管理会計における予実管理の可視化に挑戦

はじめに

初めまして。ICT統括室の黒田陽介です。

前職ではインフラエンジニアとして約7年間の経験を積み、その後リクルートに転職し、10年弱在籍しています。

転職当初は技術的な業務に従事していましたが、徐々に予実管理業務(管理会計業務)へとシフトし、現在の役割に至っています。

 

予実管理業務を担当する中で、予実管理表の集計や可視化に対し後述の課題を感じていました。

これを解決するために、Tableau Desktop(以降Tableau)を活用し、ダッシュボード化した経験についてお話ししたいと思います。

 

ここで言う予実管理表とは、何を、いつ、いくらで購入したかという情報や、どの分類に属し、会計上どの科目に関連するかといった内容をまとめた表構造のデータです。

予実管理表はGoogleスプレッドシート4ファイル × 10シートほどで構成されています。

 

また、Tableauはデータの可視化や分析を簡単に行える、有償のビジュアル分析ツールです。直感的な操作により、データを視覚的に表現し、分析することができます。

 

<今回の取り組みの概要図 金額はサンプルです>



今回の案件概要

予実管理表を集計する際には、集計ツール(Excel VBAやExcel関数など)を使用し、一部は手動で対応していました。

しかし、以下のような課題が存在しました。

  • 予実管理表の構造が変わることがあり、そのたびに集計ツールの改修が必要となる。

  • 集計ツールが複雑化し、理解や改修に手間がかかる。

  • 繁忙期には予実管理表の更新頻度が高く、何度も集計して最新の値を把握したいというニーズがあり、集計にかかる工数が増加する。

  • ある時点と別の時点、もしくは当期と翌期を比較した差異要因の報告を行っているが、予実管理表を比較するためのツールが存在しない。代わりにExcelのピボットテーブルなどで手動で比較していた。

 

さらに、アウトプットは表形式であることが多く、どこに着目すべきかが一目で分かりづらかったため、グラフ等による可視化が求められると感じていました。

 

これらの課題に対して、私のこれまでの業務経験や研修で学んだ知識を活かし、かつ社内の学習コンテンツを活用しながら、予実管理表をTableauに取り込み、集計し、ダッシュボードによる可視化を実現しました。

この後、その具体的な取り組みについてご説明いたします。




取り組んだこと1 Tableauに予実管理表を取り込む

過去に別の機会にTableauを利用し、かつ研修を受けていたため、簡単な操作が可能な状態でした。

そこで、予実管理表の課題に対して「Tableauで何かできるのでは」と考えましたが、以下のような問題がありました。

  • 予実管理表は複数のファイルやシートで構成され、かつ列や行も多く、Tableauへの取り込み方法が分からない。
  • 複数のマスターデータと紐付けて追加した分類で集計しているが、Tableauでどのように紐付ければ良いか不明だった。

 

解消方法が分からなかったものの、社内にTableau勉強動画があったので、なんとなく視聴しました。

その中にあった、Tableau Prep Builder(以降Tableau Prep)という製品の説明動画を見て、データをクリーニングできること、複数のマスターデータと結合できること、複数回ピボットできることを知り、「これだ!」と思い、早速試してみました。

 

Tableauに関する知識に加え、インフラエンジニア時代に培ったデータベース・コーディングの知識も活用しつつ、意外とスムーズに楽しく開発を進めることができました。

 

開発中の不明点は、Web検索だけでは解決できませんでした。

ただ社内にTableauの個別相談会があったため申し込み、不明点を解消しつつ開発を進めることができました。

 

その結果、複数の断面からなる予実管理表に対して不要な列を削除するなどのデータクリーニングを行い、複数のマスターデータと結合しました。

そして、Tableauが処理しやすい形式にピボットして、無事にTableauに取り込むことができました。

集計にかかる時間も30分以内に短縮され、さらにTableau Prepを活用することでデータクリーニングが可能となり、Tableauの活用幅がさらに広がりました。

 

以下のようなフローで処理を行っています。また、Tableau Prepではキャプチャのように視覚的に開発することができます。

 

<予実管理表のcsv化フロー>





<複数csvのマージフロー 以前はマスターデータとの結合処理も存在しました>




取り組んだこと2 Tableauで集計し、各種表を作成する

Tableauに予実管理表を取り込むことができたので、次のステップとして表の作成に取り組みました。Tableauでは、Excelのピボットテーブルのように、さまざまな切り口で表を作成することができます。

