期待通りにはいきませんでしたね」
喪黒「婚活パーティーというのは、運営側が仕込んだサクラの人間も一定数いますからねぇ」
笠原「ええ。私も、サクラの人間に引っかかったことがあるんですよ」
喪黒「これはどんな場合にも言えますがねぇ……。平凡でお人よしな人というのは、カモになりやすいんですよ」
「例えば、笠原さんとかはまさにその典型でしょう」
笠原「平凡でお人よしとは、まさに私の生き方に当てはまっていますよ。返す言葉もありません」
7: 名無しさん 2018/11/12(月) 00:55:14.739 ID:xeSJcOtTD
喪黒「ねぇ……、笠原さん。平凡でお人よしというのは、必ずしも悪いことではありませんよ」
笠原「は、はあ……」
喪黒「等身大の人間で、ありのままの生き方ができて、人間的には誠実……。これは長所とも言えます」
笠原「うーーん、まあ……。でも、目立った個性や人を引き付けるものがないから、女性受けはしないでしょう」
喪黒「大丈夫です。何とかなりますよ」
喪黒は、笠原に一枚のチラシを渡す。
笠原「婚活パーティーの案内状ですか?お気持ちはありがたいんですけど、私は婚活パーティーで連戦連敗中ですから……」
喪黒「このイベントは、他の婚活パーティーとは一味違いますよ。なぜなら、これは仮面パーティーなのです」
笠原「仮面パーティー!?」
喪黒「はい。参加者、スタッフ、司会者全員が仮面をつけて参加するのです」
笠原「は、はあ……」
喪黒「等身大の人間で、ありのままの生き方ができて、人間的には誠実……。これは長所とも言えます」
笠原「うーーん、まあ……。でも、目立った個性や人を引き付けるものがないから、女性受けはしないでしょう」
喪黒「大丈夫です。何とかなりますよ」
喪黒は、笠原に一枚のチラシを渡す。
笠原「婚活パーティーの案内状ですか?お気持ちはありがたいんですけど、私は婚活パーティーで連戦連敗中ですから……」
喪黒「このイベントは、他の婚活パーティーとは一味違いますよ。なぜなら、これは仮面パーティーなのです」
笠原「仮面パーティー!?」
喪黒「はい。参加者、スタッフ、司会者全員が仮面をつけて参加するのです」
8: 名無しさん 2018/11/12(月) 00:57:16.927 ID:xeSJcOtTD
笠原「変わったパーティーですね……」
喪黒「仮面パーティーは、見た目よりも内面を重視するイベントなのです。だから、笠原さんに向いているでしょう」
「なぜなら、笠原さんは平凡だけど誠実な人ですから……。もしかしたら、女性の縁に恵まれるかもしれませんよ」
笠原「そうですか……。でも、私は自信が持てないんですよ。このパーティーでもダメだったら、どうしますか?」
喪黒「心配いりません。私が、あなたに気合を入れてあげましょう!」
喪黒は笠原に右手の人差し指を向ける。
喪黒「あなたは、仮面パーティーで素敵な相手と出会います!!きっと出会います!!」
「ドーーーーーーーーーーーーン!!!」
笠原「うわああああああああああ!!!」
夕方。とあるホテル。会場の中は、仮面をつけた男女たちでひしめき合う。もちろん、笠原も目元に仮面を装着している。
笠原(本当に参加者が全員、仮面をつけている……。実にミステリアスな雰囲気だな……)
喪黒「仮面パーティーは、見た目よりも内面を重視するイベントなのです。だから、笠原さんに向いているでしょう」
「なぜなら、笠原さんは平凡だけど誠実な人ですから……。もしかしたら、女性の縁に恵まれるかもしれませんよ」
笠原「そうですか……。でも、私は自信が持てないんですよ。このパーティーでもダメだったら、どうしますか?」
喪黒「心配いりません。私が、あなたに気合を入れてあげましょう!」
喪黒は笠原に右手の人差し指を向ける。
喪黒「あなたは、仮面パーティーで素敵な相手と出会います!!きっと出会います!!」
「ドーーーーーーーーーーーーン!!!」
笠原「うわああああああああああ!!!」
夕方。とあるホテル。会場の中は、仮面をつけた男女たちでひしめき合う。もちろん、笠原も目元に仮面を装着している。
