仕事の納まった皆様も、これから納める皆様も、ひとまず一年間お疲れ様でした。
enechain CTOの須藤(@sutochin26)です。
年末と言えばラーメン二郎納めですね。
私も良い感じに納めてきたので、美しい写真をシェアさせてください。
さて、今年も本当に色々な出来事がありました。
去年のアドベントカレンダーではカルチャーに全振りの記事を書いていて、振り返ってみると組織づくりに投資していた1年でした。
techblog.enechain.com
転じて、今年はenechainの事業・プロダクトが大きな転換期を迎えた1年でした。私自身も、事業やサービスへの向き合いがかなり強まったように思います。
CTOとして、「こうしておけば良かった」という反省も山程ありますし、「これが出来て良かった」というポジティブな振り返りもあります。
この記事では、思いつくままにそんな振り返りを書いていこうと思います。
事業・プロダクトの話
今年のenechainには多くのニュースがありますが、個人的に印象に残っているのが「シリーズB調達」と「eSquare Liveリリース」です。
この2つを通じて、enechain、そして開発組織の在り方は大きく変わりました。
シリーズB
シリーズBでは、機関投資家、金融機関に加えてエネルギー取引に従事する事業者が出資してくださいました。
enechain.co.jp
日本を代表するエネルギー事業者がenechainの描くビジョンに共感してくださったのは、非常に喜ばしいことです。
また、スタートアップにとって、調達は会社が大きく変わるきっかけにもなります。シリーズBの調達以降、会社のスピード感もコミュニケーションをとる相手も大きく変わりました。改めて、大きな事業に関わっていることの責任感とやりがいを感じた1年でもあります。
eSquare Live リリース
eSquare Liveというサービスが10月にリリースされました。
これは、今まで人力で成立させていた電力の売買をオンライン化するものであり、enechainが創業当初から構想を描いていたプロダクトです。「めちゃくちゃ重要なプロダクトをついにリリースした!」という話になります。
enechain.co.jp
enechainは、プロダクトが無くとも「ブローキング」という人力の収益源を持っています。
それは素晴らしい事である一方で、プロダクトへの投資が進まない原因にもなっていました。
そのような状況に、テクノロジー本部のリーダーとしては正直もやもやしていた部分もあります。
今年、enechainはeSquare Liveの開発に大きく舵を切り、全社的にテクノロジーによる事業成長にフルコミットし始めました。
この判断に至るには様々な要因がありましたが、意思決定が出来たのは「我々ならば出来る」と思えるような強い開発組織が作れていたからです。
1年前までとはまるで違う世界観になっています。もちろん困難も数多くありますが、テクノロジー本部としては非常にやりがいのあるフェーズに入っています。
技術の話
テクノロジーによる事業成長を目指す中で、プロダクトに求められる要件も複雑になってきました。
ビジネス要件の複雑さも増すばかりですし、様々なステークホルダーが現れる中で非機能要件のレベルも上がっています。
各領域でどのようなチャレンジが発生し、対応してきたのか。簡単に振り返ろうと思います。
バックエンド
バックエンド領域では、非機能要件のレベルが上がった事が大きな変化だったと思います。
例えば、取引においては処理速度と可用性が極めて重要であり、パフォーマンスチューニングや負荷対策の話が各所で出るようになりました。プロダクトによってはSLO/SLIの導入もおこない、重要指標の定義とモニタリングを始めました。
このような対応をプロダクト個別で実施するのは効率が悪く、プラットフォームチームでは負荷試験基盤の整備や基準の整備を始めています。
techblog.enechain.com
また、FIXのような特殊なプロトコルも取り扱い始めています。
去年までは「FIXというものがあるらしい」くらいの温度感でしたが、今年は非常に多くのエンジニアがFIXと向き合っています。
techblog.enechain.com
フロントエンド/UIUXデザイン
フロントエンド領域では相変わらずデザインシステムチーム(有志の集まり)が素晴らしい改善を繰り返しています。 techblog.enechain.com 今年は隼也さん(@_Shunya078)が雑誌(Web Designing)に掲載されたり、eSquare Liveがグッドデザイン賞を受賞したりと、対外的にも成果が認められました。