そのため、報告時に必要な表や、経理に提出するためのフォーマットなど、利用用途ごとに各種表を作成しました。

 

<予実管理表を集計した表のイメージ 金額はサンプルです>

 
















さらに、Tableauによる集計だけでなく、表の構造を改善する取り組みも行っています。

元々、予実管理表の分類Aと、マスターデータを紐付けることで、分類Bを追加していました。

これを見直し、予実管理表に最初から分類Bを組み込むことにしました。その結果、分類Aを廃止し、予実管理表や集計方法のシンプル化を進めることができました。

 



取り組んだこと3 Tableauのダッシュボードで可視化する

Tableauは表だけでなく、グラフやダッシュボードも作成できる製品ですが、実用的なグラフを作成できず、ダッシュボードを作ることは夢のまた夢のような状態でした。

 

この状態が約1年続いた後、データ関連の部署の方から「Tableau DATA Saber」というユーザー資格に挑戦してみないかと誘いを受けました。3ヵ月間、集中的にインプットとアウトプットを行う内容で大変でしたが、そのおかげで大幅にスキルアップすることができました。

 

Tableau DATA Saber挑戦時の課題として、実際の予実管理表を使用してダッシュボードを作成しました。このダッシュボードを基に、直後に行われる翌期予算策定イベントで活用できるよう、何度も改修を重ね、関係者に利用してもらえるダッシュボードが完成しました。

 

さらに、データ関連部署が社内に構築した共有プラットフォームを活用し、完成したダッシュボードをTableau Cloud上で公開しました。

Tableau Cloudで公開したことにより、関係者がダッシュボードにアクセスし、予実管理表の概観を把握し、気になる点について詳細を確認することで、予実の差異発生箇所を特定できるようになりました。

 

<ダッシュボードのイメージ 金額はサンプルです>




取り組んだ結果

定型的な予実管理表集計や、差異箇所特定時のダッシュボード活用に加え、Tableauを使用して様々な切り口、表現での集計が可能になりました。

例えば、予実管理表の更新漏れや誤りを探すダッシュボードを作成し、月次で運用しています。

また、各担当が記入した差異要因データを取り込み、ウォーターフォール図(数値の増減や内訳を視覚的に表現するグラフ)で差異を視覚的に表現するなど、多彩な可視化を実現しています。



学び

予実管理業務で得た管理会計や予実管理表に関する知識に加え、インフラエンジニア時代のデータベーススキルやプログラミングスキルなど、これまでの経験も活かせました。

特にTableauに関しては、この取組みを通じて大きくスキルアップし、ダッシュボード開発に辿り着けました。

浅いものの幅広い知識を持つことで、活用できそうなアイディアに気付き、調べながら進められ、時にはスキルアップしながら取り組めることを実感しました。

 

また、本取り組みの当初は課題はあるものの、ゴールが明確でない状況でした。

特にダッシュボードに関しては、要件元が不在であるために要件が出てこず、利用者や自分自身もTableauで何ができるのかが分からない状態でした。

このように成果物のイメージが固まらない状況では、従来のウォーターフォールアプローチ(要件定義→設計→開発→テスト→リリース)を諦めざるを得ませんでした。

 

そこで、Try & Errorのアジャイル開発手法を取り入れ、とりあえず作ってみることにしました。

この際、ユーザーは誰なのか、いつどのように使うのかを常に考慮しました。

特にダッシュボード開発においては、ユーザーにダッシュボードの操作や動作を見せ、その反応を観察しながら改修を繰り返すことで、最終的に形にすることができました。

 

業務や学習を通じて知識やスキルを身に付ける。また常に課題がないかと考え続ける。

そして何かできそうだと感じたら、調べたり人に聞いたりしながら、まずはやってみる。

すると、取り組む中でゴールが見えてきて、辿り着けることもあると感じました。



おわりに

社内には様々な学習コンテンツ(Tableauに関しては勉強動画、相談会、DATA Saber活動など)があり、今回これらを活用することで、実務に役立てるとともに、スキルアップできました。

今後は私が学んだことや、Tableauを活用した予実管理表集計、ダッシュボードの仕組みを、他の方に還元していければと思います。





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