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「リドリーが出来るんだと言えば、出来るんですよ」『グラディエーターⅡ』Pが明かす製作ウラ話【単独インタビュー】

グラディエーターII (原題)
©2024 PARAMOUNT PICTURES.

巨匠リドリー・スコット監督が贈る伝説的名作『グラディエーター』の続編、映画『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』がついに日本公開となった。リドリー・スコットと共にプロデューサーを務めたダグ・ウィックとルーシー・フィッシャーは本作のため日本を訪れ、THE RIVERによる個別インタビューに応じた。

『グラディエーターII』プロデューサー ダグ・ウィック&ルーシー・フィッシャー
©︎ THE RIVER 中谷直登

ダグとルーシーは夫婦であり、ダグは1作目『グラディエーター』にも携わっているベテランだ。製作舞台裏のあれこれや、劇中で気になったポイントについて尋ねていくと、二人は「ちなみに」「ところで」と、いくつものエピソードをノンストップで語ってくれた。

まさに目から鱗!一歩踏み込んだ回答の連続だ。『グラディエーターⅡ』がもっと楽しくなる、ディープなインタビューをお楽しみいただきたい。

『グラディエーターII』の内容について言及する箇所が含まれていますが、映画のお楽しみを奪う核心的なネタバレはございません。

『グラディエーターII』プロデューサー ダグ・ウィック&ルーシー・フィッシャー 単独インタビュー

──2024年は「SHOGUN 将軍」と『グラディエーターⅡ』、東洋と西洋の壮大な時代劇が登場することになりました。現代の観客に時代劇を届ける意義はなんでしょうか?

ダグ・ウィック:いくつかあります。まず、今こそ時代劇だ、ということです。今の話ではなく、過去の物語ですが、観客に訴えかけられるものがあります。本作の物語で描かれる問題は、現代に通じているのだと、常に感じていました。つまり、権力の崩壊。我々アメリカの美しい理想が、腐敗によって消えかけているということ。そういうところは共感を感じられるものです。

それから“帰郷”というテーマ。自分は家族とは違うと感じる息子と、その息子との再会を望む気持ち。こうしたテーマは、観客に訴えかけるように思いました。

グラディエーターII 英雄を呼ぶ声
©2024 PARAMOUNT PICTURES.

それから、あなたもそうだと思いますが、やはり大スクリーンでの体験が好きですよね。だから私たちは、大スクリーンでの体験を通じて、観客の心に訴えかけられる何かを届けられればと。劇場での素晴らしい夜を提供したかったのです。キャラクターの旅路においても、そして24年前にとても親切にしてくれた観客のためにも、観ているものにガッカリしないような劇場体験を届けたかったのです。

そこで今回は、どのように戦闘シーンを増やすか、非常に慎重に考えました。古代アリーナのプロデューサーになった気持ちで、さまざまな肉弾戦を見てきた観衆に何を見せるかと考えて、今回は猛獣や船、サメを用意しました。体験価値を高めるためにです。

そして最後に、リドリー・スコットは当代最高のアーティストであるということ。彼が観客を連れ出してくれる。まるで、彼がツアーガイドになって、皆さんをツアーバスに乗せ、古代ローマの旅に連れて行ってくれるような感じです。そして、『ブレードランナー』と同じ人物によって作られた世界を見ることができる。全てがうまくいけば、最高の劇場体験を提供できると思ったのです。

グラディエーターII 英雄を呼ぶ声
©2024 PARAMOUNT PICTURES.

──“家族を失った男がコロシアウムで戦う”という基本構造は、前作と同じですね。この構造を繰り返したのには狙いがあるのでしょうか?

ダグ:実は、本作ではさまざまなバージョンを試行錯誤して、伝える価値のある物語を長らく探っていました。だからこの続編は時間がかかったのです。落胆されるような続編は作りたくありませんでした。

ある時は、ローマで暮らすルシウスの物語を考えたのですが、うまくいかなかった。ようやく辿り着いたのは、史実の中にありました。皇帝が交代になるたび、その血筋の者たちは皆殺しにされるということ。だから実際に何が起こったかを考えれば、ルシウスはローマを追われることになるだろうと考えたのです。なので、ルシウスが行方不明になっており、ヌミディアを放浪していて、家族から切り離されたところから始まるのですね。そこにローマ軍の侵攻が起こる。

今作ではペドロ・パスカルがローマの将軍役として、ヌミディアの民を攻め入る。1作目で、ラッセル(・クロウ)が冒頭で戦っていたようにですね。ただ今作で決定的に違うのは、英雄がヌミディアの民の側におり、ローマを憎んでいるということ。なので、同じ旅でありながら、今回は全く違う視点となっているのです。

そして最後に、本作は格闘映画でもあります。アリーナでの様々な戦いを通じてストーリーを語ることで、構造を明確にしていると思います。

グラディエーターII 英雄を呼ぶ声
©2024 PARAMOUNT PICTURES.

──さまざまな脚本を試していたということですが、ルシウスは常に主人公でしたか?

ダグ:そうです。彼が前作に登場した唯一の子どもですからね。

──前作は基本的にはマキシマスとコモドゥスの一対一の対立構造でしたが、今作ではマクリヌスやアカシアス、二人の皇帝といった興味深いキャラクターが増えます。視点を増やしたことによる課題は何でしたか?

