「アーバンパークライン」の行方

手前(黄色)と奥(紺色)で案内板の路線名が主従逆転=JR柏駅の改札口

 埼玉県の大宮駅から千葉県の柏駅を経由して船橋駅までの62.7キロを結ぶ東武野田線に「東武アーバンパークライン」の愛称が付けられたのは2014年4月1日だった。

 駅看板や車内の路線図にこの長いカタカナの路線名が登場して驚いたものだが、丸5年が経過した現在でも、いまひとつその愛称が聞こえてこない。むしろアーバンパークとは何なのか、利用者にはとまどいというか疑問の声の方が大きいようにすら思える。沿線住人として現状がどうなっているのか、改めて考えてみた。

 まずその由来であるが、東武鉄道によると「大宮、柏、船橋といった都市間をつなぎ、その沿線には清水公園や大宮公園を始めとした自然豊かな公園が点在することから、都市と公園でアーバンパーク」としている。

 大宮公園にはサッカーJ2の大宮アルディージャが本拠地とするNACK5スタジアムがあり、沿線では住宅開発は今も続いているが、アーバンというイメージには到達していない。

 実態はどうあれ、愛称は呼ばれてこそ意味がある。ところが自分自身、日常的には野田線と呼んでいる。言いにくいとまでは思わないが口にすると倍以上に文字数が違うし、単純に馴染みの問題もある。

 逆にアーバンパークラインと呼ぶシチュエーションは、やや冗談めかしたネタ的に扱われるケースが多いように思う。何故ならその由来を正しく知らなければ、野田線ユーザーは概ね「野田線でいいよね」となるし、そうでなければ「名前の意味がわからない」で終わってしまうからである。

 東武野田線とJR常磐線とが交差する乗換駅である柏駅をベースに、案内標識などをもう少し観察してみよう。まず当の東武鉄道がアーバンパークラインを推している点については、論を待たない。念のため確認すると改札の内と外、どちらであってもざっと見た限りで東武野田線の表記を見つけることはできず、徹底している。

 発車時のアナウンスが「東武線をご利用いただき……」となっている点はやや気にはなったものの、少なくとも野田線という名称は使っていないようだ。

(上)東武60000系の正面と側面には「TOBU URBAN PARK LINE」、(下)東武柏駅は千葉県内唯一のスイッチバック式

 一方、JR常磐線から乗り換える時はどうだろう。JR柏駅南口改札付近の乗換案内の標識は「東武アーバンパークライン」の文字の下にかっこ書きで「(東武野田線)」と併記されているものがあり、逆に「東武野田線」を主にして、かっこ書きでアーバンパークラインを併記する看板もすぐ近くにあるなど、統一されていない。後者の看板の英文は「Tobu Noda Line」としか書いていないので、外国人には不親切だろう。

 車内に流れる音声案内はどうだろうか。確認した日に乗車したJR常磐線の電車では、柏駅到着前に流れたアナウンスは「東武野田線」だったが、同じ電車でも東武伊勢崎線の乗換駅である北千住駅では「東武スカイツリーライン」と愛称がアナウンスされており、やっぱり不統一だ。

 列車によってはアーバンパークラインと流れることもあるようだが、結局のとこころ、アーバンパークラインは5年たっても定着していないというのが客観的な事実だろう。

 「東武アーバンパークライン」は時代を先取りしすぎたのかもしれない。いずれ名実相伴う日が来ることを沿線住民としては期待したい。その時こそ、愛称としての真の輝きを放つだろう。

 ☆共同通信デジタル・田村裕嗣(たむら・ゆうじ)

© 一般社団法人共同通信社