技術的には、取引業務でスピードを求めるユーザ向けに特殊な実装(キーボードによる画面操作等)が発生したり、レガシーなブラウザを利用するユーザにも使ってもらえるようにlintの仕組みを整えたりなど、業界特有のマニアックな対応も出てきています。 techblog.enechain.com
データ活用、データ基盤
データ活用の幅はこの1年で急激に広がりました。あらゆるエネルギー事業の根幹にデータがあることを再認識する1年でした。
データサイエンスチームは、ビジネスチームからの期待に地道に応え続け、真摯に向き合い続けた結果、様々な依頼が舞い込むようになっています。データを用いたビジネスの事業貢献も増え続けています。
直近はデータ処理にリアルタイム性を求められるなど技術的な難しさも出てきていますが、同時にユーザにとって使いやすい・理解しやすいことも大事であり、ユーザビリティも考えてデータを魅せる技術が求められています。
今後データの重要性は増し続けるはずですし、取引データが増えればもっと面白いことも出来そうです。
データ基盤には全サービスのデータが集約されるようになり、全社的にもプロダクト個別にも、データを見ながら事業を進めることが常識になってきました。
各プロダクトの負担を最低限に抑えられるような基盤を整えたことでこのようなデータ活用が進みました。
業務提携の話もあり、権限管理が難しくなってきましたが、早い段階でデータアクセス権限の設計もしていたことで今のビジネスの複雑性にも対応出来ています。
techblog.enechain.com
プラットフォーム開発
プラットフォーム開発部(SREやPlatform Engineerが所属)は、全サービスを支える基盤として大きく事業貢献しました。
全プロダクトから共通で利用されるマイクロサービスの開発により全社的な開発の効率を上げたり、標準技術の選定やコード自動生成の仕組み化によって技術的なガバナンスを効かせたりしています。
サービス数も増えて全体把握は困難になり、レビューも細かく見る余裕はなくなってきていますが、上述のような工夫によってスピーディなサービス展開を実現しています。
直近では、モニタリングや負荷試験周りの共通化を進めるとともに、プロダクトメンバーの運用自由度を上げるための仕組みの用意も進めています。
非機能要件のレベルが高まってきている状況において、極めて重要な役割を担っています。
組織の話
最後に組織の話も少しだけします。
去年自分が書いた記事を改めて読むと、当時はかなり組織カルチャーに課題を感じていたようです。
今年は以前ほどの課題感を感じること無く1年を過ごしました。メンバーの自発的な取り組みが多いですし、若手は元気で、シニアはそれを支える技術力と指導力を持っています。
採用もうまくいって仲間も増えましたし、eSquare Liveのような高難度なプロダクトもスピーディにリリースしました。
エンジニア起点の事業提案も見え始めています。
この先必要なのは、この熱量・スキルを事業成功につなげる意識や、それを実現するためのマネジメントだと思います。
ユーザに価値を届け、事業を成功させて初めて「良い開発組織」と言えると思っています。
来年はそういう部分にこだわってチームのみんなと接していきたいと思っています。
そして、様々な理由により英語の重要性が高まっているので、来年は組織(と自分自身)の英語力強化も頑張りたいと思います。
おわりに
事業/プロダクト/技術/組織の観点で2024年を振り返ってみました。
1年前のアドベントカレンダーを読んで、「これがほんの1年前の話なのか」と驚くほどに、今年は様々な変化がありました。
enechainのテクノロジーへの挑戦はまだまだ始まったばかりです。
今年ついにスタートラインに立ち、来年はその真価が問われる年だと思っています。課題は盛り沢山です。
来年は本当に大変な1年になりそうですが、そういう荒波こそ楽しく越えていける組織でありたいと思います。
荒波を一緒に越える以上のチームビルディングはありません。あらゆる荒波を越えた先、来年の年末も、皆と楽しくビールを飲めればと思います。
enechainでは日本のエネルギー業界をテクノロジーで変革する仲間を募集しています。
ご応募お待ちしております。
herp.careers
それでは皆様、今年もお疲れ様でした。良いお年を!