笠原(本当に参加者が全員、仮面をつけている……。実にミステリアスな雰囲気だな……)
9: 名無しさん 2018/11/12(月) 00:59:14.341 ID:xeSJcOtTD
仮面をつけた演奏家たちが、楽器を奏でる。手を取り合い、社交ダンスを踊る仮面の男女たち。踊りの輪に加わる笠原。
笠原(仮面で顔を隠しているおかげだろうか……。何だか、普段よりも積極的になれそうな気がしてきた……)
ダンスを終える一同。仮面をつけた司会者が、マイクを手に取る。
司会者「それでは、皆様お待ちかねの……。告白タイムです!!」
仮面姿の男と女が、それぞれ向かい合う。仮面をつけたある女性と、目を合わせる笠原。
笠原「私は……」
笠原の胸が高鳴る。女性に対し、自己紹介をする笠原。それに対し女性も、笠原に対して何かを話す。
話し合いを続け、次第に打ち解けていく2人。
笠原「あの……、連絡先を交換したいんですけど」
女性「分かりました……」
笠原と女性が、互いにゆっくりと仮面を外す。
笠原(仮面で顔を隠しているおかげだろうか……。何だか、普段よりも積極的になれそうな気がしてきた……)
ダンスを終える一同。仮面をつけた司会者が、マイクを手に取る。
司会者「それでは、皆様お待ちかねの……。告白タイムです!!」
仮面姿の男と女が、それぞれ向かい合う。仮面をつけたある女性と、目を合わせる笠原。
笠原「私は……」
笠原の胸が高鳴る。女性に対し、自己紹介をする笠原。それに対し女性も、笠原に対して何かを話す。
話し合いを続け、次第に打ち解けていく2人。
笠原「あの……、連絡先を交換したいんですけど」
女性「分かりました……」
笠原と女性が、互いにゆっくりと仮面を外す。
10: 名無しさん 2018/11/12(月) 01:01:14.028 ID:xeSJcOtTD
数日後。とある喫茶店。席に座りながら、コーヒーを飲む笠原と女性。
友美「仮面を取ると、何だか不思議な感じがしますね……」
テロップ「桂木友美(32) 社長秘書」
笠原「そうですか……?むしろ、仮面がない方が自然な感じがしますよ」
友美「それにしても……。笠原さんって、意外と男前な顔してるんですね」
笠原「いやぁ……、女性にそう言われたのは初めてですよ」
手をつなぎながら、街の中を歩く笠原と友美。
BAR「魔の巣」。喪黒と笠原が席に腰掛けている。
喪黒「カップリングを経て、交際成立ですか?おめでとうございます」
笠原「しかも、相手の女性は社長秘書で、その社長は彼女の父親なんです。本当に、話がうますぎると思うほどで……」
喪黒「ほう、そうですか……。もしも結婚が実現すれば、逆玉の輿もあり得るかもしれませんよ」
友美「仮面を取ると、何だか不思議な感じがしますね……」
テロップ「桂木友美(32) 社長秘書」
笠原「そうですか……?むしろ、仮面がない方が自然な感じがしますよ」
友美「それにしても……。笠原さんって、意外と男前な顔してるんですね」
笠原「いやぁ……、女性にそう言われたのは初めてですよ」
手をつなぎながら、街の中を歩く笠原と友美。
BAR「魔の巣」。喪黒と笠原が席に腰掛けている。
喪黒「カップリングを経て、交際成立ですか?おめでとうございます」
笠原「しかも、相手の女性は社長秘書で、その社長は彼女の父親なんです。本当に、話がうますぎると思うほどで……」
喪黒「ほう、そうですか……。もしも結婚が実現すれば、逆玉の輿もあり得るかもしれませんよ」
11: 名無しさん 2018/11/12(月) 01:03:13.165 ID:xeSJcOtTD
笠原「喪黒さん、ありがとうございます。私に仮面パーティーを紹介してくださって……」
喪黒「まあまあ……、笠原さん。大事なのは、交際が成立した後ですよ」
笠原「確かに……」
喪黒「問題は、そこからどうやってゴールインにつなげるかですから……」
笠原「……ですよね」
喪黒「あのパーティーでの笠原さんは、仮面をつけていたからこそ積極的な振る舞いができました」