ルーシー・フィッシャー:当時、私はソニー・ピクチャーズの副会長だったので、(パラマウント製作の)1作目には携わっていないんです。彼(ダグ)がプロデューサーをやっていて、オスカーを獲りました。それから私たちは結婚して、パートナーになったんです。

それで、本作では最初からたくさんのキャラクターが登場しますので、さまざまなキャラクターと物語を追う必要がありました。オリジナル版『グラディエーター』は、より直接的な復讐劇で、素晴らしいものでした。そちらに私は関与していなかったので、とにかく完璧な映画だと言えます(笑)。

本作では、さらに多くの事柄を扱っています。ルッシラがいて、アカシアスがいて、マクリヌスがいて、そしてルシウスがいる。もちろんルシウスが主人公なわけですが、とても面白くてカラフルなキャラクターたちも登場します。そしてルシウスもそうですが、彼らの多くは、“こうありたいという自分”から、“本当の自分”へと、物語の中で少し変化していきます。ルシウスは、そんな自分に驚くわけですね。

グラディエーターII 英雄を呼ぶ声
©2024 PARAMOUNT PICTURES.

マクリヌスについては、何者なのか長らくわからない。アカシアスは敵役の立場から始まるのですが、そういうわけでもありません。そんなふうに、脚本上ではより複雑な物語になりました。これら全ての糸をたどり、そして全てを精算する必要がありました。さまざまな物語の宴が、より豊かになっていると思います。

ダグ:そして先の質問にも重なるのですが、私たちは前作の繰り返しにはしないようにしようと、かなり意識しました。だから、まず敵役から始めましたし、皇帝について同じことをしないようにしました。そうすると直感的に、現代に通じるものが感じられるのです。つまり、富裕層が権力を買おうとしているということ。マクリヌスの始まりはそこですね。権力者が最後の一人の首を持ってやってきて、自分への投票を呼びかけるような。少し冗談のようですが、これ以上に政治的な映画はないですよね(笑)。

グラディエーターII 英雄を呼ぶ声
© 2024 PARAMOUNT PICTURES.

──壮大なシーンがたくさんありますが、プロデューサーとして、「本当にやれるのかな……」と不安になったようなところはありますか?

ダグ:その答えは簡単。リドリー・スコットですから(笑)。例えば、1作目では出演者が亡くなられたこともありましたが、当時はどうやってこの物語を続けられるのかと話し合いました。オリヴァー・リードのことです(※1作目でプロキシモ役を演じていたオリヴァー・リードは、撮影終了間近に亡くなった)。私たちは彼のクローズアップを再利用して、彼の物語を完遂させました。

リドリーが出来るんだと言えば、出来るんですよ。リドリーは当代最高の才能の持ち主です。彼が「海戦をやるぞ」と言えば、我々は心配しなくて良いんです。彼が「ヒヒを出すぞ」と言えば、ちゃんとスタントマンが用意されるのです。あのヒヒはCGですが、スタントマンが短い松葉杖を持って演じています。とにかく、リドリーがやれると言ったものは、全て美しく仕上がるんです。

グラディエーターII 英雄を呼ぶ声
©2024 PARAMOUNT PICTURES.

ルーシー:最大の障壁と言えば場外的なもので、二つのストライキでしたね(※2023年に脚本家組合と俳優組合が大規模なストライキに突入し、本作を含む多くの企画が停止を余儀なくされた)。まず本作の製作開始前に脚本家ストライキが始まったので、最初は脚本が完成していなかった。それに関しては、リドリーですら打ち勝てない試練でしたね。

そして制作の中頃には俳優ストライキが始まりました。だから、1214ブロック分の古代ローマのコロシアムのセットと、450室のホテルの部屋を残して、全員帰るしかなかった(笑)。衣装も、倉庫も、剣も、ヘルメットも、兵装具も、皇帝やマクリヌス、ルッシラが着用する綺麗な衣装も、全部置いたまま。いつ戻れるのか見当もつきませんでした。ある日の夕暮れ、前日まで2,000人はいた現場が、空っぽになったのです。障壁といえば、それですね。でも、乗り越えることができました。

でも本当に、リドリーは将軍のような方で、物事をマクロ視点で大局的にも見るし、ミクロ視点で演技も綺麗に仕立ててくれる。つまり、彼こそが常に私たちの秘密兵器でした。

──コロシアムのセットは、実物大で建造したそうですね。

ダグ:そうです。ちなみにこのセットは、みんながコンピューターを使ってやっている映画ビジネスにおいて、最後にして最大の建造物になるかもしれません。古代ローマの街並み、宮殿、等身大の像、全てが並外れています。

ルーシー:劇中に登場する街風景は、全て実際に作られたものです。人の数を増やしたり、大きく見せたりしているところもあるのですが、全て作っています。

グラディエーターII (原題)
©2024 PARAMOUNT PICTURES.

──すごいですね。コロシアムの建造にはどれくらいを要したのですか?

ダグ:六ヶ月です。

ルーシー:最後に登場する橋は別です。なぜなら、(ストライキの影響で)撮影の中盤に差し掛かるまで、ラストがあの形になるとはわかっていなかった。だからあの橋は、手早く作りました。

ダグ:面白いことに、リドリーが率いる部署のトップの人たちは、24年前にご一緒した人たちと同じだったんです。面白いですよね。つまり、プロダクション・デザイナーやコスチューム・デザイナーは、前作と同じということです。

──オープニング・シークエンスで繰り広げられる戦いは、わずか9日間で撮影されたそうです。クレイジーですね(笑)。

ダグ:クレイジーです。ちなみにあのシーンに登場する船は、撮影時は全て土の上に置かれています。水は後から加えたんです。

ルーシー:撮影時に水はありません。砂漠のど真ん中で撮影しました。

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは [email protected] まで。

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