政府の中長期的なエネルギー政策の指針「エネルギー基本計画」の改定を前に、小泉進次郎環境相が脱原発の姿勢を鮮明にしている。菅義偉(すが・よしひで)首相とのパイプも使い、エネルギー関連の政府方針で原発の活用に関わる表現ぶりを弱めることに成功した。ただ、温室効果ガスの削減を訴えながら、二酸化炭素(CO2)を排出しない原発の活用に否定的な小泉氏に対しては、自民党から「現実を見ていない」との不満も強まっている。
「『まずは再生可能エネルギー(の活用)、そして原発の依存度を下げる』と首相はずっと言っている。それが守られるかどうかを見ている」。小泉氏は25日の記者会見で、こう強調した。最近は持論である脱原発を政府のエネルギー政策に反映させるべく精力的に動いてもいる。
経済産業省などが18日に決定した温室効果ガス削減に向けた「グリーン成長戦略」の改定をめぐっては、昨年12月時点では入っていた「(原発を)最大限活用していく」との表現が削除された。18日に閣議決定された経済財政運営の指針「骨太の方針」でも、電力部門の脱炭素化に関し「再エネ最優先」との文言が盛り込まれた一方、原発は「可能な限り依存度を低減」するとされた。
いずれも小泉氏が首相らに働きかけた方針に一致する。自民党内ではエネルギー基本計画改定に向け、電力の安定供給や脱炭素化のため原発の活用を求める声が強まっていただけに、小泉氏が機先を制した形だ。
エネルギー基本計画は10月末までに政府が決定する2030年度の温室効果ガスの国別排出削減目標の裏付けとなるため、早期に策定する必要がある。ただ、改定時期が秋までに行われる衆院選後となれば党内の原発推進派が勢いを盛り返しかねない。小泉氏は衆院選前に改定すべきだと首相に訴えており、グリーン成長戦略や骨太方針に続き、脱原発の方針をエネルギー基本計画にも色濃く盛り込みたいとの思惑が透ける。
とはいえ、エネルギー政策はもともと経産省の所管であり、自民党内には小泉氏への不満も募る。党中堅は「首相は梶山弘志経産相よりも小泉氏の言うことを聞いてしまう。環境相がどんな権利で原発政策に口を出すのか」と指摘。党重鎮も小泉氏がエネルギー問題の現実を直視していないとして、「目の前の課題に向き合わない政治家は大成しない」と不快感を示している。(奥原慎平)