「でも、これからは仮面なしで相手と向かい合うわけです。さあ、彼女の前でどう振る舞いますか?」
笠原「そ、それは……」
喪黒「何も、相手の前で自分を飾る必要はありません。ありのままの姿で振る舞えばいいんですよ」
笠原「は、はい……」
喪黒「私は前にもお話ししましたが……。笠原さんの長所は平凡でありながらも、誠実であることです」
「等身大の人間で、ありのままの生き方ができて、人間的には誠実……。それがあなたなのです」
喪黒「まあまあ……、笠原さん。大事なのは、交際が成立した後ですよ」
笠原「確かに……」
喪黒「問題は、そこからどうやってゴールインにつなげるかですから……」
笠原「……ですよね」
喪黒「あのパーティーでの笠原さんは、仮面をつけていたからこそ積極的な振る舞いができました」
「でも、これからは仮面なしで相手と向かい合うわけです。さあ、彼女の前でどう振る舞いますか?」
笠原「そ、それは……」
喪黒「何も、相手の前で自分を飾る必要はありません。ありのままの姿で振る舞えばいいんですよ」
笠原「は、はい……」
喪黒「私は前にもお話ししましたが……。笠原さんの長所は平凡でありながらも、誠実であることです」
「等身大の人間で、ありのままの生き方ができて、人間的には誠実……。それがあなたなのです」
12: 名無しさん 2018/11/12(月) 01:05:14.674 ID:xeSJcOtTD
笠原「はあ……」
喪黒「だから、笠原さん……。あなたには約束していただきたいことがあります」
笠原「約束!?」
喪黒「そうです。あなたはこれから先、ありのままの姿で彼女と向かい合ってください」
「変に見えを張ったり、カッコをつけたりするような真似はしてはいけませんよ。いいですね!?」
笠原「わ、分かりました……。喪黒さん」
ある映画館。映画を観賞する笠原と友美。スクリーンに、主演男性とヒロインのラブシーンが映る。
主演男性「俺は世界を敵にしてでも、君を守るつもりだ……」
夜。居酒屋チェーン店にいる笠原と友美。机の上には、鍋料理が置かれている。
友美「ずいぶん庶民的な店を選んだねぇ。笠原さん」
笠原「ああ。これが俺の生き方だよ。等身大の人間として、ありのままの姿で振る舞うのが俺さ」
喪黒「だから、笠原さん……。あなたには約束していただきたいことがあります」
笠原「約束!?」
喪黒「そうです。あなたはこれから先、ありのままの姿で彼女と向かい合ってください」
「変に見えを張ったり、カッコをつけたりするような真似はしてはいけませんよ。いいですね!?」
笠原「わ、分かりました……。喪黒さん」
ある映画館。映画を観賞する笠原と友美。スクリーンに、主演男性とヒロインのラブシーンが映る。
主演男性「俺は世界を敵にしてでも、君を守るつもりだ……」
夜。居酒屋チェーン店にいる笠原と友美。机の上には、鍋料理が置かれている。
友美「ずいぶん庶民的な店を選んだねぇ。笠原さん」
笠原「ああ。これが俺の生き方だよ。等身大の人間として、ありのままの姿で振る舞うのが俺さ」
13: 名無しさん 2018/11/12(月) 01:07:20.265 ID:xeSJcOtTD
夜道を歩く笠原と友美。突然、笠原に対しある男がぶつかる。
チンピラ「コラ……。人にぶつかって、何も言わねえのか!!」
笠原と友美は、チンピラの存在に気がつく。彼はスキンヘッドで、いかにもガラが悪そうな人間だ。
笠原「あの……、さっきは本当にすみませ……」
チンピラ「謝って済むと思うか!!お前がぶつかったせいで、俺は怪我したんだ!!だから、慰謝料払え!!」
笠原「そ、そんな……」
チンピラ「払えねえなら、この姉ちゃんを貰っていくぜ!!」
友美「嫌ぁ、やめて!!離してぇ!!」
チンピラは、友美の腕を無理やり掴む。友美が必死で嫌がるも、チンピラは意に介さない様子だ。
足元が震え、脅えた様子の笠原。笠原は迷いながら、必死で考え込む。
笠原(友美が危ない……。ここで弱虫な態度を見せたら、俺は友美と別れることになる……)
(あいつとは別れたくない……。だから、カッコいいところを見せなくては!!)
