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大阪・関西万博を機にさらなる国際都市へ――O-BICの取り組み

いよいよ開催間近となった「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)」。大阪では今回の万博を機にさらなる国際化を、という動きが多方面で活発になっています。今回はその中から、海外企業の大阪誘致を推進している大阪外国企業誘致センター(O-BIC)の役割と活動について、事務局次長の清水僚介さんにお話を伺いました。

大阪の国際ビジネスにおけるO-BICの役割

――はじめに、O-BICの概要やご活動内容について簡単にご紹介いただけますでしょうか。

清水さん(以降、清):O-BICは、2001年に大阪府、大阪市、大阪商工会議所が共同で設立した組織で、外国企業や外国公館・経済団体などの大阪進出のサポートや、国内外における大阪のプロモーション活動などを行っています。

中でも、大阪でビジネスを行う魅力を知っていただけるよう、プロモーションに力を入れており、各国の窓口となる在日外国公館向けの情報提供や、海外向けのプロモーションも現地・オンライン共に積極的に行っています。2024年には大阪にて在日G7商工会議所とのラウンドテーブルを開催し、各会議所代表者との意見交換会を実施した他、関西の総領事館・領事館関係者向けの在阪中小企業視察会や、英国・ドイツ・中国での現地プロモーション活動などを実施いたしました。


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O-BICの事務局は大阪商工会議所 国際部にありますが、この国際部では大阪と海外とのビジネスをつなぐ架け橋のような役目をされていると伺いました。O-BICはその中でも特に海外から大阪へ、というビジネスのインバウンドを担っていらっしゃるということでしょうか。

清:その通りです。国際部では在阪企業の海外進出のサポートや輸出・展開促進を、O-BICでは海外企業の大阪進出をサポートしています。海外をめざす大阪の企業にも、大阪をめざす海外企業にも双方向でビジネスチャンスの拡大につながるよう、国際部とO-BICが両輪となって活動しています。


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ちなみに、大阪に進出する海外企業にはどのような特徴があるのでしょう。

清:O-BIC開設から2023年度までの23年間で678件の海外企業を誘致しましたが、国別では中国、韓国、アメリカの順に多く、3割以上を中国企業が占めています。各国から日本へ商品を輸入する卸売・小売企業やレストラン等のサービス業企業が日本拠点として設立する、というケースがメインでしょうか。


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大阪万博を控えて企業進出の推移や傾向などに変化はありますか。

清:万博関連で言えば、現在は欧米の企業・機関からの問い合わせが多い状況ですね。皆さん、大阪にどのくらいビジネスチャンスがあるか非常に興味があるようです。今後、アジア、中東、アフリカなどからも増えてくるかとは思いますが、本格的に増えるのは2025年に入ってからではないでしょうか。実際に大阪に来て万博を見て、そこからビジネスチャンスを実感して……というケースが増えてくるのではと考えています。

大阪・関西万博に向けた取り組み

――今回の万博ですが、日本での開催は愛知県での愛・地球博に続き、20年ぶりとなります。特に大阪での開催は前回から実に55年ぶりとなりますが、開催が決定した時はどのようなお気持ちだったのでしょうか。

清:やはり嬉しかったですね。大阪商工会議所はもちろん、大阪府も大阪市も「どうやって大阪の経済を更に発展させていくか」を長いこと模索し続けていました。大阪・関西万博は、その起爆剤になってくれると期待しています。

また、万博はオリンピックよりも開催期間の長い国際イベントですから、大阪だけでなく日本全体にも色々な影響や効果があるのではと思っています。建設中の会場も壮観ですし、開催したらどんな風になるんだろう、どんな体験ができるんだろう、と今から非常にわくわくしています。

実は万博ですが、2回以上開催した都市というのはそう多くありません。その点も大阪として誇らしく感じますね。
前回の大阪万博は、多くの人々に様々な物や記憶をもたらしました。私も上の世代から「大阪万博ではこんな物があったんだ、こんなことがあったんだ」と色々な話を聞いて育ちました。私たちも今回の万博の経験や記憶を、ぜひ子ども達やその先の世代にも引き継いでいけたらと思います。

