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1月26日(火) 西村朗×クァルテット・エクセルシオ レクチャーコンサート
2010年1月26日(火)19:00
芝浦工業大学豊洲キャンパス テクノプラザ 【報告:S.K/TANサポーター/座席自由】 大学の一講義室での、「N響アワー」の司会をされている西村朗氏と、年間80公演を行うという日本で数少ない常設の弦楽四重奏団クァルテット・エクセルシオによる『実演を交えながらおくる作曲家自身による作品解説』。今は亡き大作曲家たちの作品もこのような作曲家自身によるレクチャーコンサートで心底聞きたいと思った充実した時間でした。 ◆前半:「弦楽四重奏のためのヘテロフォニー」(1975~87) この曲は、西村氏が芸大学生時代の試験や毎日音楽コンクールを経て、エリザベート国際音楽コンクールで大賞を受賞した後も手直しし出版された第1番にあたる弦楽四重奏曲で、ヘテロとは別称で異質なものだそうである。西洋音楽のホモフォニー、ポリフォニーにないもの、ベートーヴェン、バルトーク、ラヴェルの完璧な弦楽四重奏曲にないものを探しヘテロフォニーとし、雅楽の音がずれている、ぶつかっている、調弦が合ってないにも関わらずそれに違和感を持っていない日本人の音楽性がこの曲に取り入られたようだ。 頭の音は落ち着きのあるAの音でなくB♭を、チェロが1番高い開放弦の更にオクターヴ高い音の半音上という位置から鳴らし始める。その1点から出たものから四者四様にうねってまた集まってくる。この異質なものの中にも一元的な流れが存在していて常に流動的である。24音技法で弦楽器の可能性を見込んで4分の1音指定の音まであり、楽譜からは演奏可能だけれど書き取ることが困難な曲を作った。秩序と破壊の繰り返しの後、最後は草の笛、竹の葉のすれる音のような1stヴァイオリンのメロディー、それはヴィブラートをかけて弾くと綺麗なメロディーなのに敢えてなしの指示があり枯れた感じを出して終わる。 ◆後半:弦楽四重奏曲第2番「光の波」(1992) この曲は西村氏がインドネシアのkecakケチャという、数人で全く違うリズムを打っているのに傍には一人が連続したリズムを打っているように聞こえるという、パルスの合同制作から作った曲だそうだ。パルスとはあふれ出るようなリズムのことである。とても超絶技巧の曲でなかなか最後まで崩れないで演奏出来るクァルテットはいないと言っていた。西村氏の曲でよく取り上げられている曲に「6人の打楽器奏者のためのケチャ(1979)」があり、最初にそちらをCDで聞かせていただいてケチャの仕組みを教えてもらった。 第2番は2楽章形式で成り立っており、曲の最後にあたる第2楽章の終わりと第1楽章が重なるように作られている。それは音が上に昇って行くのと下がって行くことで表されていた。第1楽章はこれから出現するものの予兆で、第2楽章で4者が次々に短い音を出し始めて、それは光が飛び交うような光景を表している。hocetホケというしゃっくりしたようなリズムも出てくる。クライマックスに向けて速いテンポで突き刺すようなパルスの連続。東アジアのアレグロ。 今回始まる前は現代曲でどんなに聴くのが難解な曲なのかと想像しましたが、西村氏のテンポの良いユニークな解説と、アジアの音楽に端を発したと言われたからなのか、演奏を聴いてみるとヘテロフォニーの方は不思議な響きも美しく感じましたし、第2番は4人の演奏者のリズムのやり取りにこちらも目も耳も集中して聴くことが出来、入り込んでしまいました。終了後に質問の時間が取られた時も、全くの音楽初心者だという方々が次々に西村氏に質問をしていたことが、私と同じくこの時間虜になった方がたくさんいたということだと思いました。今回の2曲とシュニトケの作品でプログラムを組まれたエクセルシオの皆さんの演奏会も楽しみですし、西村氏は弦楽四重奏曲を第4番まで出版されているということでしたので、第3番、第4番についてもまた実演を交えたレクチャーコンサートをして頂きたいと思いました。
by tritonmonitor
| 2010-02-01 18:23
| レクチャー・セミナー
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