チンピラ「コラ……。人にぶつかって、何も言わねえのか!!」
笠原と友美は、チンピラの存在に気がつく。彼はスキンヘッドで、いかにもガラが悪そうな人間だ。
笠原「あの……、さっきは本当にすみませ……」
チンピラ「謝って済むと思うか!!お前がぶつかったせいで、俺は怪我したんだ!!だから、慰謝料払え!!」
笠原「そ、そんな……」
チンピラ「払えねえなら、この姉ちゃんを貰っていくぜ!!」
友美「嫌ぁ、やめて!!離してぇ!!」
チンピラは、友美の腕を無理やり掴む。友美が必死で嫌がるも、チンピラは意に介さない様子だ。
足元が震え、脅えた様子の笠原。笠原は迷いながら、必死で考え込む。
笠原(友美が危ない……。ここで弱虫な態度を見せたら、俺は友美と別れることになる……)
(あいつとは別れたくない……。だから、カッコいいところを見せなくては!!)
14: 名無しさん 2018/11/12(月) 01:09:14.178 ID:xeSJcOtTD
笠原は破れかぶれになり、チンピラに飛びかかる。
笠原「ウオオオオオオッ!!!」
チンピラの衣服を掴み、彼を投げ飛ばす笠原。意識を失うチンピラ。
笠原「後は任せろ!!さあ、早く逃げるんだ!!」
素早くその場を立ち去る友美。一方、笠原もチンピラから一目散に逃げる。
笠原「ハア……、ハア……、ハア……」
ある程度の距離まで走り、一休みする笠原。彼の目の前に、喪黒が姿を現す。
喪黒「さっきは本当に怖かったでしょう?」
笠原「は、はい……。慣れないことをしたもんだから、今も正直ビビってるんです……」
喪黒「どんな気持ちで、彼女を助けたんですか?」
笠原「まあ、その……。友美に対して、カッコいいところを見せようと思って……」
笠原「ウオオオオオオッ!!!」
チンピラの衣服を掴み、彼を投げ飛ばす笠原。意識を失うチンピラ。
笠原「後は任せろ!!さあ、早く逃げるんだ!!」
素早くその場を立ち去る友美。一方、笠原もチンピラから一目散に逃げる。
笠原「ハア……、ハア……、ハア……」
ある程度の距離まで走り、一休みする笠原。彼の目の前に、喪黒が姿を現す。
喪黒「さっきは本当に怖かったでしょう?」
笠原「は、はい……。慣れないことをしたもんだから、今も正直ビビってるんです……」
喪黒「どんな気持ちで、彼女を助けたんですか?」
笠原「まあ、その……。友美に対して、カッコいいところを見せようと思って……」
15: 名無しさん 2018/11/12(月) 01:11:14.569 ID:xeSJcOtTD
喪黒「笠原淳一さん……。どうやらあなた、私との約束を破ったようですね!」
笠原「あっ……!」
喪黒「私は忠告したはずですよ。あなたはこれから先、ありのままの姿で彼女と向かい合え……と」
笠原「くっ……」
喪黒「変に見えを張ったり、カッコをつけたりするような真似はしてはいけない……というのが笠原さんと私との約束でした」
「にも関わらず、あなたはさっき……」
笠原「す、すみません……!!」
喪黒「もはや手遅れです。約束を破ったのだから、あなたにはペナルティーを受けて貰います!!」
喪黒は笠原に右手の人差し指を向ける。
喪黒「ドーーーーーーーーーーーン!!!」
笠原「ギャアアアアアアアアア!!!」
笠原「あっ……!」
喪黒「私は忠告したはずですよ。あなたはこれから先、ありのままの姿で彼女と向かい合え……と」
笠原「くっ……」
喪黒「変に見えを張ったり、カッコをつけたりするような真似はしてはいけない……というのが笠原さんと私との約束でした」
「にも関わらず、あなたはさっき……」
笠原「す、すみません……!!」
喪黒「もはや手遅れです。約束を破ったのだから、あなたにはペナルティーを受けて貰います!!」
喪黒は笠原に右手の人差し指を向ける。
喪黒「ドーーーーーーーーーーーン!!!」
笠原「ギャアアアアアアアアア!!!」
16: 名無しさん 2018/11/12(月) 01:13:22.894 ID:xeSJcOtTD
1週間後。笠原は、友美にある屋敷へ招かれる。屋敷は、要塞のような壁で周りを囲まれている。
友美「さあ、入りましょう。父にあなたのことを紹介しておきたいから……」
応接室の中で、座布団に座る笠原。笠原の前には、友美と彼女の父がいる。
友美の父は高価なスーツ姿で、独特な威厳を醸し出している。しかも彼の左頬には、傷跡がある。
神妙な様子の笠原。笠原の前に、ある男が姿を現す。そう、あの夜に出会ったチンピラが――。
チンピラ「久しぶりだな……。兄ちゃん」
笠原「ああっ!!」