エレベーターや特別展示など、大阪商工会議所内も万博モードに


――O-BICとしては万博でどのような取り組みをされているのでしょうか。

清:O-BICでは「経済界でこのチャンスをどう生かしていくか」を踏まえた取り組みを行っています。例えば、外国公館や外国経済団体に向けた支援活動のオンラインセミナー開催や、博覧会協会によるIPM(International Participants Meeting)とあわせて開催された「ワンストップショップ」への相談ブース出展などです。このワンストップショップとは、万博に出展するパビリオン関係者が諸手続きや運営等の様々な相談を行うことができるよう、各分野の関係者が一堂に集い、対応を行う相談会であり、2024年6月に開催された際には、O-BICとしても多くのご相談に対応をさせていただきました。

すでにブルンジ共和国など、O-BICにご相談いただいたことがきっかけで、パビリオン出展に関わる事業者が大阪に拠点を設立されたケースも出てきています。

――それは素晴らしいですね。サイマルもワンストップショップでの相談対応における通訳業務で、お手伝いさせていただいたことがあります。

ところで、大阪商工会議所(当時は大阪商法会議所)の初代会頭は五代友厚(※1)だそうですね。NHK連続テレビ小説「あさが来た」や大河ドラマ「青天を衝け」でもおなじみですが、実はパリ万博への出品運動を熱心に推進した万博の功労者だそうですが。

清:そうなんです。大阪商工会議所前に五代の銅像がありますが、今回の万博を盛り上げようと今年35年ぶりに塗り直されたんですよ。ドラマ放映時も多くの方が銅像を見にいらっしゃいましたが、色々なきっかけで大阪や商工会議所に関心を持っていただけるのは大変嬉しいです。今回も万博にいらしたら、ぜひ銅像を見に商工会議所にも来ていただきたいですね。

ちなみに戦後に会頭を務めた杉道助(※2)ですが、今回の万博でも大きな役割を担っている日本貿易振興機構(JETRO)の生みの親で初代理事長でもあるんです。五代や杉の「グローバルな視点を持って大阪経済の振興をめざす」という志は今も脈々と大阪商工会議所に受け継がれていると感じます。

ちなみに杉は「日本国際見本市委員会」を結成し、委員長として日本初の国際展示会も開催しています。海外とどう対峙するか、海外の勢いをどう取り込むのか、大阪は昔からそこを意識して動いてきたのだなと思いますね。


左上:五代友厚 右上:大阪商工会議所の五代友厚銅像 左下:杉道助

国際コミュニケーションにおける通訳・翻訳の重要性

――ところで、日頃の活動や万博での取り組みでは、外国人の方々に向けた情報発信や多言語コミュニケーションの機会が多いかと思います。言語としては英語が多いのでしょうか。

 

清:はい。英語がメインですね。次が中国語。お問い合わせなどは英語と日本語で対応することが多いです。

――普段の取り組みと比べて、万博ならではだなと感じられることはありますか。

清:先ほどお話ししたブルンジ共和国など、万博を機に、これまでご縁のなかった色々な国から問い合わせをいただいています。万博だけでなく、開催後も見据えて長く深い関係を築くことができればと考えております。


――サイマルでもO-BIC様の国際コミュニケーションをお手伝いさせていただいていますが、実際、通訳・翻訳会社をご利用されてみていかがですか。通訳・翻訳会社を利用するメリットや、通訳・翻訳会社に求めることと合わせてお聞かせいただけますか。

清:通訳者というのは、通訳を超えたコミュニケーターだなと感じます。
単に「あいうえお」を別の言語に置き換えるだけなら、機械通訳でも事足りる時代が来つつあります。でも「日本人なら常識だから当たり前だよね」ということが海外の人には当たり前ではないことが多いし、伝わらないことも多い。逆の立場でも同じことが言えます。通訳者は、話題の背景やその人の文化までしっかり理解したうえで、適切な言葉と表現で伝えてくれる存在だと思っています。

中には「通訳者を介さず英語で話したい」という人もいらっしゃり、その方がスムーズな場合もありますが、互いに母国語で話すほうが、言いたいことに集中して、本音で話せることも多々あると感じています。

特に企業サポートという私たちO-BICの役割上、相手が求めているものをしっかり聞き出し、正しく理解することは、業務推進の第一歩として非常に大切なことです。

お互いに本音で、本当に伝えたいことを相手に伝えたり、相手が真に言いたいことを正しく理解したりするには、自分たちだけでは難しいこともあるため、プロの通訳者や翻訳者の力をお借りすることで成り立つなと感じていますね。とてもありがたいです。

大阪・関西万博がもたらすもの

――ではここからは、万博以降についてお伺いします。今回の万博ですが、今後の大阪や関西にどのような影響をもたらされると思われますか。


清:これまでの万博では、物や会場など、多くの新しいものが注目を集めました。1893年のシカゴ万博で登場した「動く歩道」は今や世界中に設置されていますし、缶コーヒーや東京ドームのようなエアドームは前回の大阪万博で流行し、日本で定着したものと言われています。今回の万博からも、新たな商品や文化が日常に根付いていくのではと期待しています。

また開催中は、展示物だけでなく、長期にわたり多くの外国人が滞留します。身近に感じることで海外への特別感や抵抗感もなくなり、企業でも「ビジネスでもっと海外をめざそう!」というマインドにつながるのではないでしょうか。そういった意味でも万博は、大阪だけでなく、日本中の人にとって真の国際化、真の国際コミュニケーションを図るチャンスになり得ると思っています。

万博を機にO-BICがめざすもの

――最後に、O-BICとして今後めざすものを教えてください。


清:今回の大阪万博では300万人もの方が海外から大阪へいらっしゃると予想されています。その中にはビジネスマンの方も多いでしょうから、ぜひともこの万博を機に大阪のことを知っていただけたらと思います。

大阪は、日本国内では誰もが知る第二の都市ですが、残念ながら、海外ではまだまだ認知度が低いと言わざるを得ません。私が海外赴任していた数年前も、東京、京都、北海道は圧倒的に知られていましたが「大阪? どこにあるの?」と言われることも多々あり、まだまだ知られていないのだなと痛感しました。

ですから、まずは万博を機に大阪へ足を運んでいただきたいです。実際に見て聞いて体感して、観光や文化の魅力はもちろん、ビジネスのポテンシャルもこんなに溢れた都市なんだよと、ぜひ知っていただきたいです。そしてぜひ大阪のファンになっていただけたらと思っています。

大阪のファンを増やす……それがO-BICの最たる役割かもしれません。そして、ファンになった方々がその先、「ビジネスで大阪を拠点に」と相談に来てくださったら本当に嬉しいですね。 


※1:五代友厚……1835(天保6)年薩摩藩出身の政治家、実業家。明治政府下で参与・外国事務局判事、外国官権判事、大阪府県判事などを歴任後、大阪で実業に従事。大阪株式取引所、大阪商法会議所(現・大阪商工会議所)、大阪商業講習所(大阪商科大学の前身)などを設立し、大阪の経済発展に貢献した。「東の渋沢(栄一)、西の五代」と並び称される。

※2:杉道助……1884(明治17)年山口県出身の実業家。終戦後の1946(昭和21)年に大阪商工会議所の会頭に、また1951年に「海外市場調査会」(現・日本貿易振興機構・JETRO)を設立し、理事長となり、日本の輸出振興に尽力した。なお、祖父の杉民治は吉田松陰の兄にあたる。

 

 

O-BIC
清水僚介(しみずりょうすけ)

大阪外国企業誘致センター事務局次長 兼 大阪商工会議所国際部課長
関西学院大学経営戦略研究科卒業後、大阪商工会議所入所。海外への視察団派遣や要人接遇、及び国産医療機器の海外展開支援などを担当し、2018年にシンガポール日本商工会議所へ事務局長として出向。2022年4月より現職。

サイマル「大阪・関西万博」プロジェクトチーム

2025年開催の「大阪・関西万博」を盛り上げるべく結成されたサイマル・グループ横断チーム。関西支社のメンバーが中心となり、万博の成功に向けて、語学面から多岐のサポートを実施中。

 

■大坂外国企業誘致センター(O-BIC)公式サイト


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