友美の父「うちの若い衆を投げ飛ばしたのは、お前か……」
友美「ごめんなさい、笠原さん。私、この人とグルだったの……」
笠原「そ、そんな……」
友美の父「なかなか見込みがある奴だな。今まで似たようなことを試してきたが、今回のケースは初めてだ」
笠原「えっ!?」
友美「さあ、入りましょう。父にあなたのことを紹介しておきたいから……」
応接室の中で、座布団に座る笠原。笠原の前には、友美と彼女の父がいる。
友美の父は高価なスーツ姿で、独特な威厳を醸し出している。しかも彼の左頬には、傷跡がある。
神妙な様子の笠原。笠原の前に、ある男が姿を現す。そう、あの夜に出会ったチンピラが――。
チンピラ「久しぶりだな……。兄ちゃん」
笠原「ああっ!!」
友美の父「うちの若い衆を投げ飛ばしたのは、お前か……」
友美「ごめんなさい、笠原さん。私、この人とグルだったの……」
笠原「そ、そんな……」
友美の父「なかなか見込みがある奴だな。今まで似たようなことを試してきたが、今回のケースは初めてだ」
笠原「えっ!?」
17: 名無しさん 2018/11/12(月) 01:16:31.809 ID:xeSJcOtTD
テロップ「2年後――」
とある暴力団本部。そう、要塞のような壁で周りを囲まれた例の屋敷だ。
和服を着た男たちが、組長交代の継承式を行っている。この組の新組長に選ばれたのは……、何と笠原のようだ。
笠原(等身大の人間としての、ありのままの人生……。こういう生き方をしたかったのに……)
(もう、俺は普通の人間に2度と戻れない……。こんなはずじゃなかった……)
目元にうれし涙を浮かべる友美。沈痛な表情の笠原。笠原は目を閉じ、盃を飲み干す。
暴力団本部の近くにいる喪黒。
喪黒「そもそも、世の中に生きる人間たちは……。社会に適応するために、多かれ少なかれ複数の仮面を使い分けています」
「しかしながら、仮面をつけて生活を送り続けていても……。内面の中では、息苦しさを感じざるを得ないでしょう」
「だから、時には仮面を外し……。等身大の自分として、ありのままに振る舞うことが人間には必要なのかもしれません」
「ありのままの人生を送り、ありのままの関係を互いに築くこと……。それが自然にかなった生き方なのですから……」
「容姿端麗な人物と結婚できても、権力や富を手に入れることができても……。仮面をつけたままの人生は窮屈で仕方ないですよ」
「ねぇ、笠原さん……。オーホッホッホッホッホッホッホ……」
―完―
とある暴力団本部。そう、要塞のような壁で周りを囲まれた例の屋敷だ。
和服を着た男たちが、組長交代の継承式を行っている。この組の新組長に選ばれたのは……、何と笠原のようだ。
笠原(等身大の人間としての、ありのままの人生……。こういう生き方をしたかったのに……)
(もう、俺は普通の人間に2度と戻れない……。こんなはずじゃなかった……)
目元にうれし涙を浮かべる友美。沈痛な表情の笠原。笠原は目を閉じ、盃を飲み干す。
暴力団本部の近くにいる喪黒。
喪黒「そもそも、世の中に生きる人間たちは……。社会に適応するために、多かれ少なかれ複数の仮面を使い分けています」
「しかしながら、仮面をつけて生活を送り続けていても……。内面の中では、息苦しさを感じざるを得ないでしょう」
「だから、時には仮面を外し……。等身大の自分として、ありのままに振る舞うことが人間には必要なのかもしれません」
「ありのままの人生を送り、ありのままの関係を互いに築くこと……。それが自然にかなった生き方なのですから……」
「容姿端麗な人物と結婚できても、権力や富を手に入れることができても……。仮面をつけたままの人生は窮屈で仕方ないですよ」
「ねぇ、笠原さん……。オーホッホッホッホッホッホッホ……」
―完―
引用元: http://hebi.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1541950972/
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- 名無しさん@とろ速 - 2018年11月12日 03:57:06
原作初期にも、売れないイラストレーターが有名になりたいという邪な考えから
強盗に挑むも大怪我をして仕事が出来なくなってしまう「勇気は損気」という話が
あるけど、少なくとも今回の話の主人公は、純粋な気持ちで彼女を助けていたら
どうなっていただろう…って出自を考えれば結局は同じ事だったかも知れないが。